第5話(完)
街灯の光る夜道を、彼女のアパートまで急いで、私は呼び鈴を一度押す。
「杏奈、ありがとね」
凛はきっと私を待ち構えていたのだろう、すぐにドアが開いて、私は彼女の部屋へと招き入れられた。
彼女の部屋は、前に来たときと変わっていないように見えて、しかし、その隅々まで見れば、彼女がきっと、この短い間で整理をしたのだろうことが分かってしまう。それになんだかこそばゆいような、気まずいような何かを覚えて、私はその場で立ちすくんだ。
「ほら、座りなよ」
「ありがと」
彼女の勧めたクッションに腰を下ろせば、彼女は慌ただしくキッチンへと向かい、かちゃかちゃと何かを用意しているようだった。
「なんか手伝う?」
「だいじょうぶ!」
「そっか」
私は所在なく手を脚の間に挟んで、彼女の戻るのを待つ。そうしてどれだけ経ったのだろうか、私には——きっと、緊張で——わからなくなってしまったころ、戻ってきた凛の手には、しっかりとグラスが二つ、それに、小脇にはスナック菓子の袋が抱えられていた。
「ごめんね、突然」
私の隣に彼女が座って、お茶とスナックが置かれると、凛はそう切り出した。その目線がなぜだかこそばゆくて、きっとそれは、彼女が私の恋人だからだろう。
……私は、凛のことをどんな目で見ているのだろう。そんなことがふと、思い浮かんでしまって。しかしそのことは、きっと確かめようがないのだと、私はあきらめる。だって、凛に聞くわけにもいかないから。
だから、そっと一口、彼女の出してくれたお茶に口をつけて、私はその気持ちを隠すように凛に笑った。
「全然、呼んでくれてありがと」
彼女は笑い返して、少しの間だけ黙ったけれど、何か、意を決したように私の目をじっと見た。その様子に、私は今日のあの告白の時を思い出して、何も言えなくなってしまう。
「ねえ、杏奈」
「……うん」
「あたし、杏奈とお家デートしてみたかった」
「うん」
私は彼女の言葉にうなづくことしかできない。
「ほかにも、色々と……」
「うん、わかってる」
「だからさ。あたしに付き合ってよ」
もちろん、そのつもりだった。私はそっとまた一回首を縦に振る。
「それで、杏奈も、あたしとやりたいことを見つけてくれたら、すごいうれしいな」




