2ー13 復帰した健司の世界 その九
最上瑠偉です。
先日の占いでとても良い夢を見させてもらったので、思い切って一歩を踏み出します。
でも生憎と私の休みが難しいんですよね。
私の場合、お店の案内窓口的な仕事なので、休みの日自体が不規則な交替制なんです。
おまけに、午前中からお店に出るか、午後からお店に出るかで、早番と遅番があるんです。
そのためのスケジュール表が造られ、どうしても休暇が欲しい場合は、私達の中でやりくりしなければならないので、とても大変です。
先月は、親友の結婚式と言う立派な名目が有ったのでお休みを貰いましたけれど、普段は左程理由も無いのに年休は申請できないんです。
『家事都合』なんて大雑把な理由の申請では、とても通りそうにないんですよ。
勿論、『デートのため』なんて理由をつけたなら、きっと怖いお姉さまから叱られます。
但し、何故か、お見合いの場合は、きちんとした理由になるんだそうですよ。
それはともかく、4月中のお休みは下旬にたまたま土曜日が当たっただけでしたね。
ですから福山での結婚式に出席するために、日曜と月曜の二日の年休を申請したので、そのしわ寄せが来て今月はそもそも休みの日が少ないんです
他の休みはウィークデイですし、連休のお休みはありませんから、土日が休みの普通の勤務形態の方とは中々合わないんです。
親友の奈美とも一緒の休みなんかは中々に取れないんですよ。
それでも5月15日(日曜日)に私の休みが来ましたので、このまま突発的な交替要請が無い限り、矢田さんと最初のデートが実現しそうです。
別に、福山へ行って矢田さんと何かをしたいというわけではありません。
福山に行って、矢田さんの顔を見るだけでも良いんです。
でも最初っから、私のために矢田さんの時間を長いこと独占してはいけないでしょうから、控えめに午前10時半頃から午後16時半頃までを目途に大枠のスケジュールを立てました。
メールの内容は、要すれば5月15日にお会いしたいというだけの話なんですけれど、口頭で言って断られるのはとても耐えられそうになかったので、メールにしたんです。
メールを出して、返事が戻ってくるまでの時間って、本当に長かったし、ずっとドキドキしていましたね。
女の方から付き合ってくださいと言い出すのは、もしかしていけないことなのかしらとも思いながら、清水の舞台から飛び降りる覚悟でメールを出したんですよ。
私の願いが届いて、矢田さんからOKの返事が来たときは、本当に涙が出そうでした。
その後も何度かメールでやり取りし、私の福山着と福山発の予定時間を知らせたり、福山駅での待ち合わせ場所の確認をしたりして、準備を進めました。
でも、これで何とか取り敢えずの矢田さんとの交際の足掛かりはできました。
これから精々一月に一度程度でしょうけれど、矢田さんとの交際を大事にし、できるだけ二人の仲を進展させたいなと思っています。
多分、これが私の初恋だと思うので、欲張りかもしれませんが、占いにあったように是非とも成就させたいんです。
◇◇◇◇
俺(健司)の事業も軌道に乗っているから、当面の計画として、若干の正規社員を増やすけれど、このままの状態で推移しても良いのだろうと思っている。
新入社員というか派遣社員でウチに定着した人も含めて、社内の人間関係もうまくいっているよ。
この辺は中小企業に毛の生えた程度の規模で、上から下までのコミュニケーションが上手くできるからこそのメリットだと思うよ。
会社や組織の規模が巨大になるほど、社内の人間関係が、組織や地位による上下関係から生まれる柵に縛られるだろうし、また一人一人の顔も覚えられないほど希薄な交流になってしまいがちになる。
経営者としては、そうならないように常々留意しなければならないところだね。
ところで、福山駅近くのホテルで外人さんが引き起こした事件から一月も経たないうちに、最上瑠偉嬢からメールが届いた。
当然のことながら、今度は会社宛てにではなく、俺の個人用スマホにだ。
きちんと就業時間を外しているところが、彼女なりの気遣いなんだろうと思うな。
メールの要点は、今度の日曜日に福山へ行くつもりなので、俺と会えないだろうかと言うことだった。
15日(日曜日)に特段の予定は入っていないし、前にも言ったように、特段の理由がない限り、俺が美人の申し出を断るようなことはしないぜ。
逆に言えば、美女に弱いから色香に迷う恐れもある?
いやいや、俺にも人を見分ける目はあるつもりだし、必要とあれば鑑定をかけて人物鑑定もするよ。
少なくとも最上瑠偉嬢は、おしとやかな淑女と言っても差し支えない素敵な女性だよ。
彼女の実家は、広島藩の藩主であった浅野家の分家筋に当たるようであり、父親は広島市内でケミカル製品を造る会社のCEOをやっているようだ。
俺のちょっとしたリサーチでは、当該会社の経営もうまくいっているようだし、多分かなりの資産家だよね。
広島市内中区白島に、広い庭付きのお屋敷があるようだ。
広島から福山に来るには、新幹線を使うと一番早いので23分、一番遅いので50分だから、結構近いんだけれど、彼女にばかり余り負担をかけちゃいけないだろうな。
今回は向こうから誘われたわけだけれど、仮に、次に会う機会が有るようであれば、俺の方から声をかけて広島に出向いても良いと思う。
車でも高速道路を使えば、94キロ程度の距離だから、1時間ちょっとあれば着けるしね。
場合によっては、俺の持ち船であるシレーヌ号で行ってもいいだろうなぁ。
福山のマリーナから広島観音マリーナまでだと約75マイルの距離なので、3時間もあれば余裕で到着できるはずだ。
プレジャーボートを使った海洋レジャーとして考えるなら、6月以降の夏場に彼女を誘っても良いのかな?
今回、彼女からお誘いが来るくらいだから、俺のことは憎からず思っているに違いないし、俺も彼女には異性として非常に興味がある。
中学時代の初恋はともかく、大学時代も、社会人となってからも、ロマンスには縁が無かったからなぁ。
もしかして、俺にもようやく春が巡ってきたのかなという感じだぜ。
この機会を大事にしようと思っているぜ。
その後のメールのやり取りで、最上瑠偉嬢は、5月15日(日曜日)午前10時40分ごろに福山着の新幹線で来ることになった。
福山駅には俺が迎えに行くので、落ち合う場所も一番わかりやすい中央改札口付近と決めている。
因みに、彼女の場合、勤務形態が週休二日とは決まっているようではあるのだが、連休が無い上に、交替制のように休みを少しずつずらしてゆく方式のために、土曜日若しくは日曜に休みが当たるのは、概ね月に一度だけのようだ。
勿論、年休を取れば休みは取れるそうだけれど、どうしても同僚に迷惑をかけることになるので、できるだけ取らないようにしているそうだ。
今回、5月15日の休みがあったわけだが、次回の土日の休みは6月18日(土曜日)になるとのことだった。
広島へ戻るのは、同じく新幹線で福山発16時27分の予定だそうだ。
詳細は聞いていないけれど、広島で何か予定があるのかもしれないし、明るいうちに広島に着きたいのかもしれないな。
若しくは、俺との交際で最初だから遅くならないように配慮したかな?
さて、福山で彼女と会って、何をするかなんだが・・・・。
おそらく移動の時間も考えると正味5時間余りの自由時間になるんだろうが、一応、デートと考えて、それらしき場所を選ぶことにしたよ。
実のところ、福山市内で若い女性が行きたがりそうな場所と言えば、福山城以外には余り無いんだよな。
バラ公園もあるし、自動車時計博物館、まちづくり博物館なんてのもあるけれど、どうなんだろうね?
彼女がそんな分野に興味を持っていれば、そこでも良いのだけれど、・・・・。
ネットでお勧めのデートスポットを調べたら、福山市郊外の鞆の浦や、尾道あたりのカフェ巡りが入っていたな。
どちらも車で行けば左程の時間はかからないんだが、今回は時間的に難しいかもしれない。
そのほか、お勧めにはテーマパーク的なものもあったけれど、福山市内にあるのは子供向けの遊園地風だから、十代の頃ならともかく、俺と最上嬢が行くなら、周囲から浮いてしまう可能性もあるね。
コンサート等文化的な催しも市内の会館等で月に一度ぐらいはあるようだけれど、5月15日には何も予定されていなかったな。
それ以外のデートの定番では、映画かな。
福山駅近くにシネマが有るけど、こっちも1時間半から2時間近くを映画でつぶすのは何となくもったいないよな。
それなら福山城や近くの美術館を散策しながらお話しする方がよほど気が利いているような気がするよ。
それと服装の方は、折角スーツもオーダーメイドで新調して受け取っているのだけれど、デートにスーツはちょっと堅苦しそうだよね。
五月中旬だから、開襟シャツと薄めのジャケットぐらいでよいのかなと思っている。
若者らしく目立つ色合いを選ぶという手もあるけれど、どっちかと言えば、俺としては地味な方が好きななんだ。
ファッションも個性の発現だから、俺を見てもらうには普段着の方がいいだろう。
そう言えば、前回会った際は、そもそも外飯を食うつもりだったから、ジャケットにネクタイも締めていたんだよな。
よし、今回はネクタイなしで行こう。
あ、でも良い食事処に行こうとすれば、ネクタイも要るのかな?
いやいや、今回は時間的に見てもランチになるだろうから、普段着でも行けるところがいいな。
うーん、和食の店か、若しくはイタリアンにしようかな。
和食なら「T」だし、イタリアンなら「O」ぐらいかな?




