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ハッと目が覚める。
ミュリエルは自分の部屋で寝ていた。
アランが怒っていたのを思い出す。
すごく怒って、、、キスされたわ。
思い出して恥ずかしくなる。
生まれて初めて、く、唇に、キスを、。
キスは、好意のある人にするんじゃないかしら。怒ってもするの?
イレギュラーな状況に、ミュリエルは理解が追いつかない。
「今何時かしら。」
外は真っ暗だが、気を失っていたせいで時間の感覚がわからない。
アランを起こしてはいけないと思ってそうっと部屋を出た。
喉が渇いたので、水を取りに1階へ降りる。
キッチンはキレイに片付いていた。
アランが片付けてくれたんだわ、と思ってため息をつく。
怒っていたけど、ミュリエルを部屋に運んでくれたし、片付けもしてくれたんだから、きっと落ち着いているはず。もう一度話しをしてみよう、ちょっと誤解があったんだわ、そうミュリエルが思っていると、
突然何者かに後ろから口を塞がれた。
「んー! ん!」
抵抗するが力では叶わない相手のようだ。ミュリエルの首を片手でじわっと締めてくる。
「静かに。あの男に気付かれたくないんです。私、あいつよりは弱いんで。」
男の声だった。知らない声だ。
「一瞬で楽に死ぬのと、時間をかけて人生を振り返りながら死ぬのと、どっちがいいですか?」
お菓子でも選ぶような軽い聞き方で聞かれる。
「誰!?」
一瞬手が緩んだ瞬間に声を上げる。
「ちっ。静かにと言ったでしょう。」
男が素早くミュリエルを拘束し、扉の影へ連れ込む。
しばらく沈黙するが、誰も来ないのを確認したのか、ふっと笑ったように息をした。
「あの男、いないんですか。おかしいな。昼間はいたでしょう?出かけてる?それはそれは、好都合」
ミュリエルが喋っても問題ないと思ったのか口から手を離した。
大きく息をする。
「誰なの?」
恐怖で引き攣った顔で尋ねる。
「名前はどうでもいいでしょう。あなたを殺しに来たんですよ。あの男と同じです。」
「あなたの言ってる、あの男って、、、、。」
「アランですよ。あなたがベタベタしてるあいつ。恋人ごっこはどうでした?」
*********
信じられない。
嘘、嘘。
ミュリエルを殺しに来たという男は、嬉しそうにペラペラと喋る。
アランが母に雇われた刺客だと。最初から、ミュリエルを殺す目的で近づき、家から離して置いて、1年経ったら殺す計画だったこと。
心が壊れていく。
「依頼者がね、ちょっと早めに片付けろって言ってるんですよ。あの男、それを聞いたはずなのに、なかなか殺らないから、仕方なしに私に依頼が。お金ある人はいいですよねぇー。
刺客が二人も来るって、あなた何者ですか。」
嘘だと思うには、この男はミュリエルのことに詳しすぎた。
軽い口調で話しをしているが、すごい力で拘束され、慣れた手付きでミュリエルを縛っていく。
「どうせ死ぬんだから強めに縛っちゃっていいですよね? ああ、痛いですか?我慢、我慢。」
手足が動かないように固定されてしまう。肩が変な角度に曲がって痛みが走る。男は首にくるっと縄をかけてじわじわと締め上げていく。
ひどくゆっくりで、長く苦しめる気でいることがわかる。
「依頼者がね、なるべく絶望させてから殺せって言うもんですから。本当だったらこんなグズグズやるの、嫌いなんですけど。」
この人、狂ってるー
ミュリエルをギチギチに拘束しながら、まるで世間話でもするような気やすさである。
苦しさを堪えながら、
「誰がー、依頼者って、誰」
やっと声を出すと、
「ジュリエッタ・カーマイン。私が教えたって、秘密にしてくださいね?」
殺し屋は人差し指を口に当てて嬉しそうにシーッとした。
ジュリエッタ。私をそこまでして消したいのか。
どうして。
生きているだけで、それも許せないのか。
最後にカップを投げつけられた日の朝を思い出す。
「ああ! でもあの男は夫人が雇ったんですよ。んー、だからコレとソレは別件ってことですね。」
男は自分とこの家を交互に指差して言った。
「まあ、手の込んだことをしましたね。私なら、体を犯して、気持ち良くしてポイ、ですけどね。あなた、運がいい」
縛られた首が苦しくて、意識が朦朧としてくる。
アランが刺客だった。その事実だけ頭をグルグル回る。
もう何も考えられないー。
「お前の運はここまでだ。」
アランの、声が聞こえたような気がした。
息ができない。
そこで意識が途切れた。




