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海風の街 ライフストーリー  作者: SPECIAL BAY


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9/9

流湾、甘い時間

「流湾(るわん)く~ん、

お菓子、食べよ~。」


その声の主はお菓子の入ったバスケットを

楽しそうに揺らしながらこちらへやって来た。


その声の主は陽呼子(ひよこ)である。

流湾が愛する人である。


「はやくお菓子食べよ~。紅茶もいれたよ~。」


陽呼子は流湾の方を見て

笑顔で言っていた。


数分後・・


流湾は急いで

陽呼子がいる部屋へ向かった。


「何をしているの~。

もう、私、プリン食べちゃっているよ。

ごめん、流湾くんの分のプリンないの~。

代わりにこの抹茶饅頭を食べていいよ。」


陽呼子はそう言って

おいしそうにプリンを食べていた。


テーブルの横の棚にはヒヨコの人形が飾ってある。

あれは確か、大学生の時、

陽呼子にあげたヒヨコの人形。


陽呼子はずっとそのヒヨコをお守りのように

持っていたらしい。


時が過ぎても、

こうして2人を見守っている。

どこか微笑んでいるようにも見える。


そのヒヨコの人形よりも

優しい笑顔で陽呼子は言った。


「このプリン、美味しかった~。

今度、流湾くんの分も買ってくるね!」


「ほわ~。ほわ~。」


流湾は嬉しかったが

抹茶饅頭を大きく頬張ってしまって、

よく分からないことを言っていた。


そんな頼りなさそうな流湾に陽呼子は

さらに笑いながら言った。


「そうだ!

今度、街にできたケーキバイキングに行きたいなぁ~

どう?」


その突然の言葉に

抹茶饅頭を何とか飲み込めた流湾は

これまで前を通るだけだった

ケーキバイキングを想像した。


色鮮やかなケーキの数々、

そのそれぞれが宝石のように輝き

甘さのハーモニーに包まれる。


まだ行ったことはないが

とてもいいと思った。


「そうだね!今度、ケーキバイキングに行こう!」


笑顔で陽呼子とケーキバイキングに行く約束をした。



数日後―


流湾は陽呼子とともにケーキバイキングへと向かった。


おしゃれな通りを歩いて行くと

新しくできたお店はとてもかわいい見た目で

お店自体がケーキのようである。


「うわぁ!美味しそう!」


陽呼子は店内に並ぶケーキをみて

目をキラキラさせながら言った。


新しくできたこともあり、

とても人気のため予約が必須である。


流湾はちゃんと予約を取れているのか

陽呼子に何回も確認されたが

ちゃんと取れていた。


楽しみでしかたない子どものようだが

最近、流湾はこの日のために

ケーキを食べることを控えていた。

陽呼子も同様である。


全種類のケーキを食べることを

考えていた。


制限時間の90分でどこまで

食べられるだろうか?


そうして、二人は会場のテーブルへと向かった。



一旦、席に着いた流湾と陽呼子は

準備体操のように少し深呼吸をして

ケーキがお城の壁のように

飾られている中へ入っていった。


ここからは

甘いファンタジーのようであり、

よりたくさん食べるという戦いなのだ。


ケーキでできたクマさんが

あざ笑うような顔で

こちらを覗いていた。


流湾は最初に食べるケーキを選ぶのに

苦労していた。


あまりにも目に入るものが

それぞれの色で誘惑してくるので

最初に食べるものを決められない。


なんとか、満足できる答えをみつけるために

流湾なりの分析をしていた。


そして、導き出した

独自のケーキを選ぶ方程式で

選りすぐりのケーキを芸術作品のように

盛り付けて

嬉しそうに席に戻ってきた。


陽呼子はそんな流湾に対して

黄色いケーキを

たくさん集めていた。


色で決めるのは

この美味しい選択肢がたくさんある中では

有効な選択方法かもしれない。


「いただきます~」


席に着いた二人は

食べるのを待ちきれない気持ちで言った。


その後、輝く小さなフォークを持って

最初の大きな一口を食べた。


すると

口の中に柔らかな甘さと鮮やかな香りが

広がった。


ケーキは苦いようなこともある日々も

甘く包んでくれそうである。


「救われる~」


陽呼子は思わず

笑顔になって言っていた。


それに対して

なぜか流湾はその横で

少し深刻そうになっていた。


「助けて~」


流湾は溺れたような

声で言っている。


それは流湾の誤算である。


美味しそうで思わず

たくさんとってしまった

シュークリームを油断して食べていたら

甘くて美味しかった。


しかし、食べるのは甘くはなかったのである。


シューの隙間からクリームが

飛び出して零れてしまう寸前になっていた。


流湾は苦い顔をしたまま

どうにかこの状況を切り抜けて

陽呼子に情けない姿を見せないようにしようと思った。


だが、抵抗も虚しく

残念ながらすくわれなかった。


陽呼子はその様子をみて、

子どもの面倒を見るように言った。


「そんなに頬張るからそうなるのよ。

私は救ってあげない!イチゴケーキを食べよう!」


そういって、次のケーキを取りに行ってしまった。


「ほわ~。ほわ~。」


シュークリームとの格闘に負けた流湾は

取り残されて

よく分からないことを言っていた。


しかし、やっぱり溢れ出しそうに甘い。


口の中で溢れるクリームよりも

流湾は楽しそうにケーキを探している

陽呼子の後姿をみてそんな甘さを感じていた。


シュークリームには負けてしまったが

このケーキたちにも負けないくらいに

煌めいていて甘くてときめくものがある気がする。


それこそが

ケーキよりも大切なんだと

どうにかクリームを飲み込めて

心の中で思った。


そう思うと、

なんだかまだまだ負けていない気がした。

これからもっとケーキよりも美しく輝くかもしれない。


流湾がそんなことを思っていると

ケーキを選び終えて帰ってきた

陽呼子は輝く笑顔で言った。


「やっぱり、ケーキが一番だね!」


そうして、流湾と陽呼子は

ケーキバイキングで素敵な時間を過ごしましたとさ。


(おしまい)




読んでくださり、ありがとうございます!!

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