表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

511/796

金曜日が気持ちよく終わる。土曜日は完全オフ。税理士先生からお手当の話来る

気持ちよくお帰りいただいて、そのあと博子たちはフリーの卓について、

ようやくひと息ついた。表の空気から少し外れたところに戻ると、さっきまでの緊張がゆるんで、

三人とも自然に笑ってしまう。今日は東京の台風みたいな爆発ではないけど、

ちゃんと綺麗に回った、という感じがあった。

「ほんま、博子ちゃんありがとうな。」

アルカちゃんが先にそう言うと、さきちゃんもすぐに頷く。

「うん。今日みたいなんって、回し方むずいのに、最後まで綺麗やったわ。」

博子は、髪を軽く直しながら苦笑いした。

「いやいや、でも二人がフォローしてくれたからやで。私一人でやってたら、

絶対どっかでよれてるし。」

「おいおい多分、税理士先生から色々来るやろ。それまたシェアするね。」

「お願い。」

「うん。」

博子はそこで、少しだけ肩を落とした。

「とりあえず、土日はちょっと休むわ。来週のこともあるから、力蓄えとく。」

さきちゃんが、それを聞いてしみじみ言う。

「博子ちゃん、たくましいな。」

「たくましくならんと、回らへんからな。」

そう言いながらも、博子の中ではちゃんと“休む”という言葉が重かった。

休まへんと持たん。

でも、休みながらでも次のネタは考えてしまう。

そのへんがもう、最近の自分やな、と少し思う。

そうして金曜日は終わった。

で、土曜日。店はない。

けど、頭は完全には休んでへん。

来週、東京のメイン社長がまた来ることになりそうやから、何かネタないかな、

とぼんやり考えてしまう。

ベッドに転がりながら、スマホを見たり閉じたりする中で、博子の頭にいくつか球が浮かぶ。

この前ニュースで見た社食の話。

あれ、福利厚生とか採用の切り口と絡めたら、また社長たちに話せるかもしれん。

さらに、たとえば少子化とか出生率の話を、女側の視点じゃなくて、企業がどう見てるか

みたいな話とか妄想して採用コストや先行事例を探すか。

面白法人カヤックの、サイコロ振って給料の上積みを決めるみたいな遊び心のある制度も、

社長連中は好きそうや。ああいう“ふざけてるようで制度設計になってるもの”は、

ヒロコの座組の話とも相性がいい。

「……まあ、来週までに何本か仕入れとこ。」

独り言みたいにそう言って、博子はまた目を閉じる。

休む日やのに、結局ちょっと考えてしまう。

でも今日は、それでもええ。無理に形にするんやなくて、頭の隅に置いとくぐらいでちょうどいい。

そんな中、夜になって税理士先生から連絡が来た。文面は、いかにも税理士先生らしい、

ざっくりしてるけど気は使ってる感じのやつやった。

――ほんまやったら、全員五ずつ積むつもりやったけれども、

思ったより弁護士先生との食いつきがよかった。

ここで月一くらいの話も決まったし、今日明日でなくても効果はありそうや。

アルカ、サキ、七、七、ヒロコ十ぐらいで積もうと思う。

それでもこのくらいの額ならこっちは経費で切れるし、仕事一個でなんとかなるから。

女性陣に差は出るけど、言うて三万の差やったらそんな揉めへんのちゃうか。

博子は、その文面を見て少しだけ考えた。

たしかに、全員七万ずつ、みたいな綺麗な揃え方もある。

でも今日の流れを見たら、正直、博子だけ少し上でも不自然ではない。

コンダクターとして全体を回したのは自分やし、税理士先生もそこをちゃんと見てる。

ただ、その差をそのまま置くと、気持ちの面で微妙な揺れは残るかもしれへん。

ヒロコは返信を打つ。

――確かに、それはそうかもしれません。

その辺の座組みたいなところで、私、少し多めに取らせてもらいますけども、

おそらくそのぐらいやったら、文句は出ないと思うし。

その代わり、つけてもらった日本酒のボトルのバックを女の子二人につけて、

そこらへんの調整しますわ。

送ってから、ちょっとだけ笑う。

結局こういうところも、気持ちの交通整理や。

数字だけ見たら三万の差。

でも、その三万をそのまま“実力差”みたいに置くとややこしくなることもある。

だったら、ボトルのバックやら、次の場での回し方やらで、柔らかく均す。

そのぐらいの雑務込みで、最近のヒロコの仕事はできている。

税理先生からはすぐに返事が来た。

――了解。

そのへんまで見てくれるから助かるわ。

博子は、そこでようやくスマホを置いた。

金曜の余韻は、穏やかに終わった。

土曜は店に出てへん。

でも、来週のネタを仕入れて、配分も整えて、もう次の座組の下地は少しずつできている。

「……まあ、こんなもんか。」

小さくそう言って、博子は寝返りを打った。

休む時は休む。

でも、次の流れを完全に手放すことはない。

そういう土曜日も、今の自分にはちょうどよかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ