↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
予言の紅星5 ロームズの反乱  作者: 杵築しゅん
ロームズ潜入

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/79

ロームズ潜入(2)

次話から新章がスタートします。

 驚いた顔のドグにイツキはしたり顔で微笑むと、指揮官としての顔に切り替え、ドグから報告を受ける。


「では、ロームズの現況を報告します。ロームズ駐在員は60名、その内国境警備隊が30名、警備隊が20名、事務方の文官が5名、レガート軍本部事務官、レガート軍少佐、警備隊隊長、事務官兼統治官補佐、統治官です。

 しかし、統治官同様に、警備隊隊長と数名の警備隊員の姿が確認できません。その上、警備隊員でもない傭兵がロームズの住民たちを管理しています」


「では、統治官のウルファー侯爵だけではなく、警備隊隊長や隊員までもが幽閉の可能性が高いと言う訳かドグ?」


国境警備隊副隊長のヤマギは、予想以上の状況の悪さに驚きの声を上げる。


「そうだ……しかも……信じたくはないが、レガート軍を指揮している少佐のロイスは、統治官補佐のサイシス伯爵と常に行動を共にしている。恐らくロイスは【ギラ新教徒】だろう」


ドグは忌ま忌ましそうに言いながら、軍関係者に裏切り者が、【ギラ新教徒】が居たことに嫌悪感を露にする。

 レガート国内で出された《ギラ新教徒は貴族の爵位を剥奪する》という公布を受けて、活動の場を国外やロームズ等に移す者が出ることは、予想の範疇だったはずだが、チェックが甘かったと反省するしかない。

 全員が新たな事実に絶句しながら、怒りに震える。特に初めて作戦に参加する王宮警備隊のレクスは、警備隊隊長を幽閉している事実に怒りの感情が押さえきれず、「クソッ」と言いながら拳で床を叩き付けた。



「王の目として動いているドグさんは、軍関係者には面が割れていません。そこで、ロームズ駐在員の中でも信用できそうな者を、秘密裏に教会へ連れてきてください。ヤマギさんも知っている者の中で、味方に引き入れられる者が居たら、同様に連れてきてください。勿論変装してくださいね」


イツキは駐在員の敵味方の状況を把握することを優先し、幽閉されている統治官、警備隊隊長、町長他の安否確認を次の優先事項に置くことを指示する。


「フィリップさん、到着したら直ぐにモーリス(中位神父)として統治官に挨拶に行ってください。そうですね……屋敷に行く時は眼鏡を掛けてください。モーリスの神服と眼鏡があれば、意外とレガート国の者には気付かれないでしょう。苦しんでいる住民に会ったら、眼鏡を外して声を掛けてあげてください」


イツキは初動の任務を順に指示し、頭の中でいくつかのストーリーを組み立てていく。 


「イツキ先生、俺は軍本部にずっと居たので、意外と面が割れていると思います。どう動けば良いでしょうか?」


神父としてロームズに潜入するが、軍関係者には会うのは危険だと思っているハモンドは、自分の役割を確認する。


「ハモンドは今回、ロームズ教会からは出ずに、教会にやって来る住民からの情報と、味方となる駐在員からの情報の集約をして貰います。とても重要な任務になるので、くれぐれも軍関係者だと住民に悟られないよう気を付けてください」


「承知しました!」


ハモンドは自分の任務の重要性に、気持ちを引き締めて返事をする。


「さて、レクスは1番自由に動けるのですが、フィリップ神父は【魔獣調査隊】としてロームズに滞在します。よって、レクスは魔獣の調査が主な任務です」


「魔獣調査ですか?ということは、ランドル山脈の山に登ったりして狩りをするのでしょうか?」


なんだか自分だけおいてけぼりのような気がするレクスは、少し不満げに質問する。


「当然狩りもして貰いますが、レクスには王様への連絡係りをして貰います。ロームズから手紙を出すことは危険です。狩りに出た振りをして、ロームズの先にある都市ハビルの、ハビル正教会から密書を送る役目を担って貰います」


イツキはそう言いながら、ブルーノア教会にはハヤマ(通信鳥)による通信網があることを説明する。

 ハビル正教会からカルート国の首都ヘサに在るヘサ正教会へ、ヘサ正教会からレガート国のラミル正教会にハヤマが飛ばされ、早ければ5日で王宮へと知らせを届けられる。そして逆ルートでバルファー王からの返信が10日か11日後にはハビル正教会に届くことになる。

 急ぎの連絡にはイツキのミム(ハヤマ)が、ハビル正教会に飛ぶことになる。


「分かりました。では私は狩りに出たりハビル正教会に行ったりと、動き回るのが任務ですね。承知しました」


レクスは自分の任務も重要なのだと分かり、嬉しそうに返事をした。


「それから、名前で呼び合うと危険ですから、フィリップさんのことはモーリス様、ハモンドは神父様又は神父さんで。ヤマギさんは……マギさん、レクスは……う~ん……家名のポルトからポルで良いでしょう。ドグさんはドグさんで。間違えたら……冒険者として、ハキ神国の密偵に出て貰います」


「ええぇぇっ!ハキ神国に密偵?」(全員)

「せっかくロームズまで来たので、ハキ神国の情勢を探るのも良いでしょう」

「「…………」」


イツキはにっこりと、ペナルティーを言い渡す。ハキ神国語が苦手な4人には、勉強になるよねっと付け加えて。

 明日は村長が荷馬車を出してくれることになっているので、日の出と共に出発する。






 1098年5月27日、イツキたち一行は午前中にロームズに到着した。

 入国の為に検問所に到着すると、如何にも傭兵ですという感じの男が2人出てきて、身分確認と目的を訪ねられた。


「この方たちは、ブルーノア教会の皆さんです。私は隣のビビド村のキアと申します。今日から叔母のミリドに代わり、教会のお世話をすることになりました」


キア(イツキ)は急遽村長に作って貰った身分証を見せながら、一行を紹介する。

 フィリップとハモンドは、ルナ正教会で身分証を発行して貰っていた。

 ヤマギとレクスは、イツキとフィリップが強盗たちを警備隊の本部で取り調べている間に、レガートの森で狩った魔獣の毛皮と薬草をドゴルに持ち込んだ際、冒険者登録をしておいた。

 ドグは元々冒険者登録をしていたので、なんの問題も無い……はずだったが、係員に入国を止められた。


「お前は、何度かロームズに入国しているが、今月はもう入国できないぞ!今月2回入国しているからダメだ」


係員は、何度もロームズにやって来るドグを、怪しい奴だとマークしていた。


「いや、今回は親戚に会いに来た訳じゃあない。神父様の護衛に雇われたんだ。それに、俺が度々ロームズに来ていたのは、本当は恋人に会うためなんだ。今度こそプロポーズしようと思っている」


ドグは深々と頭を下げて、係員にお願いする。


「あのう……教会の神父様の護衛は、特にモーリス様以上の神父様の護衛は、領主の許可なく入国出来る決まりがあります。もしも拒否されるなら、レガート国王に届け出ることになりますが宜しいですか?」


キアは上目使いに係員を見ながら、決まりを知らなかった係員を可愛く脅す。

 その間に全員は名前と入国の目的を、さらさらと記入していく。


「いや、あ、それなら仕方ない。で、お前は教会で働くのだな?」


「はいそうです。どうぞ祈りの時間に来てくださいね。素敵な係員さん。えっと、警備隊の方ですか?」とキアは極上の笑顔で2人に問い掛ける。


「何故そんなことを聞く?」係員の2人は、キアの笑顔にだらしなく鼻の下を伸ばしながらも、警戒して問い質してくる。


「だって、警備隊の人とか軍の人って怖そうだから……そうじゃなかったらいいなあって思って……ごめんなさい」


もじもじと恥ずかしそうにキアは答え、両手を胸の前で組んで可愛く2人を見つめる。


「そ、そうか、いや、俺たちは雇われてはいるが警備隊でも軍の人間でもない。お、お前は恋人は居るのか」


そう訊いた男の脇腹を、隣の男が肘でこずき、独身らしい係員(傭兵)の2人は、こぞって自分の名前をキアに告げている。

 ハモンドは、やっぱりなという顔をして、は~っとため息をつく。初っぱなからこれだ・・・だから危険だと言ったのにと先が思いやられる。

 フィリップは神父様らしからぬ、怒りの視線で2人の係員を睨み付けているが、当の係員たちは全く気付いていない。

 ヤマギとドグとレクスは、ハハハと笑いながらイツキの演技力に感服する。


「私はまだ14歳だから、恋人なんて居ないわ。約束よ、きっと教会に来てね!」


キアは最後に自分の名前を記入し、バイバイと無邪気に手を振りながら、あっさりと全員を入国させた。



「キアさん、無闇に愛想を振り撒くのは止めてください!怪しい奴等が教会の回りをうろつくことになります」


「あらモーリス(中位神父)様、これも作戦の内ですわ。相変わらず心配性ね」


キアの言葉を聞いて、フィリップとハモンド以外の3人の肩が揺れている……懸命に笑いを堪えているが、明らかに笑っているとバレている。


「キアちゃん。モーリス様はキアちゃんをお守りする使命があるのです。私も神父として心配でなりません」


ハモンドはフィリップの気持ちが痛い程分かるので、つい厳しい口調で言ってしまう。とにかくイツキはやり過ぎてしまうのだ。


「分かりました。愛想を振り撒く時には、必ず誰かと一緒に居る時にします。それなら良いでしょう?モーリス様。神父様?」


先頭を歩くキアは、くるりと後ろを振り返ると、ちょっと剥れた感じで返事をする。その姿がまた可愛くて、2人の従者(保護者フィリップ・子分ハモンド)は、再び「フ~ッ」と息を吐き肩を落とす。



 懐かしい町の中に入って行くと、随分と町並みは復興していた。

 ハキ神国軍の投石機による攻撃で、建物の損傷が激しかったが、建て替えられたり補修がしてあり、皆の頑張りが見てとれた。


「それにしても、なかなか人に出会いませんね?本当に女性や子供まで、建設作業に駆り出されているのでしょうか?」


ヤマギはぐるりと辺りを見回しても、誰1人として人影が無いことを懸念する。


「これは……本当に限界が来ているかもしれません。モーリス(中位神父)様とポルさんとドグさんは、このまま現場を確認してきてください。わたしは達はロームズ教会に居ますから」


キアは指示を出すと、祈るような気持ちで、急いでロームズ教会を目指した。



 教会の前まで来たところで、女性と子供の泣き声が聞こえてきた。慌てて駆け付けると、傭兵らしき男に住民が暴力を振るわれていた。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

次話からロームズでの活動がスタートします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。