#33:感謝
お久しぶりです。
「おっす、翔。今日も美少女たちに囲まれてて羨ましいぜ」
魔王を倒した翌日、俺たちはいつもと変わらず学校に登校していた。教室に入ると爽が俺に挨拶をしてきた。
「おう、おはよう」
「みんなもおはよう」
「おはよう、天野君」
胡桃は挨拶を返したが、ライリーは警戒した様子で俺の後ろに隠れてしまった。エマと恵令奈さんは普通に挨拶を返していた。影音に至っては挨拶を返す気もなく、そっぽを向いてしまっていた。
「あはは、ごめんね。びっくりさせちゃったかな。それじゃあ俺は失礼するよ」
そう言うと、爽は他の男子生徒の元へと去っていった。
「そういえば、胡桃は他の女子たちの所に行かなくていいのか?」
「まぁ行ってもいいんだけど、そうするとライリーたちがずっと翔の傍にいるじゃない?だからその……それはずるいというか?」
「え、何か言ったか?」
「何も言ってないわよ!?とにかく、私は渉の両親から面倒を任されてるんだし、皆と一人だけ仲間外れにしないでよね、全く」
少し圧をかけて、そう話してくる彼女の迫力に飲まれて俺は首を縦に振ることしかできなかった。
放課後、俺たちは文芸部の部室へと向かっていた。文芸部の扉を開けると、そこには既に新条先輩と未来がいた。
「こんにちは、佐山君。皆さんも、いらっしゃい」
「ヤッホー先輩。暇だったから先に来たよ」
俺たちは先輩に挨拶をすると、部室の中に入った。ちなみに未来は今日仕事はなく、暇なので先に部活に来ていたというわけだ。
「みんな遅れちゃってごめん。揃ってるかな?」
少し遅れて、暁先生が部室に入ってきた。彼女は靴を脱いで、部屋の中まで入ってくる。文系部は入口に靴を脱ぐところがあり、脱いでから入る決まりになっている。靴を脱ぐ文化がない、ライリーたちも今はしっかりとその風習を守ってくれている。
「それじゃあまずはみんな。改めて、私と芹香ちゃんを助けてくれてありがとね」
「私からもお礼をありがとうございます」
そう言うと、彼女たちは少し頭を下げた。
「頭を上げてください。俺たちはたまたま通りかかっただけですし」
「たまたま通りかかるねぇ。それでも違う世界で拉致されちゃってた私たちを助けに来てくれた皆は立派なヒーローであり広いんだよ。ね、芹香ちゃん?」
「はい、皆さんとてもカッコよかったです」
新条先輩はそう言うと嬉しそうにそう言ってくれた。
「あまり気にしないでください。私は、カケル君の大事な人を助けるためと、一応自分のいた世界のしりぬぐいをしただけなので」
「それでもきっかけはどうであれ、私たちを助けてくれたことは嬉しいんだよ。だから、ありがとね」
暁先生はそう言うと、ライリーの頭を優しく撫でていた。ライリーは喜んだ表情は見せなかったものの、それを拒否する動作を一切見せることがなかった。しばらくすると、先生は彼女を撫でるのをやめて胡桃たちの方に向いた。
「胡桃ちゃんたちもありがとね」
「いえ、気にしないでください。私は何があっても翔についていくだけだから」
「私もカケルさんには住むところを与えてくださって、他にも色々なものを貰いました。だから、私はそれを恩返しをするために働いただけです」
「お姉さんもま、そんなところね」
そんな彼女たちの言葉を聞き、暁先生は何かを考えるような仕草を見せた。そしてにやりと揶揄うような笑みを浮かべた。
「いやぁ、佐山君モテモテだねぇ」
「いや、そんなことないですよ?」
「私は大好きだよ。カケル君」
「ちょっと、ライリー離れなさい!」
「ライリーも胡桃ちゃんもずるいじゃない。お姉さんも混ぜて」
真っすぐと好意を伝えてくれるライリーが居て、彼女がくっつくと全力で離そうとする胡桃がいて、そんな彼女たちを真似して抱き着いてくる恵令奈さんと遠巻きで羨ましそうに見つめる新条先輩。そんな彼女たちがいるのに自覚してない何てと、このときの暁先生は心の中で呆れていたそうだが、そんなことは今の俺に知る由はなかった。




