強引すぎる 異世界転移
「あなたの願いを叶えましょう」
え?
「いや、行かないから。 叶えなくていいから。 言ってみただけだから。 早く夢を終わらせてよ」
女神はいやらしい笑みを浮かべた。悪魔に転職出来るほどの。しかしそれでも美人には変わりない。理不尽だと思う。
「あはははっ!! もう遅いのよ、私が『あなたの願いを叶えましょう』と言ったから。 女神に逆らおうなんて考えるもんじゃないわ!」
あたしは薄れていく意識の中、彼女の「祝福」を確かに聞いた。
「安心なさい、魔王を倒したら返してあげる! 精々苦しむのね!!! あはははは!!!」
ああ、全く。あたしはどれだけ荒んでるんだろう。こんな不快な夢を見るなんて……夢の産物に殺意を抱くなんて。
もう二度と、こんな夢見るものか。
はじめまして、佐倉ルイです。
身長160台前半、顔は過去最高評価で中の上、魔法があってやっと上の部類らしいです。
そこそこの公立高校の一年で、帰宅部をしています。運動神経が致命的にないもので。
ファンタジーを糧に生きる、ごくごく普通の妄想癖のある一般人。
そんなあたし、ただ今異世界なうです。
気が付いたら自分の部屋、というオチじゃなかったのがものすごく不本意だった。テーマパークの内部のような町の広場みたいなところでベンチに腰かけてた。
こういう時はほっぺたをつねるらしい。痛い。普通に痛かった。
ちなみにあたしは、夢の中で本当につねったことがある人を知っている。夢の中でも痛かったらしい。というわけで、この方法は無意味なのだがお約束は必ずするのがあたしの信条である。
ていうかね、右手にはアイスがあるしさ、左にはスクールバッグがあるしさ、これを現実と言わんでなんという?あたしは鮮明で脈絡のある夢なんて見ない!それは寝てる間も起きているときも変わらない。
景色はヨーロッパ風。異臭が漂ってないことから、文明レベルは中世ではないのだろう。まんまテーマパークの内部の景色だ。普段のあたしならテンションが上がるだろう。でも、あのやり取りの後にはハイテンションできるわけがない。
下校中だったんだよ。今、制服なんだよ。まあ私服よりは良かったかな。
どうやらこちらの季節は春のようだ。
とりあえずアイスが溶けないうちに食べてしまう。次に食べられるのはいつなのか分からないから、今までで一番味わって食べた。
「さて、これからどうするか……」
ラノベ的に行くならギルドだろう。あたしの専門は、洋物正統派ダークファンタジーなのでラノベのことはよくわからないのだが。
考えるよりまず行動!ということで、あたしは動き出した。もともと知らない街とか景色とかは、好きなのだ。
さあ、ポジティブに始めよう!異世界生活!!
そう、むやみに明るいタイプのキャラクターを装えば、なんだかうまくいきそうな気がした。
「ところで翻訳こん〇ゃくいらないの……かな?」
そう、あたしはとっても大事なことを忘れていた。
ここ、日本語圏ですか?
ほっぺをつねるくだりは本当です。




