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1-16(16)依頼(拒否権なし)


「解体は順調?」

「あ、お疲れ様です。サナさん」

「あなたいつも同じ挨拶よね」

「何か問題でも?」


 苦笑いしながら首を振るのは、ドック長のサナさん。優秀な人で、個人的なお願いとかをよく聞いてもらっている。


「と言うわけでこの識別ダグを、持ち主に届けてほしいのですが…」

「簡単そうに言うけど、その持ち主の居場所わかるの?」


 広い広い宇宙の中で、どこにいるかもわからない数人の人間たちを見つけるのは不可能に近い。大体この辺とか操縦している艦とかがわかれば、入港ログから割り出すことはできる。でも僕みたいに普段小惑星で暮らしていたりすると、まず見つけることはできない。小惑星暮らしはかなり特殊だけれども。


「事情が事情なのでベイスヘの軍基地で事情聴取を受けてるはずです」


 あの面倒臭がりのべシー司令が、寄り道をしてどこかで降ろしていくってのも考えずらい。それに宙賊に襲われたふりをする保険金詐欺とかもあるし、事情聴取は行われるだろう。詐欺とか絶対バレるのに、やるやつ一定数いるんだよな。


「ベイスへの基地って言った?」

「言いましたが、それが何か?」


 なんか嫌な予感がする。


「あなたに指名依頼よ。輸送、依頼者は海軍」

「拒否権なさそうですね」

「輸送品は弾薬、配達先はベイスヘ海軍基地」

「うっわ」


 1番やりたくない仕事が、しかも軍からという半強制でやってきた。しかも行き先がベイスヘ基地とか、さてはべシーさんこれ分かってて食事の約束ねじ込んできたな。


「えーっと、本艦は輸送艦ではないのですが…」

「装甲輸送艦を引っ張ってきておいてそんなの通用すると思う?」

「聞かなかったことには…」

「ここの警備体制は万全。もちろんカメラやマイクもあるわよ」


 詰んだ。諦めよ。


「荷物はいつドックに届きますか?」

「やっとやる気になってくれたわね。あと数分で来るわよ」


 手を回すの早すぎない?断る可能性とか考えてないわけ?


「万が一逃げられても困るんだから」


 この人怖い。こっちの思考読んでくるんだけど。


 コロニー間はともかくコロニー内の物流は時間に正確だ。数分後に弾薬たっぷりの輸送用コンテナが届いた。その形、どう見ても中破した輸送用フリゲートです。


「なんでこんな形に…」

「防御兵器の試験で使った標的艦。型落ちしたフリゲートを引っ張ってるように見えた方が襲われにくいでしょ?」


 実際サナさんが言うことは一理ある。新品ピカピカのコンテナを運んでいたら、宙賊からしたら「お宝持ってそう」って格好の標的だろう。その点、宙賊でも使わないような型落ち、しかも戦闘能力皆無でワープもできず積載量も少ない輸送型フリゲートとなれば、リスク込みで襲う物好きもいるまい。


 …ただもう今日は残骸なんて見たく無かった。

読んでいただきありがとうございます!

評価や感想・誤字ってたらその報告だけでもしていただけたら幸いです。


2024/01/19 投稿

2024/01/31 誤字修正

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