十三にはまると博子との頻度下がるかもという会計士先生。博子はそんなことなくて経験値があがり話の幅が広がると説明する
「えー、でもそれって。」
会計士先生が、少しだけ本音っぽい顔で言う。
「博子さんに来る頻度が、低くなるかもしれないじゃないですか?」
その問いに、博子は一瞬だけきょとんとした顔をしてから、すぐに返す。
「え、低くなるんですか?」
「いや、だって。」
先生は、少し笑いながらも続ける。
「私は金土じゃないですか。」
「まあ、大体金曜日ですね。」「でも今、なんだ。」「税理士先生の座組と被ってるから。」
「そこは入れ違いで来てるじゃないですか。」
「そうですね。」
「で、まあ土曜日になることもあるけど。」「でも、先生として。」
博子は、そこでゆっくり言葉を選ぶ。
「別に私のことを減らそうっていうわけでもなく。」
「かといって、ガチ恋でバンバン来たら。」「どうせ私、今パンパンやから。」
「出た。」
先生が少し笑う。
「受け止めきれへんから、先生の満足度も下がるでしょ?」
その言い方に、会計士先生は少し黙る。
たしかに、と思うところがあるからである。
「で。」
ヒロコは、そのまま続ける。
「それよりも、そういう十三で経験値を積んで。」
「いろんなデートコースを探すっていうことは。」
「先々、他の人とデートするときにも役立つかもしれないじゃないですか。」
「なるほど。」
「だから。」
博子は少し笑う。
「やっぱり、安い土地柄、女の子から積極的に店やデートコース探すとか、
多分しないと思うんです。」「私みたいにね。」
「そこやな。」
先生が苦笑いする。
「だから。」
博子は指を軽く立てる。
「先生のその、食べログスキルとかGoogleスキルも身につくかもしれんし。」
「もうちょっと違うものが、ボロンと出てくるかもしれないじゃないですか。」
「ボロンて。」
「そこで好感度上げたりしたら、と。」
「なるほどな。」
「だから、そこはゲーム感覚でやってみて。」「やっぱり慣れていかんと。」
「うん。」
「そらあれですよ。」「どこぞでキャバ嬢を落とす、ってなると。」
「自分から色々やって、経験積んでなんかしないと。」「そら、なかなか難しいでしょうし。」
会計士先生は、そこで少し納得したように頷く。
「そうか。」
「そう。」「だから、別に私だけにこだわらずに。」
「なんかそういう形で、経験値を積むっていうことが多分大事だと思うんですね。」
「なるほど。」
「私のところで経験値を積む、ってなると。」「他で埋まってる可能性が結構あったり。」
「被り。」
「うん。」
「北新地で被りとか、マジでコスパ悪いですから。」
その言い方に、先生が吹き出す。
「たしかにな。」
「そう。」「それやったら、十三の。」
「あの、指名ポイント困ってる女の子に助けてあげたら、どんだけ喜ばはるかと。」「少ないお金で。」
「そこか。」
「そう。」
博子は笑う。
「そういうところにつけ込む良さ、みたいなのもあるじゃないですか。」
「つけ込むって言うな。」
「でも本音やん。」
「まあな。」
「だから、なんかその辺のところを、もっと分析してやるっていうのは。」
「先々いいと思うんですよね。」
会計士先生は、そこでしみじみと頷く。
「まあ、確かになるほどね。」
少し間があいてから、先生がまた本音を出す。
「なんか、そうやってやっていくと。」
「どんどん博子さんとのガチ恋の距離は、広がるような感じがするんです。」
その言い方に、博子はすぐに首を振る。
「いや、でもね。」「そうやってくうちに。」
「いや、別に実はガチ恋じゃなかったかもしれん、とか。」
「別の女が実は良かったかもしれん、とか。」
「回り回って、私に戻ってくる可能性あるじゃないですか。」
先生は、その返しに少し考え込むような顔になる。
「なるほどな。」
「そういうことです。」「で、それは。」
博子は、そのまま少し前のめりになる。
「経験値をちゃんと積んで。」「話の引き出しがめちゃめちゃ増えてきたりして。」
「なんなら、十三の花火大会、一緒に行くとかもいいじゃないですか。」
「そういうイベント事とかを過ごせる女の子を、ちょっとずつ増やしていくと。」
「余裕出てきますから。」
「余裕。」
「そう。」「で、女の子、余裕出てる男の人、めちゃ好きですから。」
その一言に、会計士先生は、少し笑いながらもわりと真面目に受け止める。
「なるほどな。」
会計士先生は、そこでグラスを持ちながら、少し遠くを見るような顔になる。
「なんか。」「育成されてる気がしますね、相変わらず。」
「いやいや。」「育成というか。」「遊びの幅、広げてるだけです。」
「その結果、だいぶ世界広がってますけどね。」
「それはいいことです。」
そんなふうに、
博子一筋で来るのか、経験値を積みに外へ行くのか、
でも結局どこへ戻るのか、
そんな話をしながら、二セット目はするすると過ぎていくのだった。
会計士先生も、最初は
「博子さんに来る頻度が減るかも」
という不安から入っていたけど、
話してるうちに、
“減る”やなくて“厚みが増える”という考え方もあるんやな、と思い始めている。
で、最後には、まんざらでもない顔で笑う。
「まあ、ちょっと。」
「十三、もう一回ぐらい行ってみてもいいかもしれませんね。」
「でしょ。」「そこからです。」
そうやって、なかなか悪くない着地の仕方で、
二セットいて、会計士先生は帰るのだった。




