6-2(84) 侵入
カフディコロニーのロビー。そこから路地へ2、3本入ったところを歩いている。いくら治安のマシなコロニーの、来るもの拒まずのロビー区画内とはいえ、こんな端は余所者が来るべき場所ではない。ちょっと危険すぎる。
単純な物理トラップから、爆発物・漏電すらも利用した高度なトラップまで、隙あれば身ぐるみ剥がそうと待ち構えている。僕はそれらを避け、あるいは先に起動させながら進んで行く。
ちなみにどのトラップも、死体が残らないor死なないように作られている。人死には行政が本腰を入れて動き始めるからだ。死体が残らなければ、「そんな人間は居なかった」が出来るので、ごくごく稀にそういったトラップも存在するが。
ロビー区画の端の端、工業区との区切りの壁の前までやってきた。どこまでも続いているように見える(実際どこまでも続いているが)壁の、見るからに頑丈そうな扉の前に立ち、そのちょうど反対にある廃墟に入る。
そこは半壊した工場のような建物。錆びたコンテナにちぎれた金属パイプ。そしてそれらの残骸のようなものが転がっていた。
足を踏み出すたびに、砂利道を歩いているような音がする。腐食でもろくなったパイプが、踏まれてあっけなく砕ける。下水管への入り口を塞いでいる鍵付きマンホールは、錆で開けることすら難しそうだ。
そんな建物の、とある部屋の扉の前に僕は立った。ちなみに横の壁は崩れているので、扉の存在意義は無い。その扉のドアノブの鍵を、開方向へ回す。見た目に反し、鍵はすんなり回った。
その後僕は下水管のマンホール前に立つ。しゃがんで少し表面を撫でると、ほんの少しのモーター音と共にマンホールがスライドした。すぐに体を滑り込ませる。マンホールは数秒で閉じるからだ。
下水に水は流れていない。その中を歩いて、出口を目指す。そして出た先は、工業区であった。
いちおう公式的には、工業区に余所者が入る事は禁止されていない。しかしいくつかある入り口では厳戒な身元確認がされ、歩いているだけでスパイと疑われ、しまいにはあちこちから、それこそ宇宙に出た後も監視がつくという。いくらか噂に尾ひれ背びれが付いているかも知れないが、ともかく雰囲気としては、全力で余所者を拒んでいる。
下水を通って僕が出たのは、カフディコロニーの工業区でも最も栄え、そして最も廃れた場所。鉱石精錬地区。カフディが小惑星採掘をしていた頃の、数少ない名残である。
読んでいただきありがとうございます。
誤字報告も感謝です。
2025/05/20 投稿
2025/05/20 タイトル通し番号修正




