雑誌に掲載されました。
会計を済ませ家電量販店を出た後に私たちは違うフロアにある若い女性向けの洋服店へと入った。
入り口にはピックアップ↓と書かれた可愛いらしい手書きのポップが貼られていて彼女はその入り口のおすすめコーナーへと向かった。
『美咲さん、雑誌に載っていたのこの服じゃないですか?』
私はそこのコーナーへと向かうと可愛いポップの下には
雑誌に掲載されました!とデカデカと書かれた文字と一緒に私が見ていた雑誌の写真の切り抜きのような物も飾られていた。
『うん、これだ……』
そこには何度も何度も見返した雑誌のモデルさんが着ていたふんわりとしたキャメルのニットと薄いベージュの広がったスカートやその色違いの服が売られていた。
そしてその隣にはシルバーのラックにかけられた色とりどりのスカーフもあった。
私は少し興奮気味にその服を手に取った。
『ここのブランドの服だったんですね! 雑誌に載っていたの』の彼女は言ったが私は感動のあまり言葉を発することなくただただ頷く。
『私、これ全部ほしい……』
『えっ? 全部ですか?』と彼女は目を丸くして驚いた。
私は無心で色違いの服を手に取った。
『——美咲さん、試着はしっかりしましょうね! 着たらイメージと違うってこともありますから!』と慌てて言った。
最近私はこんなにも感動したことがあっただろうか……
大袈裟かもしれないけれど、でも何度も雑誌で見返したこの服は私にとっては有名人に会ったようなそんな感覚にも少し似ているような気もする。
そして、何枚か試着を済ませてMサイズの物を買うことにした。
ワンピースやカーディガン、雑誌に載っていた薄いニットのものからスカートなどかなりの量を選んだ。
例えていうならば今日から女性を始めました。
とでも言うほどの大量の服を服を千佳ちゃんにも持ってもらいながら二人でレジへと向かった。
『こちら合わせまして、20万6800円となります』
その店員さんの言葉に千佳は目を丸くして唖然とする。
私は財布からクレジットカードを取り出し『一回払いでお願いします』そう言って店員さんにクレジットカードを手渡した。
そして入り口の前で大きな紙袋三枚程に分けられた服を私は両手で受け取り店を後にした。
『——美咲さん、大人の女性って感じだなぁ』と言って千佳はグラスのミルクティーに口をつけた。
『そうかな?』と言いながら私はテーブルの上に並べられたスプーンを手に取りチョコレートパフェを頬張った。
そして、そのパフェの冷たく甘い味に『おいしっ!』と呟いて少し微笑んだ。
『私だとかが、どうしようかなーって悩んじゃう場面でもなんでも即決じゃないですか。 ここからここまで買う!みたいな感じで。 なんか見ていて気持ちよくなっちゃう位に』
『うーん、今日は即決だっただけで私意外と悩み症だよ? 基本優柔不断なんだー。 で、結局悩んだ末にやっぱり辞めちゃおうって楽な方に逃げちゃうんだ。 やっぱりこのままでいいか。っていっつも』
そう言ってパフェの上に乗ったウエハースを手で取り口の中へと運んだ。
『——それって恋愛の話ですか?』と千佳はグラスを持って少し前に身を乗り出した。
不意に確信をつかれた私は口の中で噛んでいたウエハースの粉が喉に張り付きそうになってゴホッゴホッとむせた。
『よくゼリー2つ買っていましたよね! 美咲さんの彼氏さんってイケメンなんですか!?』
『……うーん。 こんなこと言っちゃって良いのかな』
私のなんとも言えない表情を見て千佳は『どうしたんですか?』と心配そうに私を見つめた。
『……えっとね、実際のところ彼女でもないんだ私。 だって2番目だから……』
千佳はグラスのストローを回す手を止めて私を見つめた。
『それは彼女がいる人ってことですか?』
『……そういうこと。 最低だよね私』
千佳は少し、うーんと考えて話し始めた。
『私はどういう状況で二人がそういう関係になったのかは分かりませんけど、どちらか一人が悪いってこともないと思います。 彼女がいるその人が美咲さんとそういう関係になったのも悪いと思いますし、美咲さんも彼女がいるとわかっていながらっていうのも同じですよね……』
『わかってるんだ。頭ではちゃんとわかっているの。 ……でもね、好きなんだ』
そう言って私はバックから携帯を取り出して続けた。
『明日ね、私の誕生日祝ってくれるって彼からメッセージがきてね返信まだしていないんだけれど。 正直なところ今すぐ、行きたい!って返したい。 けど悩んでる変わりたいなって思ってるから……けど、きっと会ったらやっぱり離れたくないって思っちゃうから……』
『……もし、その彼が彼女を振ってやっぱり美咲さんと付き合いたい!って言ってきたら……美咲さんはどうしますか?』
『……うーん。 私、どうするんだろう……』
『美咲さんが後悔しない選択が一番です。 ですが、まぁ私はそんな浮気するような信用ならない男すぐ切り捨てますけどね! ズバッと!
だって、自分が彼女になった時もそういうことがなきにしもあらずじゃないですか!? 絶対嫌!』と千佳はストローを使わずにミルクティーをググッと飲み干した。
千佳ちゃんみたいに切り捨てる決断がしっかり出来れば
きっとすごく楽になる。
でもやっぱりそれを選べない、何処かで何かを期待してしまっている自分がどこかにいる。
私は亮太のメッセージを見つめて、テーブルの上のグラスを手に取り喉に流し込んだ。
『忘れられるならとっくに忘れてるんだよなぁ……』




