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予言の紅星5 ロームズの反乱  作者: 杵築しゅん
全員集合

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ギルバート神父合流する

新章スタートしました。よろしくお願いします。

 そこは短い草がビッチリ生えている、平らな場所だった。あまり見掛けない草だなあと思いながら、キアは傭兵の男の気配に気を付けながら、草の絨毯の上にやって来た。

 その10センチ足らずの草は、白い小さな花を咲かせていた。イツキはその草の葉には見覚えが無かったが、花には見覚えがあった。

 その小さな白い花は痛み止に効果が有ると、ブルーノア教会病院で最近話題になっていたが、自生地が少ない上に、花に効果があったので、花が咲く時期でないと採取出来なかったのだ。1つの株には花が鈴なりに咲いていて、親指大の二葉よりも花の方が大きく伸びていた。


「何てことだ!お宝の山じゃないか……これは寝転がっている場合じゃない」


キア(イツキ)は感動して呟いた後、クルリと向きを変えて男の方に引き返した。

 喜びのあまり男言葉になっていたが、傭兵はそんなことを気にしてはいなかったようで、ニヤニヤ笑いながら突然剣を抜いた。


「ねえちゃん、死にたくなければ服を脱ぎな。俺が可愛がってやるよ」

「あら、薬草採取に剣なんて必要ありませんわ!それに、いくら暑くても、この服を脱ぐと色々と都合が悪いのわたし」

「死にたいのか?つべこべ言わず、服を脱いでそこに寝ろ!」


剣を抜いて脅しているのに、動じる様子を見せないキアに、この娘は頭が弱いのか?と首を捻る。普通なら「キャー助けて!」と叫ぶ場面である。いつもと違う展開に、どうも調子が狂う傭兵だった。


「わたし、せっかちな人は好きじゃないわ!それに……この草は薬草だから、踏みつけたり出来ないわ」


目の前に剣を突き付けられていると言うのに、ピント外れなことを言うキアは、傭兵に向かって逆にニヤリと笑ってみせる。

 キアと傭兵の後ろを、そろそろと尾行していたヤマギが、ようやく追い付いて来て、剣を抜いて準備OKの視線を向けたのだ。


「出来るだけケガはさせたくなかったけど、足場が悪いから仕方ないわね」


キアの言葉を合図に、ヤマギは傭兵に向かって「覚悟しろ!」と声を掛けて、容赦なく剣を振り下ろした。

 傭兵は突然後方から聴こえた声の方を振り返り、振り下ろされた剣を避けるのが精一杯だった。レガート軍で鍛えられた剣の腕と、傭兵のそれでは力の差は歴然だった。あっさりと剣を奪い、首元に剣を突き付けたヤマギは、傭兵の剣をキアの方に投げて、傭兵に服を脱ぐよう命令した。


 その間キアは、希少な薬草を発見できた嬉しさで、鼻唄を歌いながら花を摘んでいた。


「ご苦労様マギさん。流石ですね。凄いお宝の薬草を発見しました。だからこの男の命は、この場で奪うのは止めましょう。でも、重要なことだけは吐いていただきます。あら?なんだか不服そうですね」


ヤマギに剣を突き付けられ身動きできない男の体を、脱がせた上着で縛りながら、既に【銀色のオーラ】を発動しながらキアは言う。


「お前ら、俺様にこんなことをして、タダで済むと思うなよ!教会の人間なんて皆殺しにしてやる!」


男はキアを睨み付けながら、とんでもない暴言を吐いた。


「そう……アナタ、ギラ新教の信者なのね……そうなんだ。良かった遠慮は要らないみたい。マギさん、少し離れていてくださるかしら。タダでは済まないことになりそうだから……」



 それから15分、男の呻き声がランドル山脈に低く響き渡った。


「15分しか持たないなんて……ふぅ……まあいいわ。残りの情報はハビル正教会に任せましょう。全てが解決したら、埋められている町の人を、きちんと墓地に移して葬儀をしましょう。でも、オーブさんとソルさんのお兄さんは、まだ生きている可能性があるわね。他の5人の方は残念だけど……」


【銀色のオーラ】の力で吐かせた結果、この傭兵が殺した住民は5人だった。レガート国へ窮状を直訴しようと山側から向かった住民は、やはり殺されていた。

 ただ、住民がロームズを出ることを禁止される直前に旅立った、工場長の長男でありオーブさんとソルさんの兄は、この男の手に掛かってはいなかった。


 キアは4分の1の花を残し、採取した花を袋に詰める。ヤマギは気絶していた傭兵を叩き起こして、教会まで連行する。

 騒いだら煩いので傭兵は猿ぐつわをされているが、キアと視線が合うとガタガタと震え始めるので、仕方なくキアは2人の後ろを歩くことにした。






 教会に到着した2人は、少し遅めの昼食をとった後、執務室で午後からの予定を全員で確認する。

 その間ソル親子は、仲良く住民の皆さんの為にスープを作っている。


「今朝ミム(通信鳥)が届けてくれた手紙によると、間もなくハビル正教会から、レクスが警備隊と神父を連れて戻ってきます。捕らえた2人の傭兵は礼拝堂の中に入れておきましょう。今日中にもう2、3人は捕らえる予定です。午後からフィリップさんとガルロさんとハモンドは、ケガ人の治療をお願いします。僕は病人を診ます」


「俺とガルロとハモンドは、2年前の時も同じようにケガ人の治療をしたから、住民も安心出来るだろう。ハビル正教会の者はどうする?」


フィリップは不機嫌そうにイツキに尋ねる。ヤマギから山でのことを聞いたフィリップとハモンドは、体をはった(少女であることを餌?にする)キアの遣り方に対し、あまりにも危機感が無いと怒っていた。


「警備隊の人には教会の回りの見回りをして貰います。神父には礼拝堂で祈りをお願いします。レクスは受け付けかな……ヤマギさんは……狩りをお願いします」


フィリップとハモンドに、イツキ(キア)を危険に晒したと責められたヤマギは「俺のせい?」と反論して、フィリップに殴られていた。なので、自分のせいで殴られたヤマギに、申し訳なさそうに狩りに行って貰うことにしたイツキである。


 そんなちょと重い空気の中、モーリス、教会警備隊4人を連れて、レクスがハビル正教会から戻ってきた。


「お帰りなさいレクスさん!お疲れ様です。いいタイミングで帰ってくれました」


キアは執務室を出て、礼拝堂の前でニコニコと一行を笑顔で迎える。

 フィリップとハモンドは、ちっとも反省する様子のないキアに、ハーッと息を吐く。


「お疲れ様です。モーリス(中位神父)のフィリップです」と、同じくモーリスの神服を着たギルバートに、フィリップは挨拶をして握手を求めた。ギルバート神父も名乗りながら握手をする。


 フィリップは一先ず一行を集会所に案内して、これからの予定を説明する。

 ソル親子がお茶を運んできてくれたので、少し休憩した後で教会内を案内し、仕事を開始して貰うことにした。今日からハビル正教会組が、集会所で寝泊まりすることになったので、イツキたちは荷物を神父の住居に移動する。


 ギルバート神父は、リース(聖人)様はどちらにいらっしゃるのだろうかと、キョロキョロと辺りを見回し探してみる。確か教会の手伝いの少女として潜入していた筈だがと。

 しかし、いくら探しても、それらしき男が女性に変装している人物が見当たらない。


「あのう、他にも教会の手伝いをしている、女性の方はいらっしゃいますか?」


たまたま通りかかったキアに、ギルバート神父は質問する。


「いいえモーリス様、わたしとソルさん親子だけですわ。どなたかお探しですか?」


レクスから、教会の手伝いの少女としてイツキ様は潜入していると、ハビル正教会で教えてしまったと報告を受けていたキアは、極上の笑顔でにっこりと答えた。

 ギルバート神父はキアの笑顔を眩しそうに見ながら、『そんな筈はない、あり得ない』と心の中で呟きながら、混乱していた。


「フィリップ神父から、礼拝堂で祈りの準備をするよう指示されたのですが、何時に始めたら良いのか……手伝いの少女に聞いて欲しいと言われまして」


キアの全身をもう1度じっと見ながら、本当の少女にしか見えないギルバート神父は、自信なさ気に訊ねてみる。


「そうですね、住民が来るのは午後3時からです。ですので午後3時30分頃がいいと思います。長いこと神父様の祈りの声を聴いていないでしょうから、窓を全て開けてお祈りください。ただし、礼拝堂の入口は閉めておかねばなりません」


キアはそう答えて軽く礼をとり、礼拝堂にご案内しますと言って歩き始めた。

 ギルバート神父は迷っていた……目の前を歩く少女がリース(聖人)様なのだろうか?もしかして家名がイツキで、本当は女性なのかもしれないと。(確かに家名はイツキになっているので、間違ってはいない)

 しかし、ギルバート神父が思うリース様とは、自分のような者に礼をとったりしない、威厳のある態度で、人々を高いところから従える存在だったのだ。


 混乱する気持ちのまま、礼拝堂の扉は開かれ、中に入ると2人の傭兵が縛られ転がされていた。ギルバート神父が近付くと「ここから出せ!」「殺すぞお前!」みたいな視線を向けてくる。

 ギルバート神父は、目付きの悪さや雰囲気から、聞きしに勝る悪辣非道な傭兵たちだと、嫌悪感を露にして冷たい目で見下げる。

 しかしギルバート神父の後ろで、腕を組み仁王立ちしているキアが視線に入った途端、恐怖でガタガタと震え始めた。震えるつもりはないのだが、本能が危険と恐怖を察知するようで、自分の意思に関係なく震えるのであった。


「ギルバート神父様、祭壇の準備は出来ていますので、午後の祈りをどうぞ。住民の皆さんには《神の許しを願う祈り》をお願いします。それでは失礼します」


キアは用件だけ伝えて、さっさと礼拝堂を出ていった。残されたギルバート神父は、結局キアの正体を計り兼ねたまま、午後の祈りを捧げるのだった。





 午後3時前、教会の敷地に入って良いのか迷い、不安そうに教会の門の前を行ったり来たりする住民が、ちらほらと現れ始めた。


「さあどうぞ、本教会から派遣されて看護師が来ています。神父様もケガの治療をされますよ。心ばかりのスープも用意しています。遠慮されずにどうぞ!」


受付を任されたレクスが、明るい笑顔で住民に声をかける。イツキから笑顔を絶やすなと指示が出ているので、懸命に笑顔を作っている。

 1番最初の患者は10歳くらいの子供を連れた親子だった。昨日工事現場でケガをした息子が、あまりに痛がるので連れて来たらしい。


「これは……骨が折れているようだ。副え木をして腕を吊らねばならない」


ケガ人担当のモーリス(中位神父)のフィリップ神父が、懸命に痛みを我慢している男の子に診断を告げる。するとその子は「仕事できますか?」と尋ねてきた。


「骨折したら1ヶ月は動かしてはいけないんだ。だから仕事は出来ないよ」


骨折をしているのに、働けるかと訊いてきた子供に、複雑な表情で答えるフィリップは、今一つ子供の扱いに慣れていなかった。

 モーリス様の答えを聞いた子供は、ポロポロと涙を溢して泣き始めた。


「心配するなカズン、お金なら父ちゃんがなんとかする……お前は休んでいろ」

「でも、母ちゃんも働けないし……」


「大丈夫よカズン君、働けない分の罰金は心配しなくても大丈夫。だから、神父様にケガの手当てをして貰おうね」


キアはギルバート神父と一緒に様子を見ていたが、明るい笑顔で話し掛け、優しく子供を抱き締め頭を撫でて落ち着かせる。そして父親に「治療が終わるまで、こちらへどうぞ」と言って、病人用のテントまで案内する。


「罰金?休んだら罰金を取るのですか?しかも子供から?」


ギルバート神父は驚いたように父親とキアに問い掛けた。


いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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