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隠れ家イタリアンから鴨川の河原飲みと博子の手料理。タダで空間演出できる私博子はどうですか?(笑)綿密に練られたプランに脱帽

博子は、さっきまでの説明を受けて、もう一段だけ静かに声を落とした。

ここまでで、酒屋、サンダーバード、昼のイタリアン、価格のずらし方、面白さの置き方。

だいぶ場は温まってる。でも、たぶん本丸はここからやった。

「ここまでに出てきたキーワードって、気づき、面白い、お得、なんです。」

男三人が、自然とこっちを見る。

博子は、ゆっくりと言葉を選んだ。

「京都の中での優劣は、もちろんいろいろあると思います。でも少なくとも、東京と京都で

比べた時に、その“面白い”っていうのがめちゃくちゃ刺さるんです。」

「面白い、な。」

メイン社長が、静かに頷く。

博子は続ける。

「で、最後に私が、手料理で鴨川の河川敷で刺すと。」

他の二人の社長が、そこでちょっと顔を上げる。

メイン社長はもう知ってる話や。

でも、知らん二人にとっては、そこがたぶん一番“何それ”やった。

「お酒を開けて、手料理の肉じゃがと、自分の中で結構決まってる山ウニ豆腐を出して、

ベンチで座る。ただそれだけなんです。

でも、ただで京都を満喫して、なおかつ美味しいっていうのを出す。」

「……ただ、って。」

社長の一人が、少し呆れたように笑う。

博子も笑いながら頷く。

「ただより高いものはない、とか言いますけど。ただは、作れるんです。」

そこで少しだけ間を置く。

「ただ、それも知ってる人じゃないと無理なんですよ。

場所を知ってる。流れを知ってる。タイミングを知ってる。

お酒に何を合わせたらいいか知ってる。

そのうえで、“ここでこれ出したら刺さる”ってわかってないと、ただの河原なんです。」

場が静かになる。

アルカちゃんもさきちゃんも、もう笑ってない。

博子本人が何を武器にしてるのか、その輪郭が、言葉になって見えてきていた。

「だから、それを提案できる私博子はどうですか、っていうのを最後で出すんです。」

メイン社長が、そこでまた小さく頷く。

博子は、その反応を見ながら続けた。

「東京でアクセク働いてる中で、広い河原に行って、のんびり酒を飲む。

そのスローライフ的なものに、“面白い”っていうのを感じてもらえたらな、っていうので差しに行く。」

「なるほど……。」

他の二人の社長も、ここでようやくその絵が見えてきた顔になる。

酒屋やランチが“導線”で、河原が“落としどころ”やったわけや。

しかも、それは高級料亭とか観光名所と真逆の方向にある。

「もちろん、これで刺さらない人もいると思うんですよ。」

博子は、そこもちゃんと切り分ける。

「謎の料亭に行きたいとか。湯豆腐が食いたいとか。京都の名所をちゃんと回りたいとか。

そういう人には、私、ひょっとしたら刺さらんかもしれないです。」

社長たちが、少し笑う。

「でも、それは別に私じゃなくてもいいんです。ツアーコンダクターに頼めばいい。

キャバクラにそれを求めに来る人、そんなにいないです。」

そこは、言い切りやった。

「キャバクラには、“何か面白いことないかな”と思って来る人がいる。

しかも、東京で飽きた人が大阪まで来て、何を求めてるかって言ったら、東京にないものですから。」

その一言で、男三人の顔つきが少し変わる。

六本木銀座で遊び慣れた側として、そこはかなり腹に落ちるところやった。

「言うたら、価格のヒエラルキーとか。かわいければ高いとか。うまいものは高いとか。

そういう常識を、横からバーンと殴られて、ひっくり返される。

それを、心のどっかで待ってるような気もしたんです。」

「……ああ。」

今度は、さっきまでよく喋っていた二人の社長が、完全に黙った。

その“横から殴られる”感じ。

たしかに、それを期待して大阪まで来てる節がある。

わざわざ来る以上、東京の延長では意味がない。

そこを博子は、ちゃんと見抜いていた。

「で、それが見事にハマったから、最終的にこうなってる。」

博子は、そこで少しだけ笑う。

「だから、観光名所そのものに行ってないわけじゃないんです。

近いところの、ちょっとした気づき。それを見せて、座組を組んだら、

こういういい形で提供できますよ。そこが、多分私の強みだと思います。」

ここで、さきちゃんとアルカちゃんが、ほとんど同時に小さく頷いた。

それや、という感じやった。

自分たちが横で見てきたものが、ようやく言語化された感じがしたのや。

「で、もう一つ追加で言うなら。」

博子は、最後にもう一段、補足を入れる。

「最後、京都駅で山崎とか白州を渡すっていうことをやってるじゃないですか。

あれ、山崎のウイスキー工場が、大阪と京都の間にあるんですよ。」

「ほう。」

「だから、それもまた伏見と一緒なんです。今度、山崎のウイスキー工場に一緒に行って、

響とかプレミアム酒を買ったら、東京で転売できるんで。」

「え。」

「うまく限定品手に入れたらその転売の利益だけで、大阪での遊び代全部捻出できますよ、

っていう補足まで入れてます。」

そこまで来た瞬間、他の二人の社長が、もう隠しきれんぐらい驚いた顔になった。

「お前……。」

「そこまで考えてたんか。」

「いや、ちょっと待て。それ、全部つながってるやん。」

今度は、メイン社長も満足そうに笑うだけやなく、少し誇らしそうな顔をした。

自分がハマった理由が、ようやく他の二人にも腹落ちしたからや。

「だから、ただ遊んでるように見えて。」

博子は、最後に静かに言った。

「ちゃんと、次に来る理由、得する理由、面白い理由まで置いてるんです。」

そこまで言われると、男三人はしばらく何も言えなかった。

驚いたというより、腑に落ちた。

六本木銀座で遊んでた自分たちが、なんでこんなに大阪京都に引っ張られてるのか。

その答えを、ようやく言葉で渡された感じやった。

「……なるほどな。」

「そら、刺さるわ。」

「いや、これは腹落ちした。」

その三人の反応を見て、博子はようやく少しだけ肩の力を抜いた。

今日のノンペーパー講義は、ここでちゃんと決まった。

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