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大秦戯界開拓録  作者: 御食山左近
ある商人の冒険
5/15

午前中の雑貨商

今日という日も無意味に暑い。


ゲームなのだし、現実と違って年中過ごしやすい気候でもいいのに。


病的なまでに神経質に舗装された石畳と、まるで精神病棟か何かの様に純白の建築群からの照り返しで体が茹る。


こんな時期に船に詰め込まれた日には、半日でマッシリアで触手プレイに勤しんでいるヘカトンケイルのような赤ら顔になってしまうな。


…本当にそうだ。


----ああ、俺がこんな暑い中外を歩かされて不味い飯を食べさせられてアンヌの性格が悪いのも全てあのタコ焼き野郎のせいなのだ!!


思わず落ちているゴミでも蹴ろうと足を振り上げたが、ルシノーの街は幸福で完璧なゴミひとつ落ちていない清潔な街なので諦めるしかない。


それにしても、刺さるような日差しが体に突き刺さる。汗が出ていたら脱水で倒れてたな。


アンヌはあとでほっぺたを膨らませて怒るだろうが、アイスでも食っていくのもいいな。


ここからだと角のギュスターブ親爺の店が一番近い。そしてなんといっても安くてうまいのだ。


ほんとうに朝からアイスとは贅沢だ!!ステイツの自由とはかくあるべきなのだ!


普段なら共同浴場の帰りにしか食えないうえに、いつもアンヌに半分は食われてしまうから今日ぐらいはいいだろう。


なんとなれば今回の参事会では外征が決まるから仕方がないのだ。


きっと蒸し風呂のような船内に詰め込まれ、チュニカ姿の筋肉ダルマと我が家を離れて何週間かバカンスに出なければいけないからこれは緊急避難か何かに違いない。


さて見え…嘘だろう?



----おはようギュスターブ親爺!とうとうその悪人面にふさわしく監獄行きか!


店の奥からのそのそとオークの親玉のようなでっぷりと脂肪を蓄えた髭面の大男が現れる。


「おはようマルセルの旦那!今朝の新聞を見ただろう?うちも商売あがったりだよ!」


馬鹿な話である。ギルドに加入している親方株を持つこの男に原料が納入されないはずはない。


----あんたのギルドのところでも買えないってのか?少なくともあんたらは共同で一年分の物資を確保してたはずだろう?また誰か着服したのか?


うわ、急にさも思いつめてますみたいな顔になりやがった。まるで悪鬼のような面だ。アンヌなら泣くぞ。


「それが街のどの連中も急に届かなくなったとか言い始めたんだ。今まで十年以上この町で商売をやってるが、マッシリアが触手に襲われてアイスを作れなくなったってのは初めてだぜ。戦時中でも酒と甘味が消える事無き我らがルシノーでですわ。ところで旦那のとこは何か伝手で持っていやしませんかね?内緒にしときますぜ?」


ルシノーで最も口の軽い男は同じぐらいに隠し事が下手だから、きっとこいつは確かな話なのだろう。


----急に敬語になるな気持ち悪い。店の方の品は出せんがウチの召使がはちみつを溜め込んでいるから持ってこさせよう。貸し一つだ。


「ありがてえ!マルセル大明神様々だぜ!今度いいのが入ったら、とっておきのを御馳走させて頂きますぜ!」


----それは楽しみだな。ただはちみつを持ってくる召使が凄い恨みがましい目をしてくるだろうから、そのとっておきのアイスはそいつに食わせてやってくれ。


「旦那のとこのというと… ああ!いつものエルフの嬢ちゃんか!暑くなると毎日来て、これまた美味しそうに食べるからついサービスしちまうんだよなぁ。よし!まかされた!」



え?それ初耳なんだけど…


それではと別れを告げ、ギルド会館に向かうことにした。


全くなぜ自分のような一介の雑貨商が参事会に呼び出されるのだろう?


組合費もちゃんと払っているし税金だって滞納したことはない。


用事があるときは直接ギルド長からねっとりと指示がある。


外征がある時はいつもなら単にお前も来いとかいつもの酒場から自警団に拉致されるだけだ。


もしかすると触手討伐祭り絡みの案件ではないのだろうか?


結論の出ない考え事をしている間に着いてしまった。法隆寺染みたネオクラシック様式の、無意味に市民の税を尽くした実に贅を尽くした建物だ。相変わらずかっちょいい。


しかし今月のギルド旗は鉄槌と大鎌か…やはり辺境だと流行に敏感だな。


もはや顔見知りの衛兵に挨拶すると、何故か頑張ってくださいと言われた。解せぬ…。


中に入ると受付の解放奴隷の嬢ちゃんが珍しくこっちに寄ってきた。いつも寄らないで下さいこのペド野郎とか罵倒してくるのに。…寂しいこった。


「おはようございますマルセル卿。本日は内密にとの事ですので、直接執務室へお願いします。」


うわ用件だけ告げて速攻で戻りやがった。冷たい態度が実にそそるな。


それにしても今日はどういう要件なのだろう?


こんなクソ暑い中に呼び出しやがって。つまらん依頼だったら塩でもまいてやる!


そう粋がって執務室に入ると見飽きた顔の参事会の面々と死にそうな顔をした市民たちがいた。


…なんか急に寒くなってきたな!暖かいおうちへ帰ろう!


----間違えました!失礼いたします!


「この部屋であっていますよ同志マルセル。」


…この一瞬で回り込まれただと?!


ええい!逃げても死ぬだけだ!覚悟を決めるか。


----ええと同志書記長、本日は一体わたくしめにどんなご用件がございますのでしょうか?


後ろに立った宿屋の親爺が口を開いた。


「ええ、優秀な労働英雄である君には、ええ、時折セルティア各地で観光をこなしてもらっていますね。ところで今回はですね…」


おい、黙るな。しかしマッシリア関連じゃないのか。船旅はなくなったぜ!


これは前みたくブルティガラから御禁制のワイン用のブドウの苗木をかっぱらってくるとかそういうのじゃないのか?


まさか今度はニューマイアミ半島に単独潜入してギャングのボスの石弓を持ってこいとかいう無茶な依頼じゃないだろうな?


「このところの食料品の高騰がですね、どうも中部の資本主義の豚野郎のペリエールの連中が仕掛けたものらしいので適当に首級を上げて我々の所へ持ってきて下さい。」


…待ってくれメアリー冗談だろう?





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