社長3人でまだまだ話す。博子の講義とコンサルの話で持ち切り。売れなかった時期もわかる人にしか刺さらん高級商材だったからなのではと妄想
新幹線がもうだいぶ東へ進んで、窓の外の景色も夜の色に沈みきった頃やった。
ハイボールも半分ぐらい減って、最初の「いやよかったな」みたいな感想戦から、
もう一段深いところへ話が移っていく。
そこで、二人の社長がほとんど同時に口にしたのが、それやった。
「まあ、それにしても、えぐかったのは博子ちゃんのコンサルやな。」
「それ。」
メイン社長も、すぐに頷く。ここまで来ると、もう変に隠す必要もない。
あの後半二時間の講義が、この二日間の核やったのは、三人とも認めている。
「いや、あそこまで刺さる理由を言語化してるっていうのが、もうやばい。二十歳のキャバ嬢が。」
「そら売れるべくして売れるし、刺さるべくして刺さるわ。」
「ほんまやで。」
ひとりが、紙コップを持ったまま少しだけ笑う。
「売れてなかったっていうのも、今日あの子自分で言うてたけど。でも、あれってもしかしたら、
そもそも高級層にしか刺さらん刺さり方やったんかもしれんよな。」
「おお。」
「地元の安い社長には刺さらんかもしれん。けど、この座組の意味がわかる人には刺さるっていう、
高級商材やった可能性はある。」
「それはあるかもな。」
メイン社長も、そこは少し考えるように頷く。
「事情は知らんけどね。でも、そういう見方はある。」
「やろ。」
あの売れ方は、万人向けではない。
ただ可愛いとか、ただ距離が近いとか、そういう単純なもんやない。“意味がわかる人”にだけ、
深く刺さる。その感じが、たしかに高級商材っぽい。一回ハマると離れへんけど、
入口でわからん人には全然伝わらん。そんな感じや。
「で、これが一個ハマると。」
もう一人が、少し低い声で続ける。
「自信に繋がって、もう客が離れへんっていう状態なんやろな。」
「うん。」
「だからまあ、頻度は意図的に考えるんやろうけど。これはすごいわ。」
そこは、博子本人がさっき言っていた“月一回、個別一回、あとはライトプラン”の話にも
つながっていた。刺さるからこそ、出しすぎたら崩れる。
そのへんまで含めて、ちゃんと設計しているのがまた怖い。
「で、なんなら。」
メイン社長が、少し笑いながら言う。
「他の女の子コンサルしそうな勢いやん、あれ。」
「ああ。」
「いや、もうすでに二人コンサルしてるしな。」
その一言で、三人とも笑う。
今日一日見てれば、それはわかる。
さきちゃんもアルカちゃんも、博子の動きを見て、自分たちなりに咀嚼していた。
あれはもう、半分教育や。
「そうそうそう。」
「多分、あの子、若さがなくなっても、キャバ嬢コンサルで売れるぞ。」
「キャバ嬢コンサルって何やねん。」
「いや、なんかもう、自分が若さで売れなくても下を育てる感じや。」
三人でまた笑う。
でも、その笑いの奥には本気がある。今はまだ二十歳で、若さも武器にできる。
でも、今日見たものは、若さだけの芸やない。むしろ、若さが消えたあとに残る部分の方が強かった。
「その後の制度コンサルもやばかったな。」
ひとりが、思い出したみたいに言う。
「もう、二十歳の女の子に出されてたまるか、っていうぐらいの数字やった。」
「ほんまやで。」
「もちろん、チャットGPTが最近すげえなっていうのもあるけどな。」
「でも結局。」
メイン社長が、その先を継ぐ。
「気づきを、あそこまで数字に落とされたら、こっちも“ちょっと聞いてみようかな”って
気になるんよ。」
「そこやねん。」
「空気の持ってき方がうまいわ。」
ただ数字を出すだけやない。ただ気づきを喋るだけでもない。
“なんかこれ、おもろいな”から入って、“じゃあ数字で見るとどうなん”に滑らかにつなげる。
あの運び方が、たぶん一番えぐかった。
「そうそうそうそう。」
「だから、俺らより一回り、二回り上の社長もハマって、そら来るやろな。」
「しかも多分、俺らよりも大きい額使ってる感じ、出してたしな。」
その話になると、さっき店で女の子二人が苦笑いしていたのを思い出して、三人ともまた笑う。
「女の子二人、苦笑いしてたもんな。」
「してた。」
「“ああ、もっとえぐいのがおるんやな”って、こっちもなんとなく察したわ。」
そこで、少しだけ空気が変わる。ただの感心だけでは終わらない。
自分たちも、ある程度張らんと埋もれる、という軽い緊張感が出てくる。
「そうやな。」
ひとりが、静かに言う。
「俺らも、そういうとこに全部取られへんように、ある程度張ったらなあかんな。」
「まあ、それはある。」
「別に競うわけちゃうけどな。」
「でも、雑に“また来るわ”だけでは済まへん感じになってきた。」
メイン社長が、その言葉にうなずく。
「そう。向こうも体力あるわけちゃうし、他の社長もおる。だからこそ、ちゃんと“こっちも
わかってるで”っていう熱量は見せとかんと。」
そこまで話したところで、車内アナウンスが静かに流れた。
窓の外を見ると、もう静岡あたりを通過している。
東へ戻ってきてるのに、気分はまだ京都と大阪のままやった。
「静岡か。」
「早いな。」
「でも、今回の二日間、濃すぎて、なんかもう三泊四日ぐらいした気分やわ。」
「それはある。」
山崎のハイボールは、だいぶぬるくなっていた。
でも、そのぬるさすら今はちょうどいい。
三人とも、少し疲れていて、でも満足していて、そしてたぶんまた来る気になっている。
博子のコンサルの話から始まって、さきちゃんとアルカちゃんの丁寧さ、京都の酒、
伏見の流れ、制度の数字、そして“次はどう張るか”の話まで。全部が一つの線になって、
新幹線の中でまだ続いていた。
静岡を過ぎても、三人の喋りはしばらく途切れなかった。
大阪京都で受けた“横から殴られる感じ”の余韻が、まだきっちり残っていたからやった。




