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少女は運命に殺された  作者: Philia
Chapter1
25/60

Ep.22

「まずはこの物置部屋を見ましょう!」


 物置部屋は相変わらず鼻がひん曲がるような腐敗臭に包まれているが、その程度でヒナタたちが諦めることはなかった。


「この手……血かな……」


 アズキがウミの死体を観察すると、ウミの手先に気になるものを見つけた。


「うーん、確かに血のようですね!」


 手の先の爪の部分。そこには、血がついていた。

 全身切り刻まれ、血は全身に染まっているが、手はあまり汚れていなかった。しかしその爪の部分のみ、何かを引っ掻いたかのように血がついていた。

 さっそくサクラが写真に収める。


「それにこの傷……なんでしょうか……まるで痛めつけられたかのような……」


 ウミにある全身の傷は、まるでいたぶるかのように浅いものばかりであった。いや、どちらかといえば刺すよりも切ろうとした結果うまく行かずに浅くなってしまったとも言える。

 どこにも刺し傷がないのだ。


「うーん、まぁ一応証拠になるかもしれませんし、撮っておきましょう!」


 そうしてサクラは次々と写真を撮っていく。


「あ、ねぇこれって……」


 ヒナタもあたりを調査している時、気になるものを見つけた。

 いや、気になるものと言うより、聞いたことがあると行ったほうが正しい。


「ベイゴマじゃないですか! まさかこんなところにあったとは!」


 前にここに来たときには、ベイのスタジアムしか見つからなかった。しかしたった今ベイを見つけることができたのだ。

 どうやらヒナタたちが先日探していたのは大物が保管されている場所で、ベイゴマは小物がまとめて入れられている場所に一緒に入れられていたようだ。


「まぁ、それはおいておいて……もう証拠になりそうなものはないかな?」

「そうですね!」


 その後も一時間ほど調査したが、たいして目新しい証拠を見つけることができなかった。


「次はどこ行きます?」

「……庭に行ってみよう」


 庭……昨日の夜、あのスライムと出会った場所だ。


「わかりました。用心していきましょう」

「あの……昨日、何かあったんですか?」


 気になったのか、アズキが聞いてくる。


「あ、うん。詳しく言うと長くなるんだけどね……」


 それから、庭に移動する途中にアズキに昨日の夜にあったことを話した。


「そんなことが……」


 アズキもショックを受けていた。それと同時に、恐怖していた。

 もしも昨日図書館に残る選択をしなければ、もしかしたら自分はスライムの餌になっていたかもしれない。

 そんな不安がよぎるが、いまはヒナタとサクラもいるし大丈夫だと自信を持つ。


「つきましたね!」


 そんな話をしていると、玄関にたどり着く。

 扉を開ければ、相変わらず気持ちの良い空気が入ってくる。先程までの吐き気を催す腐敗臭が嘘のようだ。


「あれ、ヒナタたちじゃん」


 玄関を開けると、ちょうど庭から帰ってくるところだったユイとばったり出会った。


「ユイさんも庭に?」

「ん? そうだよ。ルゥから昨日君達に起きた出来事を聞いてね。一応確認してこようと思ったんだけど……」


 ユイが確認した範囲だと、すでにそのスライムは居なかったららしい。


「ボクも話に聞いただけで見たことないから一応見ておきたかったんだけどね……」


 ユイは肩を竦める。


「庭になにか証拠になりそうなものありましたか?」

「いやまったく。というかこんな広い場所なんていくら時間があっても足りないよ」


 サクラがの問いに、ユイはやれやれと行った仕草で返答する。


「そうかぁ……じゃあ別に場所にいってみる?」


 その言葉を聞いてヒナタは別の案を出す。

 もともとは庭に行く予定だったが、証拠になりそうなものがないのなら仕方がないだろう。

 庭という広い場所に限られた時間を割くよりも、屋敷を調査しようという魂胆だ。


「じゃあレクリエーションルームに行きましょう!」

「サクラちゃん……遊ぶつもり?」


 レクリエーションルームに行こうというサクラの提案に、ヒナタは少し怪訝そうな表情を浮かべる。


「いえいえ、立派な調査ですよ!」


 そうは言うが、口元の笑いが隠せていない。


「はぁ、まぁいいけど。アズキちゃんもそれでいい?」

「……はい!」


 そうして、三人はレクリエーションルームへ向かった……いや、ユイも勝手についてきたので四人だ。


「たのもー!」


 サクラがいつもの調子でレクリエーションルームへと入る。もう皆慣れたものだ。


「ありゃ、誰もいませんね」


 しかしその声に応える少女はおらず、レクリエーションルームには誰も居ないようだった。


「しょうがない。各々見て回ろう」


 ヒナタがそう言うと、各々別れて調査することとなった。


「あ、これって……」


 アズキがなにかをみつけ、取り出した。


「ああ、剣ですね! ……あれ?」


 サクラがそれに答える。しかし、違和感を感じ取った。


「あれ、アズキちゃんそれ重くないの?」


 そう、アズキはその剣を取り出していた。

 アズキは首を縦に振り、そのまま剣をサクラに渡す。


「あれ、確かに重くないですね。こっちは重いままですけど」


 レクリエーションルームに残っていた『XIII』と『XV』の剣……つまりは『悪魔』と『死神』だが、『悪魔』のもののみ、自分たちのものと同じように羽根のような重さになっていた。


「うーん、前と変わったことといえば……キヨさんが大富豪するときとかにこの部屋に来たことくらいでしょうか」


 前にこの剣を持とうとしたときと今の状況の変化といえば、『悪魔』に選ばれたキヨがこの部屋に訪れたかどうかという程度だ。

『死神』は、この部屋に訪れる前に死んでしまっている


「なるほどわかった! つまりこの剣は、私たちがこの部屋に訪れれば軽くなるんだ!」


 ヒナタの推測ならば、今までのことも矛盾しない。

 ヒナタがこの部屋に足を踏み入れた直後、重さが羽のようになるならば、あの時サクラが投げ渡すことも可能だっただろう。

 思わぬところで謎が一つ解消された。


「ま、どういうからくりかはわかってないですけどね!」


 しかし結局はサクラの言う通り、仕組みは何一つわかっていないのであった。

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