資料の後日談と今の博子のキャバ嬢以外の楽しみ。気づきを社長に話して社長が動いてくれて形になるのが面白いwww
「で、まあ、この話の後日談なんですけども。」
博子がそう切り出すと、社長はグラスを持ったまま「おう」と身を乗り出した。
もうこの時点で、ただの飲みの雑談というより、博子が最近拾ってきた“妙に面白い話”を
聞く時間になっている。
博子の方も、そこはわかっていて、少しだけいたずらっぽく笑いながら話を続けた。
「次の日、大体ね、土日遊んだ後、私を指名してる社長さんって機嫌良くなって、
会社でちょっとした座談会みたいなことするらしいんですよ。」
「座談会。」
「そう。なんか、お金払ってお金払って、ケーキ買わせて、みんなで喋るみたいな。」
社長は、そこで思わず吹き出す。
「何やねんそれ。」
「でも、そういう場で、この前私が出した奨学金の肩代わりの話を、そのまま投げたみたいで。」
「おお。」
「で、結論から言うと、奨学金の肩代わりの制度、始めます。リファラル制度、やります。
っていうことになったんですって。」
そこまで言うと、社長は「え、そんな早いんか」と笑いながらも、ちょっと驚いた顔になる。
博子は、その反応を見ながら少し肩をすくめた。
「私もそんなすぐ動くと思ってなかったんですよ。でも、奨学金の具体の諸々の決裁が下りました、
っていう話のあと、もうすぐ動きがあって。」
「うん。」
「リファラルの方で、うちの会社受けたいっていう人が出てきたらしいんです。」
「もう?」
「もう。」
社長は、そこで資料の束でも想像してるみたいな目になる。
博子は、その空気を見ながらゆっくり続けた。
「だから、ただただこれ、私の推論で、ガチャガチャやりました、ChatGPTの有料版で
それらしい裏付けの数字とか作ってやりました、みたいな話じゃなくなったんですよ。」
「なるほどな。」
「要素とかは、私がプロンプトでいろいろ話してやったし、もちろん完璧な実務家の資料では
ないです。でも、その数字きっかけで、あの人の会社が動き始めたりとか。社長から
ありがとうっていう形が返ってくるとか。そういうのが、ちょっと……。」
博子は、そこで少し言葉を探すみたいに間を置いた。
「もちろん、思いつきでやった上に、資料にまとめて、で、実際に数字が動くところまで見えたから、
その代金は確かにいただいてるんです。でも、私はその代金以上に、社長さんたちが面白がって
動いてくれて、会社の中の制度が変わるっていうことに、結構快感を覚えたんですよね。」
その言い方に、社長は一瞬黙ってから、堪えきれずに笑った。
「お前、ほんまにキャバ嬢の趣味ちゃうな、それ。」
博子も、ちょっと笑う。
「そうなんですよ。最近の私の趣味、そこなんですよ。」
「趣味の規模がおかしいねん。」
「でも、なんかこの辺のところ、もうちょっと広げて調べていきたいなって思ってるんです。」
「へえ。」
「もちろん社労士じゃないから、危ないんですけどね。でも、社労士さんって多分、
こんなアグレッシブには攻めないと思うんですよ。」
社長が、そこで「ほう」と興味深そうに聞き返す。
「なんでや。」
「いや、受け身の体勢の士業の方がやっぱり多いから。あっちから“こういう制度どうですか”って、
しかも夜の席の雑談から会社動かすぐらいの感じでは、あんまり来ないと思うんですよね。」
「たしかにな。」
「だから、この辺の話を最近、私の常連さんとお話ししたりしながら。キャバ嬢はキャバ嬢で
もちろんやるし、店にも入るんですけど、そういうのをやってるのが最近の私の趣味です、みたいな。」
そこまで言ったところで、社長はもう声を出して笑っていた。
「趣味て。」
「そうなんです。」
「いや、お前ほんまにおもろいわ。」
博子は、少し照れながらも、でも本音を隠さずに続ける。
「結局その社長たちも、当てられて動いてみたら、意外といい数字が出たから
面白がってるんやと思うんですよ。だから、面白がられてるうちは、なんかいろいろこういうの
やってみたらいいんじゃないの、って自分でも思ってて。」
社長は、グラスを置いて頷く。
「それはそうやと思う。」
「ほんまですか。」
「うん。だってそれも博子ちゃんの魅力やしな。」
その言葉に、博子は少しだけ目を細める。
そうやって、夜の店の中で、自分の“キャバ嬢以外の部分”を面白がってもらえるのは、やっぱり嬉しい。
「こんなん、他のキャバ嬢にできひんから。」
社長がそう言うと、博子は小さく笑った。
「まあ、そうかもしれませんね。」
「面白いと思うねん。」
「もちろん逆に、資格の勉強してる子が、ここのキャバクラで働くとかは
あるかもしれないですけどね。」
「うん。」
「でも、資格取った後に、ここで働いて、しかも社長相手に制度の話までしてる女の子って、
なかなかいないと思うんですよ。」
社長は、そこでしみじみと言う。
「そういう意味では、なかなか、ええがたい人材やな。」
博子は、そこで吹き出した。
「人材って。」
「人材やろ。」
「店の中で言われると変な感じです。」
「でも実際そうやん。」
そんなふうに笑い合ったあと、社長は少しだけ現実に戻るように言った。
「でも、あれやもんな。博子ちゃん、ほぼほぼ埋まってるもんな。」
「そうなんですよ。」
博子は、そこで素直に頷く。
「私、同伴は埋まってるし。唯一埋まってないのは、同伴の後のフリーの時間なんですけど。」
「うん。」
「そこもありがたがって来てくれる人とか、ちょっと話、っていうことで来てくれる方がいるんで。
今のところは、まあそんな感じです。」
社長は、それを聞いて「なるほどな」とゆっくり頷いた。
追いかけられて、埋まって、でも埋まりきらへん余白もあって。
その余白にまた別の人が来る。
博子の最近の状況は、たしかに単純な“売れてるキャバ嬢”とも違う。
それがまたおもしろい。
そういう話をしながら、夜はゆっくり更けていく。
大きな事件が起きるわけでもない。
でも、キャバ嬢の席で、会社制度の話が趣味みたいになって、社長がそれを面白がって
聞いてくれてる。そんな少し変わった三セットが、やわらかく過ぎていく。




