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寝取り勇者と寝取られ狩人  作者: 山口みかん
第二章 エルフの森
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第09話 警護

 その日、村に中央神殿より派遣されてきた聖騎士隊の面々がこの村に到着した。

 なんでも聖女を輩出したこの村の住民を魔族が人質として狙うかもしれない可能性を神官長が提示し、その危険性を国王も認めて部隊の派遣が認められたという話だった。


「なんと有り難いことだ」

「国王様と神官長様に感謝しなければな」

「ああ、それとここに来て下さった皆様、聖騎士の方々にもだ」


 村人達はそれぞれがその喜びと感謝を口にした。


「いえ、我々は女神様の御心に従うのみ。感謝は是非女神様にお願い致します」

「おおっ、聖騎士様のなんとご立派なことか。わかりました女神様により一層の感謝の念を捧げます」

「皆様に女神様のご加護がありますように」

「ありがたい、ありがたい」


 村人達はこれで村は救われたと感じた。

 流石のアスベルも、これほどの聖騎士隊を相手にしては村に近づくことすらできまい、と。


「それで、一つご注意が」

「なんで御座いましょうか」


 聖騎士の言葉に、村長代行が代表して応じた。


「聖女様の事はくれぐれもご内密にとの神官長よりのお言葉です。もしこの村から聖女様が輩出されたことが魔族の耳に入ったら大変危険ですからね」

「わかりました。我々はお言葉に従います」


 村人達にとってそれは大した問題でも無い。

 聖女を輩出した村であるという誉れは、全てが片付いた後にでもゆっくりと世に広めていけばいい。

 それより、何よりも、村にとって今一番の関心事で問題はアスベルの事。

 村長代行は、その危惧を切々と聖騎士隊隊長に訴えた。


「なんとそのような者が……」

「はい。そうして其奴は恩人でもある、村の発展に尽くされた立派な村長を見るも無惨な姿に変えてしまいおった。あの光景を今も夢に見てうなされる者は少なくありません」

「なるほど。中途半端に優れた者が、真に優れた物に対して様々な妬みを鬱積させての逆恨み……ですか。良くある話ですね」

「はい、さようで」


 聖騎士達は村長代行の言葉を信じ、村長への哀れみの心を抱く。

 そしてこの村を守らなければいけないという想いを更に強くした。

 その者が更にこの村の住民の生活を脅かすというのなら断じて許してはおけないと。


「村長代行殿、まずはその者を村の責任者を殺した大罪人として国に訴え、犯罪者登録を依頼するべきでしょう。それと同時に、冒険者ギルドにも犯罪者登録をお奨めします」

「冒険者ギルド……ですか?」


 以前、アスベルとリンドンが冒険者として村を出ていたことがある。

 詳しい話は知らないが、確か森の向こうにある町にその支部があるという事は聞いていた。


「そうです。この冒険者ギルドという組織は様々な国をまたいで世界規模で活動する独立した組織です。ここに賞金首として登録されればもはや逃げる場所はありません」

「おお! そのような仕組みが」


 そういう事であれば、この村に聖騎士が配置されたことで浮いた警護を雇うはずだった金を賞金に回すのはやぶさかでは無い。

 これで全てが上手く回る。


 聖騎士の提案に、村長代行は表情を明るくした。


「それでは早速その手続きを行わねばいけませんな。さて誰を向かわせるか……」


 村の外には通常の旅の困難さに加えてアスベルの脅威がある。

 それなりに腕のあるものを向かわせる必要があるだろう。

 村長代行がそこまで考えたところで、聖騎士に声をかけられた。


「宜しければ我々がその手続きを代行致しましょうか? 我々は定期的に報告も兼ねて数名が入れ替わる予定となっておりますのでその際にでも」

「よろしいのですか?」

「ええ。是非お任せ下さい」

「ありがとうございます」


 ははは、これは聖騎士様々だな。

 これでもう一安心だ。

 恐れるものは無い。


 村長代行がホッと一息ついたその瞬間……


 どしゅっ! ズダーーン!


 目の前に居た聖騎士が突然消えた。

 そして、大きな音を立てた方に目を向けるとそこには……


 胸を矢に貫かれ、家の壁に磔となった聖騎士がそこに居た。


 なんだ!?

 その場にいた全員が動揺する。


 どしゅっ! ズダーーン!

 そしてまた一人。


 なんだ何が起こっている!?


 全員が周囲を見渡した。

 そして見た。


 湖の向こうに見える、弓を構えて立つ一人の男の姿を。


「まさか、アスベルっ!?」


 村長代行が叫ぶ。

 その瞬間、村長代行の頭に矢が突き刺さった。


「みなさんっ! 家の中に避難してっ!」


 頭を矢に貫かれた村長を見て我を取り戻した聖騎士の一人が、その場にいる村民達に向かって叫ぶ。

 それを聞いた住民達は気を取り戻して我先にと家の中へと逃げ込んでいった。

 


 その光景を呆れた目で見ていたアスベルは、更にその呆れを口にせずにはいられなかった。


「おいおい、村の連中、まさか俺が弓手ってことを忘れてんのか?」


 湖越しに見える、なんの柵も無い丸見えの村の光景。

 そして、そこで何の警戒もなく立ち話をしている村人と鎧を着て盾を持った者達。

 どうやらあれがリンドンの言っていたプロの警護とやらだろうが……

 あれは、どう見ても以前にも見たことがある中央神殿の聖騎士。

 まさか村で聖騎士を雇った…… なんて事は無いよな。

 聖騎士ってのはそんな組織じゃない。

 村の救いの求めに応じてやってくるなら王国騎士の方だろう。


 神殿絡みなら、瞬間移動で王都にでも戻った女神の使途の勇者にでも指示されてここで俺を待ち構えてた?

 いや、勇者は俺が村長を殺す前に村を出て行った。

 知るはずがない。

 それに、俺が村長を殺したってことが伝わってるなら、ここに来る途中に寄った町でもなにか動きがあった筈。

 少なくとも犯罪者として手配が回ってるか賞金組として狙われるか……

 それが何も無かったって事は恐らくこれは別な動きだ。


 まあいい、理由は何であれ俺がすることは変わらない。

 聖騎士相手に腕試しさせて貰うぜ?


 と言ったところで、そこそこの広さを持つ湖越しでの遠距離対峙。

 この状況はアスベルにとってただのボーナスステージでしかない。


 俺ならこんな馬鹿な状況は作らない。

 湖に面した箇所から撤去した丸太の塀を至急もう一度築く。

 いくら警戒していようと、あれだけ間口があれば闇夜に紛れて泳いで渡られる可能性だって高くなる。

 俺のことを置いておいても、野盗が頭数揃えて渡ってきたらどうすんだって話だ。

 塀を撤去する理由はどこにも無い。


 アホだろ。


「俺が来るのわかってんだったら、少なくとも遠距離狙撃は頭に入れて対策しとけよな」


 俺の射程を知ってるだろ?

 丸見えで棒立ちはねぇぜ。


 言葉とともに、矢を放つ。

 ほい、これで三人目。


 放っているのは風弓、加速の矢。


 これだけの距離があれば矢に込めた魔力を充分に使って矢が最大限に加速する。

 如何に聖騎士の鎧と言えど、その超高速の矢に貫かれることは必至だった。


「三百メートルは裕に離れているというのに……」

「あそこから胸の真ん中を狙うと言うのか!」

「しかもこの距離を一瞬で矢が到達してくる。なんだあの弓は」


 外部との交流を避ける森エルフ族の秘弓、風弓。

 ただでさえ知名度の低いこの弓を、積極的に情報を集めているわけでも無い実行部隊の聖騎士達が知る事は無かった。


 聖騎士達は見知らぬ脅威に対して背筋に冷たい汗が流れ落ちるのを感じた。


「総員っ、盾ぇ構えっ!」


 そして広がる動揺の中、一人の聖騎士がようやくアスベルの攻撃に対する声をあげた。

 聖騎士達は一斉に声に従い盾を構えた。


「ようやくか、でもな?」


 そして取り出す貫通の矢。


「変わんねぇよ」


 そして矢を放つ。

 その矢は見事盾を貫き通し、聖騎士の身体をも貫き通した。


 胸を貫かれた聖騎士はその場に倒れ伏せる。


「ありゃすまん、変わったわ」


 あと三人。


「なんてやつだ!」

「俺達は本当にただの狩人を相手にしているのか?」


 聖騎士達にとってこの状況は正に悪夢。

 混乱を深める中、更に矢が飛んでくる。


「くそっ! 神術!聖盾(ホーリーシールド)っ!」


 聖騎士はここにきてようやく女神の奇跡、聖なる盾を展開する。

 たかが狩人に、まさかこの術まで使う事になろうとは思ってもいなかったのだ。


 ぴしぃ!

 そしてそれは見事にアスベルの矢を弾く。

 それを見た残り二人の聖騎士もようやく自信を取り戻す。


「神術!聖盾!」「神術!聖盾!」


 やっと戦いの主導権を奪えた。

 そして確信する。

 これで負けはしないと。


「ああ、それはもう知ってる」


 アスベルは放った矢が聖騎士の目前で弾かれたのを見た。

 だがアスベルは動きを止めること無く、流れるように次の動作に移る。

 そして弓を斜め上に向け矢を放った。


 その矢は風を纏って急速に弧をえがき……


「がふっ」


 頭上からホーリーシールドを超え、油断していた聖騎士の頭を貫いた。


「あの女にはとんでもねぇ方法で防がれたがよ。それでも上からなら矢が通ることは確認済みだ」


 あの女より上の使い手なんかそうはいないだろう。

 だからあの女の使った魔法盾を基準に考えた。


 そして感じた、矢を目の前の相手に落とすブーメランを応用することの必要性。

 無様な敗北からそれを学んだ後、彼は自在な距離で自在な角度でこれを撃てるように考え、加速にブーメランを混ぜつつ意識して撃つことで実現した。

 言うは易く行うは難し。

 上手く調整できるまで移動中、常にイメージトレーニングを重ねては、何千、何万と実際に矢を撃っては回収。

 地味に特訓を重ねた。

 そしてようやくものにした。

 横への変化はまだコントロールしきれないがいずれはものにしてみせる。


 あの女はこいつも余裕で掴み取るんだろうけどな……


「けど、そこらの相手なら実践でも使える事は証明できたみてぇだな」


 ただでさえ視認しにくい加速の矢がカーブしながら飛んでくる。

 もはや彼ら聖騎士達の目ですら捉えることはできなかった。


「くそっ!」


 聖騎士は聖盾を展開後、即座に攻撃用の神術も唱えてはいた。

 しかし池の反対側にいるアスベルまでの距離は魔法の射程外。

 今やそんな事も忘れるほどに聖騎士は追い詰められていた。

 

 もはや残る二人の聖騎士に為す術はない。


 詠唱の隙に、更に一人がカーブする矢の前に沈む。


 そして……


「ほい、お前で最後だ」


 そして最後の聖騎士は、多少の工夫は警戒したアスベルに上と正面、二本の矢で同時に狙われ、その対応に迷った挙げ句に両方の矢を喰らうという、ある意味アスベルの予想を遙かに超える光景を見せつけ絶命していった。


「おい、マジか…… 横に避けろよ」


 体勢を崩したところを狙おうと次の矢を既に準備していたアスベルは絶句する。

 右にも左にも動こうとする気配を感じさせない聖騎士に、アスベルは多少の警戒はしていたのだ。

 それがあっさりと……


 ま、いいけどよ……


「さて聖騎士終了。あっけねぇ。んで、後は……」


 約束どおり、お前らだ。

 アスベルは村の入り口に向かって歩いていった。


 それからしばらくして村は炎に包まれる。

 そしてアスベルは誰も居なくなった村を後にした。

アスベルの復讐行為詳細はCMの後、すぐ(一時間後にアップされます)

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