新幹線終盤戦。博子の講義とコンサルに関してそれぞれ報酬の相談がまとまる
新幹線の中で、三人の評価の話がひと段落したあと、今度はもう一つの大きい山――
博子ちゃんの“上物”の話に移っていった。
キャバ嬢としての評価とは別。
あれはもう、半分コンサルで、半分手品の種明かしで、でも実際に役に立つ話でもあった。
そこをどう見るか、という話や。
メイン社長が、少しだけ真面目な顔になって切り出す。
「でな。博子ちゃんの“なんで俺にそんな刺さってたんか”っていう解説。
あれに関しては、俺以外の二人で二十は積む、っていう話は一応握ってるけど。」
向かいの二人が、すぐに反応する。
「いや、でもめっちゃ満足したし。」
「逆に二十は安いぜ。」
そこは、もう迷いがなかった。
最初は“なんでメイン社長だけそんなにハマってるんや”という疑問から始まった。
でも、あの二時間を聞いたら、それがちゃんとわかった。
しかも、その“わかった”が、ただの解説で終わらない。
自分たちの仕事にも、接待にも、遊びにも応用が利きそうやった。
「じゃあ、三十ずつにしようか。」
メイン社長がそう言うと、二人もすぐ頷く。
「それでええと思う。」
「うん。そういう細かいところを解説してくれる会って、ありがたいし。」
「それ、たぶんありやぞ。」
そこで、もう一人の社長が、少し熱が入った声で続けた。
「他の事例でも使えるぞ、あれ。要は、感情の落差をうまいこと混ぜて、
最後にはめることで感動が得られるっていうことを、俺ら体験した上で説明してくれてるわけやん。
それって、接待だけやなくて、いろんなシーンで使えるやろ。」
メイン社長も、そこは強く頷く。
「そう。“おもてなしが大事です”とか、“驚きが大事です”とか、そんな話やない。
どう驚かせるか、どこで外すか、どこで余白を作るか。
その実例を見せられて、しかも種明かししてくれてる。そら価値あるわ。」
三人とも、そこは完全に一致していた。
博子ちゃんの“構造解説”は、ただの自慢話でも、ただのモテ自慢でもない。
ちゃんと技術として取り出せる形になっていた。だから金を払う意味がある。
「だから、構造解説は三十かける二でええと思う。」
「うん。」
「六十やな。」
「それでいこう。」
そこで一回、話は制度コンサルの方に移る。
今度は、奨学金肩代わりの紙の話や。
「で、制度コンサルに関しては。」
メイン社長が、今度は少し落ち着いたトーンで言う。
「一旦二十かなと思ってる。」
「二十。」
「うん。奨学金の導入に伴うものについて、試算もある程度出してくれたやろ。
簡易って言いながら、結構整ってるし。それで、だいたい年二千万ほど浮くっていうのが見えてるから、
そこについてはまず一時金でつく。」
二人も、そこは素直に頷く。
「わかる。」
「これ、紙があるのがでかいよな。」
「そう。」
メイン社長は、そのまま先を続ける。
「これは継続やと。実際に俺も明日、お菓子会するから。」
「またやるんか。」
「やる。その時にサクッと話聞いて、実際に数値出して、即やる。で、満足度とか、
定着とか、そういうのがどう変わるかは、実体として見たい。」
「なるほど。」
「その数字見た上で、効果出たら、その件には上積みでええんちゃうかな。」
そこは、三人とも納得した。
博子ちゃんがやったのは、入口や。
種を投げた。叩き台を作った。
でも、それを実際に会社の中で動かして、成果に変えるのは社長側の仕事になる。
だから、最初の一時金と、成果が出た後の上積みを分ける。その考え方がきれいやった。
「で、多分。」
メイン社長が、ちょっと笑いながら言う。
「博子ちゃんのことやから、ネタまだまだあるぞ。」
「あるやろな。」
「絶対ある。」
あの子はたぶん、気づきのタネをまだいくらでも持ってる。
だから、毎回同じテーマで食うわけじゃない。
「それに対しての、一時金とフィーっていう形で分けたらええんちゃう。」
「それが一番きれいやな。」
「そうしよう。」
ここで、三人の中で形がまとまる。
「じゃあ、まとめるで。」
メイン社長が、指で空中に書くみたいに整理する。
「キャバ嬢としての評価は別で。構造解説が三十かける二。」
「六十。」
「で、制度コンサルは二十かける三。」
「うん。」
「了解了解。」
「それでええと思う。」
そこまで決まると、だいぶすっきりした。
払う金額そのものより、“何に対して払うか”が整理されたことが大きい。
それができると、こちらも気持ちよく出せる。
「で、制度コンサルに関しては。」
最後に、もう一つだけ大事なことを付け足す。
「まだ全然、始まりの話やと。」
「うん。」
「まだまだ続く。で、交際費やなくて、コンサルティング費としてやるためには、
昨日の土曜みたいな紙ペラ、あれがあるとこっちも説明しやすい。」
「それは絶対言うた方がええな。」
「うん。“酒の場の雑談”やなくて、“こういうメモと叩き台を受け取ってます”って形にできるから。」
「そこまで含めて、ほんま使えるわ。」
話は、そこでようやく締まった。
新幹線はまだ東京まで少しある。
でも、三人の中では、今回の大阪京都遠征の収支も、評価も、次の動きも、
かなり綺麗に整理できていた。
そして、その整理の中心にいるのが、二十歳のキャバ嬢やということが、やっぱり最後まで
ちょっとおかしかった。
三人は、そんなことを思いながら、残り少なくなった山崎のハイボールを、また少しずつ
口に運んでいた。




