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転生した古竜は人生を謳歌する  作者: くま
少女は生きる
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121話 吶喊 火達磨 閃光 事故


「フゥゥハハハハハハッ!!!」


「普通に強ェ!」


 エンキの様に燃え盛るわけでも、オーレルクスの様に上裸になるわけではない。だが、暑苦しさを全面に押し出したその戦い方は、あの三人に見られる一種のうざさを持っていた。


「さて、満足させるとしても、手を選ばなければな」


「ケルトル君。ガウィン先生のクラスの生徒だったよね、何か情報ないの?」


 そんなうざったいガウィンと、先鋒として出陣したクリウスの戦闘を眺めつつ、リーリャ達は今度こそ真面目に会議を始めた。

 とりあえず、とエイハローが、この中で最もガウィン先生のことを知っているだろうケルトルへと話を振る。


「ガウィン先生は派手なイメージがあるが、その実は堅実な魔法使いだ。防御系の【火属性特化プロテクト】を使用しつつ、【火柱】【炎壁】なんかの魔法で相手の退路を塞いで、近接戦を強制しつつ戦うことから、【炎陣】の二つ名がついている。そして、さっきも言った通り魔法戦闘における防御能力が非常に高い。特に、得意な火属性は学園長以上の防御力を誇るから、生半可な攻撃じゃ倒せないだろうな」


「学園長を超える、ってなると相当だなぁ。前に喧嘩売った時に簡単にあしらわれちゃったし」


「そうだのぉ。その辺のチンピラ程度じゃ瞬殺だったからな」


「お前ら学園長に何してんだよ……」


「ストロット先輩は復活しましたか、よかったよかった」


 学園長と聞いて、以前に喧嘩を吹っ掛けた経歴のあるエイハローと路地裏でチンピラを相手に一瞬で勝負をきめた姿を見たことのあるリーリャ。しかしながら、そのどちらの言葉も学園長の強さを予測するには十分であり、そこから防御能力だけは学園長以上の称号を持つガウィンの評価も上がる。


「待てよ……?」


 どうしたものかと会議が停滞に入りかけた最中、ケルトルがとある事実を思い出した。


「そう言えば、あのガウィンを火属性魔法で再起不能にした生徒がいた」


「え?」


 それは丁度、七カ月ほど前。入学試験の時。


「リーリャ、お前だよ」


「そんなこともあったのぉ……」


「流石お姉様!」


 それを成したのは、何を隠そうリーリャであった。


「じゃ、じゃあリーリャちゃんに任せれば……」


「我一人では無理だな」


 この異常事態を切り抜ける希望を見つけたストロッドが、リーリャにガウィン討伐を願うが、その願いは簡単に否定された。


「できるんじゃないのか?」


「その魔法を撃てればの話だ。今はクリウスが引き付けているのもあるが、我らの会議がどのような作戦を見出すのかを、ガウィン自身が待ち望んでいる故にこちらに魔法は飛んでこない。しかし、こちらが魔法の準備を始めれば、即座にガウィンの奴は対応するだろうな。特に、件の魔法は制御が難しく、発動までに時間がかかる。故に撃てるかどうかが怪しい」


 その言葉に狼狽えるストロッド。しかし、ここでエイハローが何を簡単なことを、ととあることを言い出した。


「じゃあ、私たち全員で時間を稼げばいいじゃん」




「作戦は整ったみたいだな!」


「え、もう俺の出番終わり!?」


 ガウィンの前に立ちはだかる五人。

 全員が戦闘に備えた構えを取っており、ガウィンはそれを準備完了のしるしと捉え、クリウスは出番の終わりを感じた。


 気合十分とクリウスを警戒しつつも、五人へと向き直るガウィン。

 そして、その後方に吹き荒れる見覚えのある魔力の奔流に、全てを悟る。


「なるほど、例の魔法を使うのか」


「ご明察です。そして、私たちはお姉様が魔法を完成させる時間稼ぎに過ぎません」


「それじゃあ、例の魔法を撃たれたら、君たちの勝ちってわけか。面白い、その勝負、乗った!」


 そして、戦闘は始まった。


「【蒼式:フロストロード】」


 横に並ぶ五人の真ん中を突っ切り、リーリャへと迫ろうと駆けだすガウィン。それを止めるべく魔法を切ったのはサリアスだった。

 その魔法の名は【蒼式:フロストロード】。道の様に地面に氷の線を引く魔法にて、ガウィンの足を凍らせようとした。


「【フレイムレッグ】」


 だが、蒼式は水属性を操る事に長けた魔法の形式。そして、サリアスが放ったのは対象物を凍らせる魔法。そのすべては、ガウィンの扱う炎との相性が最悪であった。


 足止めのための氷は全て溶かされ、ガウィンの行動を止めるに至らない。

 ならば、と次に前に出たのはエイハロー。緑草という二つ名を持つ彼女は、土壌を操り、草木を扱う魔法に長けていた。


「【ウィップ】」


 だが、木に炎。更には、ガウィンは魔法使いの中でも肉体派であり、オーレルクスやエンキ同様に筋力に長けた魔法使いであり、そのあふれ出るパワーは炎で焼けた植物たちの拘束をいともたやすく振りほどいた。


「相性悪すぎー」


「俺のファイアストームも効かないからな。どうしようもない」


 全力と言えど、殺傷能力のある魔法を放つのは憚られる。しかし、生半可な拘束ではガウィンを止めることはできず、いずれはリーリャに到達してしまう。


「さあ、どきたまえ!」


 いつの間にか、何の魔法の影響か全身に炎を纏うガウィンが、五人の元に突っこんでくる。

 打つ手なし、とモアラが判断し、仕方がないかと雷撃を放とうとしたところで、ガウィンの前に人影が飛び込んだ。


「ぷ、【プロテクト】【エンチャント:レジストファイア】。やぁあッ!!」


 それは、この場に最も置いて行かれていたストロッドであった。

 彼は、自分が行使しうる最大の防御で身を固めて、なんと火だるまと化したガウィンの懐へと跳び込み、身を張って足止めをして見せたのだ!


 この勇気にはガウィンの表情もほころぶ。


「いい根性だ!」


「よ、よし。ストロッド先輩に続くぞ!」


 そこで、ケルトルがストロッドの背中を押すように参戦する。そのケルトルの姿を見て、他の三人も続いて見せた。


「サリアス、変なところ触らないでください」


「えぇ!? 背中押してるだけだよ!」


「うわー、すっごい暑い。なんで先生無事なんだろ」


 その押し合いの最中、遂にリーリャの魔法は完成した。


「できたぞ!」


「みんな、退避ィ!」


 リーリャが纏うは、【火之鳥】。何時かにみた赤き翼を前にして、ガウィンは満面の笑みで待ち構えた。


「さぁっ、来いッ!!!」


「【魔闘付与:火之鳥――、」



――――【ノヴァ】。



 拳から放たれる閃光。それは、ガウィンを呑み込み、その勢い衰えることなくガウィンの張った炎の壁すらも貫いて見せた。


「ハハッ……やはり、素晴らしい」


 その目論見は、ガウィンの敗北をもってして結果を示したのだった。







「リーリャ……覚えてろよ……」


 ついでに、その後ろには巻き込まれて真っ黒になったクリウスも倒れていた。

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