私は気づいてしまった。
私は、気づいてしまった。
――いや、本当は、気づかないふりをしていただけなのかもしれない。
何度も、気づいて然るべき異変はあったのだから。
目の前に横たわるレイバースは、貫かれた胸部から黒い血を流し、苦しげな顔で訴えかけてくる。
「コロさ……ないで」
夕闇のような漆黒を纏った全身。
生命の温度を感じさせない、禍々しい目。
やはり――こいつらは化け物だ。
現に、こいつのせいで私の仲間は何人も……。
奴にとどめを刺すため、ステッキを構える。
「コロさ……ないで」
レイバースは、よくこの言葉を口にする。
それは感情ではない。
魔法少女を躊躇わせるための、決まりきった反応だ。
教科書通りの、何度も立ち会ってきたこの瞬間。
何も珍しくはない。
そうだ。
こいつらは、化け物なんだ。
「覚悟しろ!」
レイバースに向かってステッキを振り下ろす。
自分の迷いを断ち切るために、必要以上に強く。
断ち切られた黒い首が宙に舞い、身体は力なく倒れる。
やがて、ゆっくりと黒い灰となって崩れていく。
――いつも通りの光景だ。
レイバースは討伐されれば、すぐに灰となり、その姿を一片も残さず消える。
「はぁ……はぁ……」
ぼとり、と首が地面に落ちる。
崩れ始めている。
もう、すぐに消えるはずだ。
「どうだ……これが、魔法少女の力だ」
そのまま崩れてくれ。
頼む――心から、そう願った。
レイバースの首は、ゆっくりと灰になり、空へ溶けていく。
「あ……あ……コロ……」
レイバースが、何かを言っている。
こんなことは初めてだった。
魔法少女育成学校でも、実戦でも――こんなことは一度も見聞きしていない。
身震いした。
やめてくれ。
言わないでくれ。
「コロ……してくれて、ありがとう」
その言葉を最後に、すべてが消えた。
すべてが、つながる。
答えが、出てしまう。
魔法少女である私は、確信してしまった。
レイバースは――人だ。
衝撃で全身から力が抜け、その場に崩れ落ちる。
視界の先には、見覚えのあるペンダントが転がっていた。
禍々しい瘴気を放ちながら。
ああ、そうか。
頭の中だけが、異様に冷えている。
何が起きたのかだけは、はっきりと理解できた。
「ごめん、ゆうか……大学、行けなかったね」
その瞬間、私は理解してしまった。
私たちは、ずっと――人を殺していた。




