月曜日。ゆっくり寝たから気持ちは整っている。散歩をしながら弁護士先生との同伴を考える
月曜日、博子は珍しくシャキッと起きれた。
身体が軽い。頭も変にモヤっとしてない。
「やっぱ昨日、昼〜夕方にちゃんと帰れたのがデカいな。」
一回寝て、社長と電話して、また寝て。あれができた時点で、睡眠の質が違う。
夜の仕事って、結局いちばん削られるの睡眠や。
その睡眠が取れたら、こんだけ世界がマシになるんか、と自分でも笑ってしまう。
ただ、起きた瞬間に脳がやることを見つけてくる。
「次は……弁護士先生やな。」
座組、座組、座組。ほんまに座組ばっかりや。
自分で言うてて嫌になる。でも、回ってるうちは回さなあかん。
回してるうちに、次の景色が見えてくる。博子はジャージに着替えて、軽く散歩に出た。
体を動かすのは、キャバ嬢として最低限。ほんまはそんなストイックな人間ちゃう。
生前の博子なら、絶対やってない。
「え、私、今、散歩してるん?……誰やねん。」
ツッコミながら歩く。でも、歩いてると頭が整理される。
昨日の流れ、社長の反応、55→50のやり取り。
全部が少しずつ落ち着いて、ただの経験値になっていく。
散歩の途中で、今日の弁護士先生の座組を組み直す。
最近、芋焼酎と鶏でハマってた。けど、弁護士先生って、あれを毎回当てると
「狙ってる感」が出る。先生は先生で喜ぶやろうけど、ヒロコの中で“安易”になる。
「今日は和食に戻す。」カマ焼きの魚がうまい店。
派手さはないけど、落ち着く。焼き魚って、味が誤魔化せへん。
それに、先生はこういう“王道の丁寧さ”も分かる。
頭の中で、動線をざっくり作る。
待ち合わせ → カマ焼き → 店で2セット → そのあとどうするか。
同伴の後の時間。結局ここが、今の課題のど真ん中や。
同伴が増えるのは嬉しい。でも同伴を固めすぎたら、余白がなくなる。
固定が増えたら増えたで、新しい人が入る隙間がなくなる。
そして何より、博子が息できなくなる。
「好きな人ほど丁寧にしたい、って気持ちはあるねんけどな……」
水曜のおじいちゃん。月曜の弁護士先生。
この二人は、最初に博子の価値に気づいてくれた側。
だから義理は通したい。ただ、それで全部が埋まったら、それはそれで詰む。
散歩から帰って、汗を流して、博子はソファに沈む。
夕方まで、まだ時間はある。でも、時間があると、頭が勝手に準備を始める。
弁護士先生と今日何を喋るか。ここも“設計”や。
先生は、博子の座組に興味がある。
東京社長の話も聞きたがる。でも、全部を喋ったら、先生のテンションが上がりすぎる。
上がりすぎたら、次に「俺もそれやりたい」ってなる。それは嬉しい反面、また枠が詰まる。
「今日は、全部は喋らん。出すのは7割。」
土日の鉄板の話も、社長の55→50の話も、
“面白いところだけ”にしておく。
あくまで先生のペースで、会話を転がす。
それと、もう一個。先生はガチ恋と座組恋が混ざってる。
その混ざり具合を、今日は少しだけほどく。
「先生、最近仕事どうです?疲れてません?」
この一言を先に置くだけで、先生は“聞いてもらえる側”に戻れる。
戻れたら、店内の時間も柔らかくなる。柔らかくなったら、こっちも楽になる。
夕方が近づいて、博子は鏡の前で髪を整えた。まだ完全にはスイッチ入ってない。
でも、昨日より体が軽いから、入れ方が分かる。
「よし。今日はカマ焼きで、王道で、丁寧に。」
座組座組ばっかりで嫌になるけど、この積み重ねが、今のヒロコの武器や。
そう思いながら、博子は鍵を手に取って家を出た。




