Ep.42
『さて、皆さん揃いましたね。悲しいことに、また一人死んでしまいました。悲しいですね、恨めしいですね。ですので、犯人を処刑する裁判を開きます。今が二十四時前なので、まぁ明日の八時にしましょうか。眠たいですしね。時間になれば、皆さん二階から裁判所へと向かってください。その間に犯人を特定する証拠でも見つけておいてください。もしも来なければ……まぁ無理矢理にでもつれてきちゃいますけどね』
クモのいつものメールが飛んでくる。しかし、もう誰もそれを見ない。
目の前の光景に、皆がありえないという顔をしていた。
「……すみません、席外します」
いつもなら、空元気でも大きな声で先導していたサクラも、元気を失い一人牢屋から出ていく。
それに続き、ルゥとノノミもいつの間にか居なくなる。
ヒナタは、アズキの死体を前に動けないでいた。
「……ヒナタ大丈夫?」
ユイが心配の声をかけるが、その声はヒナタに届いていない。
「……ヒナタ!」
「……ッ!」
耳元で大きな声でユイが呼ぶ。その声でようやくヒナタは我に返った。
「……大丈夫じゃなさそうだけど、行かなきゃいけない」
「……そう、だね」
ゆっくりと、ヒナタも動き出す。
「調査、しないとね……」
そうして、調査が始まった。
「……あれ?」
早速、アズキの部屋に入ろうとしたが、どうやら鍵がかけられているようだ。
「鍵が……」
「そりゃもう時間がね」
そう言いながら、ユイはアズキの部屋の時計を指す。
その時間はすでに二十四時を迎えていた。
「こんな時間経ってたんだ……」
自身があまりにも深く落ち込んでいる間にそんなに時間が経ったのかと落ち込む。
「だから今日はここで寝泊まりできないから、休憩室か医務室か……どこか柔らかい場所見つけないといけないよ」
ユイの言う通り、牢屋にはもう鍵がかけられている。もちろん他の部屋もだ。つまり、今日は牢屋以外の場所で寝なければならない。
「……怒られるかな?」
「しょうがないでしょ。まぁ許してくれるよ」
前回牢屋以外の場所で寝た際の注意のメールが思い出される。
ただユイの言う通り、もう牢屋で寝ることはできないので、どうにかして許しをもらうしかなかった。
「それにしても、やっぱり凶器はあの剣だよね……」
ユイの言葉に視線をアズキの死体に投げると、その胸に深々と剣が刺さっている。その柄の部分には紐がついている。
そして、その剣に刻まれた番号は『XIX』……つまり『太陽』を示している。正真正銘、これはアズキ自身の剣であった。
「一応写真を撮っておこう」
そうして、パシャリとアズキの部屋を撮る。
そこで、ヒナタは一つ思い出した。
「……サクラちゃんって、いつも他の部屋も撮ってたけど、そのほうがいいのかな?」
普段なら、サクラが牢屋の撮影をしていた。その際、すべての部屋を撮っていたことを思い出したのだ。
「……まぁ一応撮っとく?」
ユイの言葉もあり、念の為すべての部屋を撮影した。意味があるかはわからない。
裁判が終わったらデータを消しておこうと心に誓った。
「……これ以上、もうなにもないよね」
それ以外、特に何も見つからなかった。
そのため、二人はサクラの様子を見に行くことにした。
「……やっぱり、ここに居た」
「……ヒナタさん」
ヒナタは、いつしかサクラと語り合った場所に来ていた。いまはユイもいる。
「……心配かけさせましたよね、ごめんなさい」
サクラが深々と謝る。普段どんなときでも元気なサクラが、ここまで消耗してしまった。それほどアズキの死が、彼女にとって心の傷となってしまったのかもしれない。
「サクラちゃん……」
「もう大丈夫です! ありがとうございます!」
その元気は表面だけかもしれない。しかし、空元気でもそれが戻ってきたことにより、二人は少しだけ安心した。
「それで、調査はどの程度進みました?」
「牢屋の写真を撮ったくらいで……あ、剣がアズキちゃん本人のものだったってくらい……」
正直、何もわかっていないとも言える。しかし、ほんの少しの証拠でも、集めて事実を少しずつ詰めればいつか真実がわかるのだ。
「そうですか……ならば寝ましょう! 明日起きてすぐに裁判です。寝不足で頭がぼんやりしてましたなんて言い訳にもなりません!」
そう行ってサクラは寝る場所を探し始める。そして三人は、休憩室で寝ることにした。
「おやすみなさい……」
そうして三人は意識を手放す。さっきまで死体を目の前にしたというのにすぐに寝ることができたのは、慣れてしまったのか、はたまた別の理由か……
そうして夜が明け、あっという間に裁判の時間がやってくる。
『まもなく、裁判が開廷します。みなさん、二階渡り廊下より、裁判所へと向かってください』
全員の携帯に、クモからのメールが届く。
そうして全員が裁判所へ向かう。
椅子と机の数は五台となっていた
『皆さん、揃いましたね。ルールはこれまでと同様です。 見せたい証拠があれば机のコードとスマホを繋いでください。繋いでいある間だけ、この中央のテレビと画面が共有されます。それでは、鳴神アズキ殺人事件裁判……開廷です』
クモの声が裁判所に響く。
それは、裁判の始まりを告げるものであった。




