2-7(24) ひと眠り
「ここで寝るのか…」
第3宿舎の個室を覗くと、自然と声が出た。個室といっても無重力状態だから、壁に固定された寝袋で寝るしかないが…廊下の移動ならそんなに気にならなくても、無重力で寝るのは慣れないんだよな。
「そうそう、さっき連絡あったけど、訓練の時間とかちゃんと承認されたそうです。戦闘区域の設定は貴方がやっていいそうですよ」
「いきなり仕事モードにならないでください。驚くので…」
でも明日の予定が確定したのはいいことだ。いきなり予定をねじ込まれた参加者たちには不幸だが、さっさとやれるなら僕にはその方がいい。
「でも戦闘区域の設定を僕がやっていいというのは?」
「海軍は警備組織です。宙賊を相手取る時など、自分達に有利な場所でいつも戦えるわけではない、と言うことを教えるのも訓練の一環なんでしょう。」
「ほえー」
でかい組織の考えることはわからんな。まぁ僕に有利にさせてもらえるならいいか。
翌朝。やっぱり無重力で寝るのは違和感しかなかったが、襲撃される心配もなく(雪風の中で寝るとたまにある)、緊急出動命令がかかる心配もなく(小さめのコロニーで事故があると叩き起こされる)、久しぶりにじっくり寝ることができた。
軽く準備をして、雪風のドックへ…行きたいんだけれど場所がわからない。何番ドックだったっけ?
案内板とにらめっこしていたらべシーさんが話しかけてくれた。
「おはよー、相変わらず早起きだねー」
「おはようございます、雪風のドックに行きたいんですが…」
「朝ごはん食べないの?」
「雪風の中に保管してあるので」
「そっかー、なら食堂で一緒に食べる?」
ありがたい申し出だけれど、部外者が必要以上に軍の基地内をうろついて良いものなのか?と聞いたら
「私の目の届く範囲にいてくれたら問題無し!」
とのことだった。
べシーさんと一緒に食堂へ移動する。士官用の食事室のようなものもあるらしいが、べシーさんは普通の艦隊の兵士たちと食事をすることが多いらしい。曰く「もともとただの民間人なのに、お偉いさんと一緒に食べるとか拷問」とのこと。
そんな話をしながら移動すると、「食堂」という看板がある部屋に着いた。中では海軍の人々がトレー片手に並んでいたり、席について談笑しながら食事をしたりしている。
「部屋の中は重力かかってるから気をつけてね〜」
べシーさんについて部屋に入る。食事が浮遊しないように、それでいて無重力から来ても違和感が少ないように、食堂の重力は調整されていた。食事を取って席に着くと周りからいろんな人が寄ってきた。べシーさんは人気者なんだな。
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2024/02/23 投稿




