Ep.43
「それでは、状況の整理から始めましょう!」
サクラの言葉から、裁判が始まる。サクラもすっかりいつもの調子を取り戻せたようだ。
「まず、死体発見時刻は……」
「昨日の二十三時前」
サクラの言葉にルゥが続く。
「昨日は施錠時間ギリギリまでサクラとノノミと遊んでいた。だからこそこの時間は間違っていない」
ルゥの言う通り、昨夜は夜遅くまでレクリエーションルームで遊んでいた。
「なるほどなるほど、そのまま第一発見者となったわけですね! そして死体の状況は、アズキさん本人の剣によって刺された状態、で合ってますかね?」
「合ってるよ」
サクラの言葉に、ヒナタが合わせる。
「そうなると、まず問題となってくるのはアズキさんがいつ殺されたか、ということですね! ヒナタさんとユイさんは昨夜何していました?」
「昨日は九時頃までユイちゃんと休憩室で会話してて、それからレクリエーションルームに行ったよ」
サクラの質問に、ヒナタは答える。
「ああ、そういえばその時トイレでアズキのことをみたよ。体調悪そうでもう寝るらしかったけど」
ヒナタの説明に、ユイが補足する。
「つまり、九時頃まではアズキさんが生きていた、ということでいいですか?」
「そうなるかな」
ユイの説明に、サクラが疑問を持つ。
「うーん、そうなるとおかしいですね。アズキさんが生きていることが確認された後に私たち五人は同じ場所に居ます」
そう、これらの情報が正しいとすると、アズキの死に関われる人物が居ない。なぜなら、全員にアリバイがあるから。全員に等しいアリバイがある以上、そこに共犯やらということは存在しない。
まさしく、完全犯罪であった。
「それって、ユイかヒナタがアズキを殺しただけじゃないの」
ルゥの鋭い一言が裁判所に響く。
「え?」
「私は常にノノミたちと一緒だった。アズキの殺害には関われない」
ルゥの言う通り、ヒナタとユイが休憩室にいる時、ルゥ達はレクリエーションルームにいた。つまりは、ルゥから見れば犯人はヒナタかユイなのだ。
しかもちょうど、ヒナタとユイが別々の行動をしている。もはや怪しいという次元ではなかった。
「ルゥの言うとおりだと、ボクとヒナタが別れた時にアズキの牢屋に行ってアズキを殺した、っていうことでしょ? でもその話、ボクかヒナタが牢屋に行った証拠がないよね?」
しかし、そんなルゥにユイは反論していく。
「証拠なんていらない。もう既にヒナタかユイが犯人と決まっている」
「いやいや、証拠は必要でしょ。まさか、状況だけで犯人だと決めつけてる?」
ユイとルゥの口論が始まる。しかし、そんな様子に待ったをかけるのはヒナタだ。
「二人とも落ち着いて! もっと建設的な話をしよう!」
ヒナタの発言に、サクラも賛成する。
「そうですね! これ以上言い争いをしても議論は平行線です。次の話題に行きましょうか!」
そこでようやく、ユイとルゥの口論が止まる。
「……じゃあ次は、あの剣について話そうよ!」
ヒナタの一言で、再び議論が始まる。
「そういえば、剣には謎の紐がついていましたね!」
サクラの言う通り、不思議なのは剣の紐だ。
「普通に考えるなら、何かの罠か、それか能力か……」
ルゥの発言に皆は賛成する。
普通に剣を刺すだけなら紐なんていらないからだ。
「ふむ、能力ならば何が可能性がありそうですかね?」
サクラの言葉に、ヒナタはサクラから共有されているサクラのメモを見る。
(ルゥちゃんの『創造』、ノノミちゃんの『自己犠牲』、ユイちゃんの『復元』、そして、サクラちゃんが確か……『五感や記憶の欠落』だったかな?)
サクラのメモにサクラ自身の能力が描かれていないが、少し前にした会話を思い出す。
そうして全員の能力を考えてみるが、剣についていた紐と関連がありそうな能力はわからない。
「ワタシは、紐と能力の関係はない、と思います……」
ノノミも、ヒナタと同じ結論となった。
「ふむ、ではこの紐にはなにか重要な秘密がありそうですね! もちろん、アズキさんが装飾としてつけた可能性もありますが!」
アズキ本人によってつけられた可能性ももちろんあるだろう。しかし、アズキがそんなことをするような性格ではないということはここに居る全員が分かっていた。
「うーん、でもこれ以上はわからないな……」
ヒナタは唸る。
実際、これ以上の情報が見つかっていない。
「ふむ、議論が行き詰まってきましたね! では、もう一度はじめから考え直していきましょうか!」
サクラの言葉により、事件の流れがおさらいされる。
「まず、アズキさんは九時時点では生きていました。理由はユイさんがトイレで出会ったからですね! その後、全員がレクリエーションルームに集合し、遊んでいました。おそらく、この時点でもうアズキさんは殺されているでしょう。そして、皆で牢屋に戻った時に、アズキさんの死体が見つかった、ということですね!」
サクラの説明を聞けば、余計にわからなくなる。
ヒナタの脳裏に、もしかしたら本当にユイがやったのではないかという考えが浮かぶ。
「……」
当のユイは、黙ってスマホを見ていた。
それにつられて、ヒナタもメールや写真を確認する。
(あれ……これって……)
そこで、ヒナタは一つの違和感に気づく。
その一言が、この議論を大きく進歩させていく……




