11話 病室
「う、う……ここ、は?」
俺が意識を取り戻して、まず目に飛び込んできたのは知らない白い天井だった。
うーん、頭がずきずきと痛くて辛い。俺、何で寝てるんだっけ……?というか、ここ何処だ……?
取りあえず顔と目だけ動かして辺りを見回してみる。どうやら俺はベッドで寝かされているらしい。多分、ここは病院なのだろう。
……にしても、なんだか布団が妙に重い気がする。何かが布団の上からのしかかっているみたいだが、のしかかっている「何か」を隠すように布団がもり上がっているから確認できない。ならば、と両手を動かそうとしてみるが、まるで鉛が詰められているみたいで、全く動かなかった。
「いでっ!? ……ててて」
体を起こして確認しようにも、鋭い痛みが全身を駆け抜けるから起きるのすら無理そうだ。
目が覚めたら身体のあちこちが痛いわ布団は重いわで散々だ。――ああ、思い出したぞ。こんな目に合う原因はひとつしか思い当たらない。さくらにナイフで刺されたのが原因だ。
あれは本当にさくらだったんだろうか。未だに信じられないけど、信じるしかないよな……
その時、俺にのしかかっている何かがもぞもぞと動き始めた。どうやらよっぽど寝起きが悪いらしく、「う、ううん……」と寝ぼけ声をあげてもぞもぞと動く。かと思えば動きが止まる。……あ、また動いた。
「う、うーん……? ……あ、マスター! ケガは大丈夫ですか?」
そこにいたのは、心配そうに俺を覗き込んでいる少女。さくらそのものだった。
つい先ほどまで俺を襲っていたさくらが目の前にいる。どうする?今度は止めをさすために油断を誘っているのかもしれない。……だけど、 目の前のさくらはどう見ても俺を心配してくれているようにしか見えない。
俺がさくらにどう接していいか分からず、さくらの問いかけに対して何も答えられないでいると、ふいにガラガラ、という扉を引いて開ける音が聞こえた。
「目が覚めたのね」
「お、お前はさっきの!?」
病室に入ってきたのは、先ほど俺を殺そうとした巫女そのものだった。
俺は咄嗟に巫女から距離を取ろうとしてしまい、余計に体を痛めてしまった。
「安心して、もうあの時みたいに襲ったりしないわ」
巫女は何もしない事をアピールするためか、両手を上にあげて、その場で何度かジャンプして見せた。……特に変わった物音はせず、聞こえてきたのは巫女が履いている草履の音のみだった。
「ね? 武器を持っていないって信じてくれたかしら?」
巫女はこれでもどう?とばかりに服を脱ごうとして――
「ぬ、脱がないで下さい!」
「……わ、分かった! 信じるから服を脱ぐな!」
俺とさくらの声が綺麗にはもった瞬間だった。
「……あの時は悪かったわ、私の勘違いで貴方を殺そうとしたんだもの」
俺の予想とは裏腹に、巫女は頭を下げて俺に謝罪をする。……え?勘違い……?
「ええ。ここ最近、私達精霊をさらう事件が相次いでいてね。精霊をさらうだなんて、精霊師くらいしか思いつかなかったものだから、てっきり貴方が事件の犯人だと……」
……は?精霊をさらう事件?何だそれ、初耳なんだが……というかそもそもお前、
「お前、もしかしてとは思ってたけどさ。精霊だったのか……?」
さくらが俺と巫女の顔を交互に覗き込む。さくらも何が何だか分かっていないようで、「え? ……え?」と連呼している。
「え? 貴方、精霊師でしょ? 精霊師なら、人と精霊の見分けくらい一瞬で出来るでしょ?」
「え? 精霊師ってそんな事も出来んのか?」
「……え?」
何言っているんだコイツ、とでも言いたげな顔をする巫女。……悪かったな、俺は精霊師になりたてで何にも知らないんだよ。
「あのな、俺は精霊師になりたてなんだよ。だから精霊師が出来る事とか、魔術の使い方とか詳しくは知らないんだよ」
俺が今知っている精霊師や魔術とはどういうものか、について巫女に話すと、「嘘、何も知らないの? 仕方ないわね、お詫びに色々教えてあげるわ」と言われてしまった。これは素直に喜んで良いのか、それとも警戒するべきなのか。というか……
……バイトとか、大学の勉強とかしないといけないんですが。
長らくお待たせしました、リアルが忙しかったんです(言い訳)




