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火曜日。東京メイン社長の動き。奨学金肩代わりの役員会決定。リファラル採用も成立。若手の部下3人が友人が転職考えてると話す。効果が効きすぎてビビルwww

火曜日。月曜日に東京メイン社長がごきげんさんで帰っていった流れのまま、話は一気に前へ進んだ。

社長は朝から役員をさっと集めて、「おっしゃ、やろう」と言い出した。

奨学金の肩代わりの話と、リファラル採用の話。

この二つを、もう一緒に回してしまおうという空気である。

普通やったら、そこから「費用感はどうする」「運用ルールはどうする」「誰が責任者や」

みたいな話で、しばらく寝かされる。けれど、この社長は、その辺を長々詰める性格ではない。

「細かいところは、そっちでやってくれたらええから。とりあえず、やるっていう方向でいこう。」

役員の一人が、「いや、でも費用とか制度設計のところはどうするんですか」と聞くと、

社長は軽く手を振った。

「奨学金の肩代わりに関しては、資料は部下にも作らせてたし、軽い見積もりも出したやろ。

ほら、ここにもペラペラっとあるやん。」

そう言って机の上の紙を指で叩く。ざっくりではあるけれど、出す費用と、

それによって返ってきそうなメリットが並んでいる。採用。離職。満足度。社内の空気。

全部をきっちり証明できるわけではないにしても、少なくとも

「出す費用よりも、こっちのメリットの方がでかい」という感覚は、もう共有できていた。

「だからもう、即やる。ちゃんとした運用は三か月ぐらいかかるのはわかってる。

それはわかってるけど、告知としては先にやる。」

その言い方に、役員たちも「ああ、そういう切り方か」と腹落ちした顔になる。

制度を完成させてから出すのではなく、やると決めて先に打ち出す。

足りない実務は後ろから追いかける。荒っぽいけど、この社長らしいやり方やった。

「新卒採用、最近厳しいしな。で、十年以内のやつはやるって言って、リファラルにも適用かける。」

ここからは、さらに話が早い。奨学金の肩代わりだけではなく、リファラル採用も

一緒に押し出してしまう。

「リファラルの方は、この話をする上で、さらにお祝い金も出す。紹介したやつ、採用されたやつ、

それぞれに三十ずつ。半年続いたら、また三十ずつ出す。」

役員の一人が「結構出しますね」と言うと、社長は笑った。

「でも、採用コスト百五十万から二百万ぐらいのやつを考えたら、全然下回るやろ。

どうせそんなにドカドカ来おへんやろうし。」

最後はちょっとヘラヘラ笑って、でも結論としては「ほな、やりましょう」で会議が終わった。

細かい実務は詰める。でも方向性は決まった。

それだけでも、この会社のスピード感としては十分すぎた。

ところが、その日の夕方になって、思わぬことが起きる。

部下が三人ほど、ちょっと興奮した顔で社長のところへやってきた。

「社長、リファラル、ちょっと申し込みたいっていう子がいるんですけど。」

「は?」

社長は思わず顔を上げた。まだ運用も全部決まってない。

告知のたたき台をまとめて、正式に流すのもこれからや。

なのに、もう反応が来ている。

「マジか。いや、まだ運用決まってないけど……ああ、そうか。さすがに明日から働くはないよな。」

部下が慌てて手を振る。

「いや、ないですないです。だって面接受けて、即受かるかもわからないじゃないですか。」

「そらそうや。」

「でも、お祝い金もらえるって話聞いたら、今の会社に不満がある上に、奨学金の肩代わりも

してくれて、お祝い金もくれるんだ、っていうので、ちょっと一回受けてみようかなって

感じになってるみたいです。」

社長は、その話を聞きながら、ちょっとだけ口元をゆるめた。

やっぱり刺さるんやな、と思う。しかも、想像以上に早い。

「引っ越しは、別にしなくていいと思うんですよ。東京ですし、その子らも。」

「うん。」

「でも、そうやってお金くれるっていう中やったら、一回受けてみようかな、ぐらいにはなってると。」「へえ。」

部下はさらに続ける。

「よかったら、見てくれへんかって話になって。職務経歴書とか送ってきてくれたら、

って言ったら、ちゃんと用意してますよ、って。こんな話したら、結構ノリノリやったかなって。」

そこで三人分の書類をざっと見せられる。社長は、軽い気持ちで目を落とした。

ところが、その中の一人に目が止まる。

「あれ。」

「どうしました?」

「これ、俺の友達の会社の子やん。」

「え、マジですか。」

社長は、その瞬間ちょっとだけ姿勢を直した。あ、これはアリやな、という感覚が走る。

単なる“受けてみようかな”のノリではなく、ちゃんと縁の届くところに玉が転がってきている。

「わかった。もう日にち決めてもろて。そっちの人事の中途の方に回してあげて。」

部下たちが「はい」と勢いよく頷く。社長は、そこで一応釘だけは刺す。

「でも、あれやで。俺がこれもらったから採用決まる、はなしやぞ。ちゃんと普通に、

人事の面接で通るかどうかの話やからな。」

「わかってます。」

「そこはちゃんとします。」

「ほなええ。」

それを聞いた部下の一人が、帰り際にニヤッとして言う。

「でもまた、受かったら、あれですよ。お茶会とかの時にでも宣伝してもらって、

俺たちにも現金そのままくれてもいいんですよ。」

社長は、思わず笑ってしまう。

「お前ら、そういうとこだけ早いな。」

「いや、でも夢あるじゃないですか。」

「夢ってなんやねん。」

そんな軽口を叩きながら、三人はばたばたと去っていった。

部屋に一人残った社長は、少しだけ椅子にもたれかかる。

昨日、外から持ち込まれた話が、もう今日には社内で動き始めている。

しかも、リファラルの反応まで出てきた。

スピードが早すぎて、自分でも少し笑える。


「……ほんま、動く時は動くな。」


そうつぶやきながら、社長はまた一度、あの大阪の夜と、ヒロコの顔を思い浮かべる。

ただの遊び話で終わらず、こうして会社の中にまで返ってくる。

そのことが、やっぱりどこか面白かった。

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