水曜のキャバクラ店内。博子の予定を聞きながら来週、パンケーキ行きましょうって流れ。おじいちゃんにボトルを勧める黒服が粗相www
キャバクラの店内に戻ってからも、おじいちゃんと博子のだらだらしたおしゃべりは続くのだった。
同伴でご飯を食べて、そこで一回落ち着いてるから、店の中に入ってからの会話は、
最初から変に気張らない。おじいちゃんも、今日はもうだいぶ満たされてる顔をしている。
でも、満たされてるからこそ、今度はちょっと先の話をしたくなる。
「そしたら、あれか。」
おじいちゃんが、酒をひと口やってから言う。
「わしと飯行くのは、ちょっと難しい感じか?」
博子は、その問いに少し笑いながら返す。
「まあ、明日に関しては難しいかな。」
「ほう。」
「麻雀同伴がね、金曜日に入ってるんよ。」
「なんじゃそりゃ。」
おじいちゃんが、案の定おもしろそうに食いつく。
「いや、だから。」
博子は、そのわけのわからん企画を、わけのわからんまま説明し始める。
「大阪の座組で回してる社長さんたちと、今、二つ走らせてんねん。」
「二つ?」
「うん。」「一つは、体験系。」
「うん。」
「でもう一つは、言うたら反省会も兼ねて。」
「一回来てもらう時に、麻雀して、それから同伴するっていう流れ。」
「何やそれ。」
おじいちゃんは、心底おかしそうに笑う。
「めちゃくちゃやな。」
「そうやねん。」
博子も笑う。
「で、私とアルカちゃんは打てんねんけど。」「他の二人が打てへんから。」
「明日ちょっと練習でね、女の子四人で雀荘に行くんよ。」
「なるほどな。」
「そういう仕込みがあるから、ちょっと明日は無理かなって。」
おじいちゃんは、そこで少しだけ残念そうな、でも半分面白がってるような顔になる。
「明日は麻雀して。」「で、明後日、その麻雀同伴して。」
「次の座組を決めていくって流れやから。」
「だから、来週か。」
「来週は多分大丈夫ちゃうかな。」
そう言うと、おじいちゃんはすぐに乗ってくる。
「あー、来週は行く行く。」
「出た。」
「なんか、ご飯食べに行くか。」
「うん。」「パンケーキでもええし。」
「パンケーキもええな。」
おじいちゃんが、そこで妙に元気に頷く。
「やっぱり、そこら辺のところは、わしの時間ちゃんと取ってくれるところがええな。」
その言い方が、なんともおじいちゃんらしい。
ちょっと甘えてるけど、重くなりすぎない。
しかも、嬉しそうなのがちゃんと見える。
「めっちゃ元気やん。」
博子が笑うと、おじいちゃんも笑う。
「元気になるやろ。」「わしの枠あるって言われたら。」
「はいはい。」
そんなふうに、店の中でも二人でだらだら喋ってると、
ちょうどドリンクが切れかけた頃に、黒服さんがやって来るのでございました。
「失礼します。」
「そろそろドリンクが切れてきたので、何か追加で入れられますか?」
そこまでは普通である。
でも、そのあと、黒服が少し先走る。
「また、白州入れときますか?」
それを聞いて、おじいちゃんが一瞬だけ目を細める。
博子も、あっと思う。
「あー。」
おじいちゃんが、ちょっとだけ笑いながら言う。
「まあまあええで、っていうことやけども。」
「そんな銘柄指定は、あんまり客にとって良くないから。」
黒服が、そこで一瞬固まる。
「あれやで、“何なさいますか?”ぐらいで止めといた方がええで。」
その言い方はきつくない。でも、かなり本質を突いている。
博子は、すぐに黒服の方を見て言う。
「ああ、すみません。」「ほんまや。」
「ちょっと、黒服の方が粗相しました。」
おじいちゃんも、そこは怒るわけではなく、淡々と続ける。
「そうやな。」「わしだって、あれやもんな。」
「黒霧もある可能性だってあんのにな。」
「なんか、そうやったら頼みにくいわな。」
「そうやで。」
博子がその言葉を受けて、黒服にちょっと目線で促す。
黒服も、すぐに察して頭を下げる。
「すみません。」「勝手になんか、こっちで決めてしまって。」
おじいちゃんは、そこで少しだけ肩をすくめる。
「まあ、そこら辺の粗相は全然ええけどもやな。」
「ちょっと気ぃつけんと、あれやで。」「そういうところの、やっぱアラがでるから。」
その言い方には、長く店に通ってる客ならではの視点がある。
ただ金を落とすだけやない。ちゃんと見てる。
しかも、見えてることを言葉にできる。
「なんか、常連になってくると。」
おじいちゃんは続ける。
「その辺のアラが若干見えるけど、許せる。」
「そういうところからほころびが出てくるかもしれんからな。」
黒服は、その言葉をわりと真面目に受け止める。
「はい。」「気をつけます。」
そう言って、身が引き締まるような顔で引いていくのでございました。
黒服が去ったあと、博子が少し笑う。
「でも、そこでちゃんとボトル入れてくれるのが、おじいちゃんの偉いところやわ。」
「懐の広いところやわ。」
おじいちゃんは、それを聞いて得意げに頷く。
「そうやろそうやろ。」「わし、言うだけ言うけど、出すもんは出すからな。」
「出た。」「そこやねん。」「それができる人、なかなかおらんよ。」
そんなふうに、ちょっとした店の粗相を挟みながらも、
結局そこからまた笑って戻せるのが、おじいちゃんとの時間のええところである。
で、そのまま二セットほどいて、
おじいちゃんは気分よう帰っていくのだった。
今日は、はまちのかま焼きを食べて、
近況を聞いて、
麻雀同伴という意味のわからん企画の話で笑って、
来週のパンケーキの約束までして、
最後に黒服の教育までして帰る。
なんやかんや、おじいちゃんにとっても、かなり心地いい二時間やったんやろうなと、
博子も思う。そういう水曜日の店内の流れであった。




