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土曜日、東京メイン社長が3人で来阪。大阪の刺さり方の違いや博子と京都で同伴することに他の社長達からブーブーいわれている

東京メイン社長は、その日、東京駅から二人の社長と一緒に新幹線に乗っていた。

三人で動くのは、もうだいぶ板についてきている。けど、正直なところ、

温度感はまだ揃っていない。自分だけが先に刺さっていて、残り二人はまだ“面白そうやから

ついてきてる”ぐらいの感じや。それは本人もわかっていたし、だからこそ、今回の二時間の解説を

わりと楽しみにしていた。

「いやいや、だからこの前も話したやろ。」

新幹線の座席で、メイン社長が缶ビールを開けながら言う。

「刺さり方が全然違うねんって。」

向かいの社長が、ちょっと不満そうに言う。

「いや、それはもう聞いたって。聞いたけど、そんなに違うもんかねって話や。」

「違う違う。今回、その解説を聞くのも結構楽しみやねん。」

「解説な。」

「そう。実はな、仕事で……いや、仕事って言い方もあれやけど。博子ちゃんにお金払った時に、

あの子ちょこちょこ球投げてきてるやろ。奨学金肩代わりの話とか、就労不能の話とか。」

「ああ、もう何回も聞いたわ。」

「やろ?」

メイン社長は、少し身を乗り出す。

「あれって、俺からしたら結構でかいんよ。でも、お前らからしたら、まだ具体の数字

見んとわからんし、そもそも、あれが“ただの気づき”でふわっと投げてきてるのか、

ちゃんと考えて球投げてきてるのかも、まだ温度感わからんやろ。」

もう一人の社長が、缶を持ちながら首を傾げる。

「まあ、それはそうやな。博子ちゃんにそんなこと聞きながら、どういうふうにやってくれるかな、

とか。どういう反応するのかとか。そこまだ見えてへん。」

「やろ。」

メイン社長は、少し得意そうに笑った。

「だから、今回はそこやねん。座組も聞くし、その二時間の解説もある。俺、そこが楽しみやねん。」

そう言うと、横の社長がすぐに茶々を入れる。

「でもお前、京都でなんか色々するのずるいわ。」

「またそれか。」

「そらそうやろ。お前だけ京都で降りて、なんか最大火力で出してもらうんやろ。」

メイン社長は、その言い方に少し笑った。

「いや、たぶんそうやで。博子ちゃん、多分最大火力で出してきてくれてるから。」

「ほら見ろ。」

「しかも京都、前楽しかってん。結局アフターが。朝ごはんから一緒に行って、

めっちゃ楽しかったから、俺、京都にはなんとなく期待してんねん。」

そこで、二人とも少し黙る。

前の京都の話は、何度も聞かされてる。酒屋。古民家。鴨川。ホテルラウンジ。

そのへんの話をされるたびに、たしかに“ただのキャバ嬢との遊び”ではないんやな、

という感じはある。でも、それでもまだ、自分らがどこまでハマるかはわからん。

メイン社長は、そのまま続ける。

「たぶんな、ヒロコちゃんとアフターは、もうほんま毎度京都やわ。」

「なんでそんなに京都やねん。」

「なんやろな。大阪も多分変わり種投げてくるんやろうけど、

僕は京都の方が食いつきやすいのと、最終的に京都駅でお別れっていうのがええんやろうな。」

「京都駅でお別れ。」

「そう。そのまま新幹線でさっと上っていけるし。大阪って、微妙に新大阪までまた

出なあかんやん。その辺もあるんかなって思ってたりする。」

もう一人の社長が、そこでようやく頷く。

「まあ、それはちょっとわかる。京都は終わり方綺麗やもんな。」

「やろ。」

「でも少なくともやで。」

メイン社長は、少しだけ真顔になった。

「この前の六本木銀座のひどさ見たら、もう基本的には、俺ら、あっちで飲むよりこっちが

楽しいってのはわかってるやん。」

「あれはひどかったな。」

「ひどかった。」

「だから、それはええねん。東京より大阪京都の方が楽しいっていうのは、もう前提でええ。

ただ、まださきちゃんとアルカちゃんに、俺らがグイグイハマってるかって言ったら、

そこまではいってないやろ。」

その言葉に、二人も素直に頷く。

「そこはそうやな。」

「だから、その辺からやと思うねん。どこまで俺らの接待の熱量に合うか。合わんかったら、

お前が勝手に行くだけやし。」

「そういう冷たいこと言うなよ。」

メイン社長が即座に返す。

その言い方に、二人が笑う。

「俺ら三人で遊んでて、結構楽しいやんけ。」

「それはそうやけど。」

「いや、ほんまやで。お前だけなんか先行って、なんか楽しむとか、また俺ちょっと嫉妬するし。」

「おっさん同士の嫉妬って、どうやねん。」

そう言いながら、三人とも笑った。

ほんまに嫉妬してるわけではない。

でも、ちょっとだけ“なんでお前ばっかり”みたいな感覚はある。

それが、この三人の今の温度差そのものでもあった。

でも、その温度差を埋めるために、今回はわざわざ二時間の解説が用意されている。

博子は、その差をちゃんと見ている。

だから、たぶん今回はただ遊ばせるだけでは終わらん。

そこがメイン社長には面白かったし、少しだけ誇らしかった。

「まあ、ええやん。」

メイン社長は、窓の外を見ながら少し笑う。

「今回は旅行気分で行くって感じで。でも、その中で、どこまでお前らが刺さるかも見ものや。」

「お前はもう完全に向こう側の人間やな。」

「いや、まだこっちや。ただ、博子ちゃんがどういうふうに、お前らを持っていくかは楽しみやねん。」

新幹線は、そのまま西へ流れていく。出張でもない。仕事でもない。

でも、ただの遊びとも違う。

ちょっとした旅行気分の中に、接待と解説と反省会と、次の導線まで入ってる。

そんな妙な二日間に向かって、東京メイン社長は、他の二人のブーブーいう声を

聞き流しながら、ひとり少しだけワクワクしていた。

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