3-5(46) それはちょっとどうなんです?
もし時間があるのならば、と続ける。自分に頼みか依頼かがあるんだったら聞いておきたい。べシーさんがくだらない依頼を持ってくるとも考えずらいし。そう思って聞いたが、ベーグルさんは驚いている。
「良いんですか?かなり失礼な態度をとってしまったし、いつ帰られてもおかしくないと思っているのですが」
「この程度なら平気ですよ」
たかが荷物持ちと、事前の説明がなかったぐらいだ。輸送艦を庇いながらの戦闘と比べれば、目くじらを立てる様なものでもない。聞くだけで狙われる様な話だったら嫌だが、会ってしまっているから今更である。
ベーグルさんはそれを聞いて、ふーっと息を吹き出した。
「少し長くなりますが、良いですか?」
「もちろん」
べシーさんとベーグルさんの姉妹は、昔は一緒に住んでいたそうだ。べシーさんが採掘で稼ぎ、ベーグルさんは家のことをしていた。
ところが僕がべシーさんを海軍に誘ってしまったせいで、べシーさんは海軍に行ってしまった。採掘より危険でもないし、収入も安定する。それでベーグルさんも賛成したけれど、家にひとりは寂しかったそう。
そんな中、気を紛らわせるために見始めた旅番組で宇宙艦を使う旅の特集があり、ふとそれについて調べてみたら沼にハマったそうだ。
「それで宇宙艦の操艦を学ばせてほしいのです」
「それで僕に白羽の矢が立ったと。でも有料のスクールとかあるじゃないですか?」
事情は大体わかったけれど、それなら習えば良い。個人流になると後々面倒なことになることもある。僕なんてAI航法もAI照準も使わないから、絶対違う人の方がいい。
「いやぁ〜私が[スクールはやめとけ]って言ったのよ」
「それはまた何故?」
「あーゆースクールはどっかの造船企業が絡んでることが多いじゃん。だからその会社のやつで教えるから、他社の艦に乗り換えづらいのよ」
「そもそも初心者はガンガン乗り換えるべきではないのでは…」
「うるさ〜いっ!君は黙って受け入れてくれれば良いの!」
横暴である。しかし駄々を捏ねはじめたべシーさんをどうにかするのは僕には無理なので、理由の追求はやめておく。
「百歩譲ってスクールは嫌だとして、何故僕なんです?作業はサルベージだし艦は駆逐艦だし…それに僕は男性です。コロニーで寝泊まりしているわけでも無いんですから、学ぶとなったら2人きりですよ?正気ですか?」
地球時代でも男女が2人でひとつ屋根の下、というのはよろしくない。しかも宇宙艦は密閉空間だ。襲われたならば逃げ場もない。そして残念ながらその手の話は少なくない。宙賊基地に踏み込んだら…みたいなのが割とある。っていうかべシーさんだって知っているでしょうが。海軍にいるんだし。
読んでいただきありがとうございます。
誤字報告も感謝です。
2024/06/27 投稿




