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7月4週目月曜日。博子は一度考えた文面を寝かせ、コーヒーを飲む。相手も忙しいから箇条書きで送付する。反応待ち

昼間、博子は一回その話を寝かせることにした。

朝のうちに頭の中で組み立ててはいたけれども、勢いのまま長文で返すより、

少し時間を置いて、箇条書きで要点だけ送った方が、向こうも読みやすいし、

こっちも余計な熱を入れずに済むと思ったからである。

昨日までの流れが濃かったぶん、ここでまた長々と熱い文章を返してしまうと、さすがに

相手もしんどいかもしれへん。

だったら、ちゃんと考えてますよ、でも重たくはしてませんよ、という温度で返す方が、

今後のやり取りとしては綺麗やろうなという判断やった。

昼過ぎまでだらだらして、コーヒーを飲みながら、博子はスマホを開く。

で、今日はもう「箇条書きでいこう」と決める。

向こうも社長で忙しい。

こっちも今日は月曜で、夜には弁護士先生との同伴もある。

だから、変に文章の美しさよりも、何を投げられるか、どこまで広げられるか、を見せる方がええ。

まず一つ目。

社食補助の制度改正による導入シミュレーション。

これは、かなりわかりやすい。

月額の非課税枠が広がることで、若手の可処分所得にどう効くか。

給与で上げるのと違って、見せ方が柔らかいこと。

外部サービスと組み合わせて、どこまで現実的に導入できるか。

この辺は、数字に落としやすいし、会社にも説明しやすい。

前回の奨学金肩代わりと違って、もう少し導入ハードルが低そうなのもいい。

二つ目。

他社の面白い制度。

これは、ヒロコらしい玉やなと思う。

真面目な制度設計だけじゃなくて、「なんやそれ、おもろいやん」というところから会話が

始まる制度。面白法人カヤックみたいな、毎月サイコロで給料に変動をつけるような話でもいい。

あるいは、独自の休暇制度、社内イベント、家族向け手当、何でもいい。

とにかく、“制度としての合理性”だけやなくて、“言いたくなる制度”を拾ってくる。

これは、たぶん社長たちの反応もいいやろうと思った。

三つ目。

ギャルコンサル。

これは半分ネタ、半分本気や。

言葉としてインパクトがあるし、ちょっとふざけてるようでいて、中身は案外ちゃんとしてる。

若手目線で否定をしないブレストを行い社員の意見を拾い上げる。

表向きに言いにくいことを、外から雑談っぽく投げる。

そういう立て付けの入口として、「ギャルコンサル」という単語は悪くない。

社長が食いつくなら広げられるし、食いつかないなら笑って流せる。

ちょうどいい球やった。

四つ目。

出産一時金制度等。

これはもう少し真面目寄り。

女性採用や定着、子育て支援に対して、企業がどこまで出しているか。

百万円積んでる会社があるとか、復職支援をこうしてるとか、そういう先行事例。

これも、単純に「優しい会社ですね」で終わらず、採用競争力や社内満足度と絡めて見れる。

うまく出せば、かなり使えるテーマやと思った。

そのうえで、ヒロコはメールの真ん中に一言入れるつもりでいた。

「コンサルと構えずに、会話のツールと思ってもらえれば嬉しいです」

これがたぶん一番大事やった。

向こうも、毎回「さあ今日はコンサルです」と言われたらしんどい。

でも、会話の種として、ちょっと面白い制度や気づきが投げ込まれるなら、

それはむしろ嬉しい。博子が欲しいのも、別に毎回フィーを積んでもらうこと

そのものではなくて、関係の中にそういう知的な遊びが一個乗ることや。

だから、この一文は絶対入れたかった。

最後に、昨日話していた“店ネタ”の延長。

多摩にある小山商店という酒屋、品揃ええぐいです。

これも一個、ぽんと投げる。店ではなく酒屋。

しかも東京近郊。

社長たちが自分らで動ける範囲。

酒好きの三人なら、これだけでもちょっと見に行きたくなるはずや。

そこに「その辺でご飯も絡めるなら、また一本店ネタ考えます」と軽く添えるだけで、

昨日話してた“女の子側から投げる遊び”にもなる。

そこまで整理して、博子はようやく文面を打ち始めた。

長文ではない。箇条書きで、

今後こんなんあります、

気軽に受け取ってください、

一個小山商店どうですか、という感じで送る。

重たくしない。

でも、ちゃんと「まだ玉ありますよ」は伝える。

その塩梅を意識して、ヒロコはメールを送った。

送信ボタンを押したあと、スマホを置いて、少しだけ息を吐く。

あとは社長の反応待ちや。

食いつくかもしれんし、今はスルーかもしれん。

でも、この“投げる”という行為自体が、今後の関係には意味がある気がしていた。

博子はそう思いながら、夕方までまた少しゴロゴロすることにした。

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