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7月3週目水曜日。おじいちゃんと同伴。金曜日の税理士先生の伏見の座組を見せながらおじいちゃんにも宣伝。またいこうね

水曜日。今日はおじいちゃんとの同伴の日やった。

おじいちゃんの方は、最初から来る気満々やった。そこは博子もわかってる。

わかってるけど、問題は店の場所やった。鯛飯屋はちょっと路地入るし、

慣れてない人やと絶対迷う。おじいちゃんに「ほな先行っとくわ」と言われて、

変なところでうろうろされるのも違うなと思って、博子は最初から待ち合わせして

一緒に行こうと決めていた。

「とりあえず、新地の入り口ぐらいで待ち合わせにしとこかな。」

そうしておけば、そこから流して連れていける。

おじいちゃんも、会ってすぐそれを察したように笑った。

「なんや、博子。いろいろ気ぃ使ってくれてるな。」

博子も笑って返す。

「いや、だっておじいちゃん、来る気満々やったやん。」

「そらそうや。」

「でも、鯛飯屋の場所わからんかったら絶対迷うでしょ。」

「……まあ、それはある。」

「やから、待ち合わせして連れて行きたかったんですよ。」

おじいちゃんは、そこで少しだけ目を細めた。

「今日の博子の店チョイスの心はは迷いか、余裕か、どっちかやねんけどな。」

博子は少し肩をすくめる。

「多分、余裕は出てきてるんやと思う。」

「ほう。」

「前やったら“現地集合で来てください”ってやってたと思うんです。でも最近は、そのへん込みで

回した方が綺麗やなって思うから。」

「それは余裕やな。」

そう言いながら、二人で鯛飯屋に向かった。

今日の店は、博子の中では“外さへんけど、ちゃんと遊べる店”やった。入り口がちょっと

わかりにくいのも込みで、おじいちゃん一人に任せるより、一緒に歩いて入る方が気分もええ。

店に入る前から、博子は鯛飯を炊き始めてもらっていた。

最初からそこまで整えておけば、座ってからバタバタせんで済む。

席について、前菜代わりに出汁巻きとか、煮びたしとか、そのへんを軽くつまみながら始める。

「で、先週はどうやったんや。」

おじいちゃんが、酒をひと口やってから聞いてくる。

博子はグラスを持ちながら、少し息を整えた。

「先週は、土日の東京組が一回来ないというか。いや、来ないんじゃなくて、

私が一週間ずらしてもらったんです。」

「ほう。」

「前の土日が濃すぎたから、さすがに今週は休みにして。その代わり、

今週末に来てくれるようになりました。」

「うん。」

「で、その間に、大阪の方の座組を回してたんです。税理士先生と、保険会社の人と、弁護士先生。

で、こっちも三人で、向こうも三人で、伏見の酒蔵見学行ってきて。」

おじいちゃんは、そこで少し前のめりになった。

「お、伏見な。」

「そう。サンダーバードで京都まで行って、そこから伏見入って。

藤岡酒造で蒼空飲んで、鳥せいで昼やって、黄桜で百円の酒飲んで締めるっていう。」

「それ、ええな。」

「ええですよ。」

博子は、その反応を見ながら少し笑った。

実は火曜か木曜に、おじいちゃんにも伏見の案内したいなとは、ちょっと前から思っていた。

ウイスキー工場の時とはまた違う流れやし、おじいちゃんにはああいう“酒と街をまとめて

見せる感じ”が合うやろうなと、なんとなく考えてたのや。

「実はね。」

博子がそこで少しだけ声を落とす。

「火曜か木曜に、伏見のあのへん、おじいちゃんに案内したいなって、ちょっと思ってたんですよ。」

「ほんまか。」

「うん。この前、ウイスキー工場行ってくれたじゃないですか。

やから今度は、ああいう酒蔵の流れもおじいちゃん好きそうやなって。」

おじいちゃんは、そこで嬉しそうに笑った。

「それは好きやろな。伏見、わしも行きたいわ。」

「でしょ。」

「酒蔵見て、軽く飲んで、うまいもん食って。そういうのはええ。」

「全然、言うてくれたらやるけども。」

博子は、そこですぐに続けた。

「ちょっと時間待ってほしいわ。」

「そらそうやな。」

「今、東京組も来るし、大阪の座組も月一で回りそうやし。全部いっぺんにやると雑になるから。」

「それはわかる。」

おじいちゃんは、そこで納得したように頷いた。

博子はさらに少しだけ具体的に言う。

「でも、やるとしたら火曜か木曜かなって思ってて。月曜水曜は店もあるし、火曜木曜の方が、

ゆっくり案内しやすいんですよ。」

「なるほどな。」

「で、行くなら、ただ酒蔵行くだけやなくて、最後どこで落とすかまで考えたい。夕方の色とか、

帰りの感じとかも含めて。」

「そこまでか。」

「そこまでです。」

おじいちゃんが、そこで楽しそうに笑う。

「ほんま、お前そういうとこやな。ただ“行こう”やないんやな。」

「もう最近、それやとあかんのですよ。」

「でも、それがええ。」

鯛飯がちょうど炊き上がって、店の人が持ってくる。

ふわっと湯気が立って、おじいちゃんが「おお」と小さく声を出した。

博子は、それを見てちょっとだけ得意そうに笑う。

「今日はとりあえずこれで勘弁してください。」

「十分や。」

おじいちゃんは、ひと口食べてからまた言う。

「でも、伏見はほんま行きたいわ。火曜か木曜、空いたらまた考えようや。」

「うん。それは私もやりたいと思ってる。」

そう言いながら、博子の中でもその構図は少しずつ見えていた。

酒蔵。街。帰りの色。

おじいちゃんには、おじいちゃん向けの流れで見せたい。

水曜日の夜は、鯛飯をつつきながら、そんな次の種をゆるく置いていく時間になっていた。

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