最強の戦士の過去
騒ぎを聞きつけた族長は目の前にある光景が信じられなかった。
体は大きいがいつもゴンジイの膝の上で小さくなっていた仔が、巨大なマンモスの頭頂で雄叫びを上げている。
この仔が狩りとったのは一目瞭然だ。
しきたりを乗り越える前に狩りにでたものなどいない。
しきたりは狩りに出れる肉体かどうか試すものだったからだ。
故にムロフシは唯一の単独マンモス撃破者であると同時に、唯一のしきたり未踏破者にもなった。
族長もまた集落を束ねるもの。
この最強の戦士を上手く使い、部族を発展させるために頭の中でそろばんを弾く。
族長の頬はゆるみっぱなしだった。
もちろんこの時代にそろばんはないし、所詮は古代人。
マンモス肉が食えることを喜んでいただけなのかもしれない。
族長はにこやかな笑みを浮かべ最強の戦士となったムロフシにガウガウジェスチャーを用いて褒美を取らせようとした。
もちろん狩ったマンモス肉の美味しい部位はムロフシのものだ、これは褒美でなく勝者の特権だからだ。
族長の証たる聖なる槍。
これだけは認められない。
だが、それ以外なら綺麗な石や、怪鳥の羽飾り、強く美しいメス、どんな宝でも渡すつもりでいた。
しかしムロフシが指さしたのは年老い戦えなくなった戦士、そうゴンジイだった。
族長には理解できなかった。
ゴンジイに懐いているのは知っているが褒美として戦えない戦士を求めてどうするのか?
だが族長に二言はない。
欲しいのならくれてやらねばならぬ。
ゴンジイはこの日ムロフシのものとなった。
その夜からムロフシの寝床から誰の声ともつかぬ叫び声が聞こえるようになったとかならないとか。
これ以上はプライバシーの侵害である。
そんなことをムロフシは思い出していた。
自分が最強の戦士だと疑わなかった。
しかし新族長は未熟だったとはいえ幼きムロフシの心に大きすぎるキズをつけたあの恐怖を振るう不思議な力がある。
身内を守るために戦う意思もある。
そしてこの最強の戦士であるムロフシを打ち倒したのだ。
ならばムロフシにできることは唯一つ。
新族長をムロフシよりも強きものと認め、新族長として支えていくのだ。
そこまで回想していた折、泣きやんだメスにまとわりつかれ嫌そうな顔をした新族長がムロフシの前に立っていた。
そしてムロフシを見てこう言った。
「ムロフシ、あんた言葉理解してるよね?どぅーゆーあんだすたん?♡」
衆道は日本の誇る文化だから(震え声)




