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事故に遭いました~俺って全身不随?でも異世界では元気ハツラツ?  作者: サクラ近衛将監
第二章 再起と発展

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2ー15 復帰した健司の世界 その十一

 最上瑠偉嬢とデート中の俺(健司)だが、話がはずんでいる。

 多分、瑠偉嬢が俺に好意を持って接してくれているからこその効果だろうと思うんだが、話が合うんだな。


 彼女は、どうも、嫌なものは嫌と明確に言える性格のようだ。

 但し、男性との交際がこれまでものすごく(うと)かった所為(せい)で、男性と向き合うと中々言葉が出て来なかったんだそうだ。


 但し、あのホテルロビーでの救出劇の後、俺に対してはものすごく親近感を抱いたらしい。

 男性との会話経験が少ないとは言っても家族や従兄弟(いとこ)連中とはしっかりと会話していたらしいから、ある意味で人見知りと言うだけの事かもしれないんだが、中学・高校は自宅近くの安田学園(女子中学、女子高校)に通っていた所為もあって、男性に対する免疫が無く、小学校以来の友人(女)二人が居ても、男子生徒とは疎遠な関係だったようだ。


 一つには、祖父母の考え、特に祖母の教育理念からくるらしいが、彼女の家では『男女七歳にして席を同じゅうせず』と言う儒教の教えが未だに残っているらしい。

 その意味では、男女交際に厳しい家庭なのではと勘繰られるが、18歳になるとそれがいきなり放任されるのが最上家の家風なのだそうだ。


 とは言いながらも、小学校入学時から(しつけ)として身についた所作(しょさ)はそう簡単には変わるはずもなく、男女共学の大学へ入ってもかえって(こじ)らせていただけのようである。

 因みに幼稚園と小学校は、同じ安田学園でも男女共学であったようだぜ。


 高校からそのまま安田女子大学へ進学する道もあったようだけれど、祖母や両親の勧めで修道大学へ進学したそうだ。

 女子だけの中学・高校で6年間も純粋培養されていりゃぁ、男子との付き合いもそうそう簡単にはいかないんだろうな。


 俺の方は福山市内の幼稚園、小・中・高といずれも男女共学だったから、別段、女子に対して弱みは無い筈だが、まぁ、中学時代の一時期を除いては色恋沙汰には無縁だったな。

 中学時代の初恋相手で親しかった女子も、高校進学の時期に親の転勤で遠方へ行き。そのまま疎遠になったからな。


 高校では、それなりに周囲に女子は居たけれど、恋仲になるほど親しい者は居なかったし、就職してからも女性とはあまり縁が無かった。

 いや、まぁ、普通に女性と付き合うことはできるんだが、深入りはできなかったと言う方が正しいかもしれん。


 最上瑠偉嬢はと言えば、左程長い付き合いでもないのに、俺の脳裏にピンとくるものがあるとでも言えばよいのかな?

 良くわからない何かが後押しをしてくれているように感じるんだ。


 この女性を手放しちゃだめだとね。

 だからできる範囲で彼女との接点を保とうと頑張っている。


 その俺の思いに応えてくれるように瑠偉嬢も色々と話題を提供してくれるんだ。

 仕事の話、家族の話、友人たちの話と次から次へと会話が続く。


 男同士でもこんなにフランクに話ができたかどうか・・・・。

 イタリアンレストラン『O』でのランチには、2時間も費やして二人でお話ししていたよ。


 流石にあまり長くテーブルを占拠していると店の人に嫌われそうだから、午後三時近くには店を出た。

 瑠偉嬢の帰りの時間は、午後4時過ぎ(1627)なので、もう一時間ちょっとはお付き合いできるが、中途半端なんだよね。


 で、瑠偉嬢に相談すると、何と時間が有れば俺の船を観たいと言うんだよ。

 俺の船は、箕沖(みのおき)町のコンテナターミナルとごみ処理施設の間に三年前にできた福山箕沖マリーナに係留してある。


 俺の『シレーヌ号』は、全長が18mを超えるからな。

 小さなマリーナでは係留場所にも困るんだ。


 艇体の幅が大型バスの2倍ほどもあるので、収容力は半端ない。

 いわゆるキャビンは三室あって、宿泊も6名までなら悠々とできるし、宿泊せずに日帰りなら俺を含めて12名までなら大丈夫だな。


 定員が13名以上となると旅客船になってしまうので、色々と法規制が厳しくなるんだよ。

 俺の場合、クルーザーにそこまでの搭載人員を必要としていなかったから12名までの最大搭載人員としているんだが、緊急の場合にはもっと多数の人員を乗せることも物理的には可能だよ。


 キッチン、トイレ、シャワー設備までもあるから、レジャーに使うならすごく便利な船だぜ。

 自慢話ではないけれど、俺のクルーザーの話もちょっとしたから、彼女も興味を持ったようだね。


 イタリアンレストラン『O』から福山箕沖マリーナまで約12キロ、車で20分、そこから福山駅までも同じく20分程度はかかるだろう。

 つまりは20分程度なら俺のシレーヌ号の見学はできるということだ。


 瑠偉嬢の希望に沿うべく、レストランを出てすぐにタクシーを拾い、そのまま箕沖マリーナへ向かったよ。

 タクシーは、マリーナの入り口で待ってもらうことにした。


 クルーザーの見学は正味15分程度かな。

 運転席と後部のレストスペース、二階の運転席からの見通し、甲板下にあるキャビンやその他の設備まで説明しながら大急ぎで回ったよ。


 瑠偉嬢曰く、一度実際に乗ってクルージングをしてみたいとの話だったので、再来月7月の彼女の休みが日曜日らしいので、その時に天候さえ良ければ広島港へクルーザーで行くことにした。

 もし可能なら、瑠偉嬢の知人や友人も連れて来て構わないと言ったよ。


 但し、乗船場所は、これから手配しないと確保できないので別途メールで知らせることとし、俺は、前日には広島港までシレーヌ号を回航するつもりでいる。

 二か月に一度ぐらいは点検や整備をしているが、シレーヌ号を稼働するのは久しぶりになるな。


 ◇◇◇◇


 私は瑠偉。

 今日は初めての矢田さんとのデートです。


 待ち合わせの中央改札口でお会いして、そのまま徒歩で福山城へ向かいました。

 福山城も観光地になっていて、天守閣そのものが有料の博物館になっています。


 現在、老朽化による改装のため閉鎖されている広島城にはエレベーターなんかはついていませんでしたが、福山城にはエレベーターがついていましたね。

 尤も、ご老人や身体障碍者のための物らしく、矢田さんは階段を上ることを選択しました。


 天守閣の五階って結構高いし、階段も急こう配ですからね。

 一気に登るときついのでしょうけれど、地下階から一つの階を上るごとに、展示物がありますからそれを順次見て行くと、それほど疲れもしませんでした。


 左程歴史物には興味も無いんですけれど、矢田さんと一緒に見て回るととってもウキウキしている自分が居ましたね。

 あ、本当に惚れてしまったんだと思いました。


 矢田さんとのお付き合いを大事にしようと再度思いましたよ。

 天守閣の最上階で福山市街を望みましたが、矢田さんが隣に居て色々と町の様子を説明してくれました。


 それから天守閣を出て、公園となっている城内の敷地を散策し、最終的に駅側の道路に出て福山城の観光を一応おしまいになりました。

 矢田さんの説明では、他にも観光地として有名な場所もこの城のそばにあるのだそうですが、そちらを見ていると時間が足りなくなりそうなので、省くと仰っていました。


 そうして次はランチタイムなんだそうです。

 ランチは、駅ビルの中かなと思っていましたら、駅前のタクシー乗り場でタクシーに乗り、ちょっと遠出するようですね。


 タクシーで着いたのは、イタリア・レストランでした。

 今日のために予約をされていたようで、中で店員に名を告げるとすぐにリザーブ席に案内されました。


 すぐにメニューが手渡されましたが、こんな時はお任せが一番です。

 私が選んだからと言って美味しいものが食べられるとは限りません。


 矢田さんならこの店の美味しいものを選んでくれると信じています。

 その考えは当たっていました。


 矢田さんが頼んでくれた料理は、どれもとてもおいしいものばかりでした。

 手頃な価格で有名なチェーン店の『S』辺りに比べると、随分と違いが感じられるおいしい料理でした。


 福山市内でも有名なお店なのだそうですよ。

 そのお店で食事をしながら二時間も粘ったのは初めての経験です。


 ディナーでも普通は1時間前後でしょう。

 前菜も出ましたし、スープもデザートも出ましたけれど、飽くまでランチですからね。


 食べるのにそんなに時間がかかるわけではありません。

 食事の合間にする会話が楽しくて、ついついフォーク等の動きが止まってしまうのです。


 矢田さんはウィットに富んだ話をしてくれるんです。

 こちらから質問を投げかけると、それを受け止め、こちらが意図した答えよりもさらに深みを持たせた話をしてくれるんです。


 私とは5歳も違いますから経験も豊富なのでしょうけれど、それだけではない知性と言うものが感じられるんです。

 大学の教授とは違うけれど、それに似た雰囲気が感じられ、尊敬できる人という思いが強くなりましたね。


 私が事件に巻き込まれた際に大男の犯人を制圧した矢田さんの体術についてもお聞きしました。

 あれほど素早く的確に動けたのはきっと日頃から鍛錬していると思ったからなのですが、矢田さん曰く、病院に入院している間に体力も落ちていたので、退院してからそれなりにトレーニングはしたけれど、所謂武術のような技量は持っていないそうです。


 但し、空手や合気道に似た動きを真似て動いた結果が、犯人の制圧に結び付いたとおっしゃっていました。

 でも、素人が真似をしただけで簡単に大男を制圧できるとは思えませんよね。


 仮に矢田さんの言う通りであれば、矢田さんが先天的にそうした才能を持っているということなのかもしれません。

 今は規模は小さいながらも会社の最高責任者として商才を発揮されている方のようですから、武術なんぞには関りがある方では無いのかもしれません。


 親族の方々にも、剣道、柔道、空手などのいわゆる武道に通じる才能を持った方はいらっしゃらないようですけれど・・・。

 私の家は古風ですからね。


 私も薙刀と弓術を少々たしなんでいますよ。

 そのほかに琴も習いましたが、和楽器よりは幼い頃から慣れ親しんだピアノやエレクトーンが趣味としては好きですね。


 矢田さんは、音楽の方は演奏するよりも聞く方だそうです。

 イタリア・レストランでの会話も終えて、帰りの新幹線まで1時間ほどの余裕がありました。


 無論、もっと遅くの新幹線に変更しても構わないのですけれど、ころころと予定を変える女と見られたくはありませんので、予定通りに帰ります。

 次に福山に来るときは、場合により、もう少し遅くまで居てもよいかもしれませんね。

 


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