表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

550/795

日曜日。女性陣は昨日の話の延長で出た伏見の酒蔵コースを男性陣にアテンドする。男性陣大満足で帰路につく

日曜日。この日はもう、定番のコースやった。

だから女性陣三人の気持ちは、土曜日に比べるとだいぶ楽やった。

初めての店をどう回すとか、誰がどこで温度を拾うとか、そういう細かい神経を

使いすぎんでもいい。もう何回も通してる座組やから、流れの中で「ここでこう」「次こう」

というのが、三人とも身体に入っている。

朝、軽く顔を合わせた時点で、アルカちゃんもさきちゃんも、ちょっとほっとした顔をしていた。

「いやー、今日はだいぶ楽やな。」

アルカちゃんがそう言うと、さきちゃんもすぐに頷く。

「うん。昨日みたいに、どこで何投げるかをそこまで考え込まんでもええし。」

「ゆっくり寝れたしな。」

「それ大きい。」

博子も、その言い方に少し笑った。

前日の四セットが濃すぎたぶん、この“わかってる流れ”を回せる日の安心感は大きい。

「今日はもう、何回も言ってる座組やから。気持ち楽に行けるし、導線でミスることは多分ないわ。」

「うん。」

「よっぽど変なことせん限り、大丈夫やな。」

そう言いながら、三人ともどこか余裕があった。

余裕がある時の方が、細かい気配りもできる。

それは三人ともわかっていた。

一方で、社長たち三人は、逆に朝からウキウキしていた。

昨日あれだけ講義を聞いて、しかも最後に「明日は伏見を回る」という話までついている。

ただの観光でもなく、ただの同伴でもない。

“昨日聞いた話の答え合わせ”みたいな一日になるのが、もうおもしろかった。

大阪駅からサンダーバードで京都駅へ向かう流れも、昨日博子が散々説明したあのルートや。

男三人も、昨日までやったら「なんで下道ちゃうねん」ぐらいの感覚やったかもしれん。

でも今はもう、その“ちょっとずらしてくる感じ”自体を楽しみ始めている。

京都駅に着いて、荷物を預ける。

そこから、伏見に向かうという流れが、やっぱりちょっと不自然や。

でも、その不自然さが、ヒロコたちの流れの肝でもある。

観光地を正面から回るんやなくて、少し横にずらして、でも満足度は高い。

その設計を、昨日の講義を聞いた男三人は、今日はもう“受ける側”の顔で見ていた。

「これか。」

メイン社長が、歩きながらちょっと嬉しそうに言う。

「これです。」

博子も笑う。

「女性陣は何回も来てるんだけど、男性陣は初めてだらけなんで。」

「そら楽しいわな。」

「でしょ。」

最初は藤岡酒造。

蒼空の純米大吟醸と純米酒を、二、三十分ほどでいただく。

昨日、清水五条で酒屋の“選ばせる面白さ”を味わったあとに、今度は蔵元の酒をその場で飲む。

その流れがまた、男三人にはたまらん。

「やっぱうまいな。」

「これはうまい。」

「昨日の解説聞いたあとやと、余計刺さるわ。」

他の二人の社長も、今日はもう完全に腹落ちしていた。

昨日までは、“なんかよさそう”ぐらいやった。

でも今は、“どういう意図でここに来てるか”まで見えている。

だから同じ一杯でも、体験の濃さが違う。

そこから鳥せいへ移動して、三千三百円のランチ。

これもまた、価格と内容のバランスが絶妙や。

高すぎない。でもしょぼくない。ちゃんと満足感がある。

昨日の講義の中で出てきた「価格をずらす」「お値段以上に感じさせる」という言葉が、

そのまま体験として入ってくる。

「これで三千三百なんや。」

「そうなんです。」

「東京やと、もっと取られてもおかしないな。」

「だから言ったじゃないですか。」

アルカちゃんが笑うと、社長も素直に笑い返す。

今日の女性陣は、もう“案内役”として自然に振る舞っていた。

昨日までのような、探り探りの空気がない。

それがまた、男三人を余計に気持ちよくしていた。

最後に黄桜で百円の一杯を落とす。

そこまで来ると、もう一日の流れが綺麗すぎて、社長たちの方が少しあきれてくる。

「ここまで綺麗にやってくれると、マジで嬉しいわ。」

メイン社長がそう言うと、他の二人も素直に頷いた。

「うん。これが、こいつがいつも言ってたやつかって、ようやくわかった。」

「しかも、昨日の解説があったから、より実感持てたな。」

「ただ楽しいだけやなくて、なんで楽しいかがわかるの、ずるいわ。」

博子は、その言葉に少しだけ笑った。

ずるい。でも、そこがたぶん強みやった。

体験だけでも刺さる。

でも、体験の意味までわかると、もう一段深く残る。

それから一行は京都センチュリーホテルに流れた。

新幹線までの時間を、ちょっとまったり過ごすためや。

紅茶を頼んで、昨日までの濃さとは少し違う、柔らかい空気で座る。

ここではもう、何かを売り込む必要も、解説しきる必要もない。

ちょっと疲れた身体を戻しながら、「いや、楽しかったな」と余韻を味わう時間やった。

社長たちも、もう無理に喋り倒したりはしない。

それぞれが適当に感想をこぼしながら、でもどこか満ち足りた顔をしていた。

「なんか、昨日の話を今日そのまま体験した感じやな。」

「そうですね。」

「これは、帰りの新幹線でまた喋るやつや。」

「喋ってください。」

博子がそう返すと、みんな少し笑う。

外はまだ明るく、ホテルのラウンジの空気は穏やかやった。

昨日の夜の熱と、今日の昼の満足感が、そこでちょうどいい温度に落ち着いていく。

適当なところで切り上げて、男三人は新幹線へ。女三人は、またそれを見送る。

でも今日はもう、土曜日みたいな“勝負が終わった”という感じではなかった。

ちゃんと楽しく、きれいに一周した。そんな日曜日やった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ