表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/94

サンタンジェロ城 聖天使城 【第一話:『二匹の美猫と、城主の青き密書』】[ローマ編]

新しいローマ編の始まりです。

応援よろしくお願いしますね♪

サンタンジェロ城 聖天使城 【第一話:『二匹の美猫と、城主の青き密書』】[ローマ編]

【第一話:『二匹の美猫と、城主の青き密書』】


『老いたる跳ね馬亭』の一階最奥にある、薔薇の彫刻が美しく施された暖炉の横が、俺の特等席だ。

かつて地球で『万能の天才』と呼ばれた俺――レオナルド・ダ・ヴィンチは、剣と魔法、人間と多様な亜人や魔物が共存するこの風変わりな異世界で、酒場の隅に探偵事務所を構えて退屈をしのいでいる。


この世界は生命力と魔力が満ち溢れているが、そのぶん俺の網膜を刺激する光や色彩の情報量が多すぎる。

普通に生きていれば脳が焼き切れてしまうため、俺は常に万能スキルである【画家ピクチャー】を発動させ、脳内の世界を完全な白黒のトーン、すなわち素描デッサンの世界へと落とし込んでいる。


光と影、陰影キアロスクーロだけで構成されたモノクロームの静謐な視界こそが、余計な魔力の乱反射から俺の脳を保護し、心地よい静寂をもたらしてくれる防壁だった。


「ふにゃあ」


足元から、甘えるような、だがどこか王族を思わせる気品のある鳴き声が響いた。

俺の膝の上に音もなく飛び乗ってきたのは、真っ白な短毛の毛並みを持つ、俺の相棒であるシャム猫の『ウララちゃん』だ。

サファイアのような深みのある青い瞳を細め、俺の服に額をすりすりとこすりつけてくる。


「よしよし、ウララ。今日も一段と完璧な白だな」

俺はしなやかな指先を動かし、彼女の柔らかな喉元を優しく撫で回した。


「ごろごろ……ふにゃあ」

ウララちゃんは満足そうに喉を低く鳴らし、俺の膝の上で丸い毛玉のように収まる。


暖炉の中でパチパチと薪が爆ぜる音と、彼女の規則正しい呼吸の音だけが、この極上の特等席に心地よいリズムを刻んでいた。

しかし、そんな美しい静寂の時間が、この騒がしい酒場でいつまでも続くはずもなかった。


バタン、と


凄まじい勢いで店の重厚な木製扉が開け放たれる。


昼下がりの気だるい空気を一瞬で粉々に引き裂くように飛び込んできたのは、磨き上げられた銀色の甲冑をまとった美しい少女、騎士団の見習い騎士であり、同時に俺の優秀な探偵助手でもあるフランチェスカだった。


彼女はいつも以上に血相を変えており、その細い腕の中には、グレーの長い毛並みを誇らしげに揺らし、鼻先からお腹にかけて純白の毛並みを持ったペルシャ猫の『キララちゃん』が、まるで極上の絹で作られた贅沢な毛玉のようにふんわりと抱きかかえられていた。


「レオナルド! 大変よ! 本当に大変な事態が起きちゃったのよ!」

フランチェスカは俺の特等席まで大股で歩み寄ると、手にした封書をテーブルの上に叩きつけた。


「落ち着け、フランチェスカ。大声を出すとウララが驚く。それから、その腕の中の毛玉もな」

俺が苦笑しながら言うと、その衝撃に驚いたのか、彼女の腕からすり抜けたキララちゃんが、テーブルの上にしなやかに着地した。


「みゃあ!」

キララちゃんはテーブルに佇むウララちゃんを見つけると、ふさふさとした極上のグレーの長い尾を優雅に立てて、まるで自分の方が圧倒的に美しく高貴であると周囲に宣言するかのように誇らしげに鳴いた。


「ふにゃあん!」

ウララちゃんも負けじと俺の膝の上で勢いよく立ち上がり、サファイアブルーの美しい瞳を細めて激しく応戦する。


「ほらほら、お前たち、そこまでにしなさい。今は喧嘩をしている場合じゃないのよ」


フランチェスカが慌てて二匹の間に手を割り込ませるが、二匹の美しき猫たちは、木製のテーブルと俺の膝という境界線を挟んで、お互いの美しさを誇示するように鼻先をほんの数ミリまで近づけ、静かに、しかし激しい火花を散らしながら牽制し合っていた。


「おいおい、またあの見習い騎士様が、とんでもなく厄介そうなトラブルを持ってきたようだな。ダ・ヴィンチ、お前の平穏な昼寝タイムもここまでだな」

カウンターの奥から、乾いた麻のエプロンで自分の太い手を拭きながら姿を現したのは、この店のマスターであるマルコ店長だ。


「そうよ、マルコ店長! 本当に大変なんだから! でも、二匹とも相変わらず仲が悪いわね」

フランチェスカはため息をつきながら、テーブルの上のキララちゃんを優しく撫でた。


「仲が悪いんじゃないさ。お互いの美しさを認め合っているからこそ、譲れないプライドがぶつかり合っているのさ。猫の世界の美の競演だな」

俺はウララちゃんの頭を指先でそっと撫でながら、テーブルの上の封書を見つめた。


「相変わらず猫のことになると、ダ・ヴィンチは詩人みたいなことを言うな。それで、見習い騎士様、その物々しい手紙は一体何なんだ?」

カウンターの端で昼間から大きなジョッキを何度も傾けていた、ドワーフの腕利き鍛冶屋であるバラクが、髭にビールの泡をつけたまま勢いよく身を乗り出した。


「これね、カストラック城主閣下からの、極秘中の極秘である直々の密書なのよ! 私が直接、騎士団の連絡便から預かってきたの!」

フランチェスカは声を潜めながら、しかし興奮を隠しきれない様子で身を乗り出した。


「城主閣下からの密書だって? そんな大物が、うちのような場末の酒場に何の用かしらね。もしかして、また城の誰かの浮気調査でも依頼してきたのかしら?」

隣の席から、エルフの熟練の薬草売りであるセリアが、いつもの冷ややかな、しかし好奇心に満ちた笑みを浮かべながら静かに口を挟んだ。


「セリア、そんな不謹慎なこと言わないで! これは国を揺るがすかもしれない大事件なのよ!」

フランチェスカは真面目な顔をして、封書の封を慎重に破り、中から一枚の羊皮紙を取り出した。


「まあ、落ち着きなよ、フランチェスカちゃん。あっしが仕入れてきたこの『精神安定のハーブキャンディ』でも舐めて、一度深呼吸するっすよ」

犬の耳をパタパタと忙しなく動かしながら胡散臭い笑みを浮かべる獣人の行商人、コップが、ポケットから怪しげな包みを取り出した。


「コップ、余計なものを押し売りするんじゃないよ。フランチェスカ、その手紙の内容を読んでみなさい」

マルコ店長がカウンター越しにコップを睨みつけると、コップは「ちぇっ、親切心なのに」と呟いて引き下がった。


「わかったわ。それじゃあ読むわね。……

………『レオナルド・ダ・ヴィンチ殿。貴殿の非凡なる審美眼と、世界の本質を見抜く目に頼りたい。

実は、我が聖天使城の頂上に掲げられている、国宝『聖天使の剣』から、ここ数日の間にわずかに神聖な光が失われつつある。

これは大天使の結界が破られる前兆ではないかと、私は夜も眠れぬほど深く危惧している。

どうか、公に騎士団を動かして大騒ぎにする前に、貴殿の力で城内の魔力構図の精密な調査を行ってほしい。カストラックより』……とのことよ」

フランチェスカが読み終えると、酒場の中は一瞬、静まり返った。


「おいおい、聖天使城の剣だって? そりゃあかつてこの国を襲った大疫病を一瞬で鎮めたっていう、あの大天使ミカエル様が鞘に収めたとされる伝説の奇跡の剣じゃないか!」

バラクがジョッキをテーブルに叩きつけるようにして叫んだ。


「そんな大層な代物に異変が起きているなんて、確かに穏やかじゃないわね。でも、どうして騎士団ではなく、レオナルドに白羽の矢が立ったのかしら?」

セリアが不思議そうに首をかしげ、俺の様子を窺うように見つめた。


「それは簡単な話さ。騎士団を動かせば、それだけで民衆に不安が広がる。それに、騎士団の中には、魔力の微妙な『歪み』に気づけるような繊細な目を持つ者は少ないからな」

俺はそう言いながら、フランチェスカから手紙を受け取り、脳内の【画家】の白黒フィルターをほんの一瞬だけ緩めてみた。


途端に、俺のモノクロームの世界に、濁流のような極彩色がドクドクと押し寄せ、カストラック城主の印章が放つ、かすかな魔力の残滓が網膜に鮮やかに突き刺さった。


「レオナルド、何か見えたの?」

フランチェスカが心配そうに覗き込んできた。


「ああ、面白いな。この手紙のインクの色彩が、不自然なほど青みを帯びている。これはただのインクの色ではない。光の波長そのものが、城の周囲で歪み始めている証拠だ」

俺の指摘に、フランチェスカは手紙を凝視したが、首を横に振った。


「私には普通の黒いインクにしか見えないわ。やっぱり、あなたにしか見えない世界があるのね」

彼女は感心したようにため息をついた。


「おいおい、そんな難しい話は俺にはよくわからねえが、城の魔力構図を調べるなら、あっしの出番っすよ!」

コップが再び元気よく手を挙げた。


「あっしが極秘ルートで仕入れてきたこの『三段階魔力感知式・高性能方位磁針』を使えば、目に見えない魔力の乱れなんて一発でわかるっす! ダ・ヴィンチの旦那、これを使ってみる気はないっすか?」

コップは懐から取り出した金属製の奇妙な道具を、俺の目の前でこれ見よがしに振ってみせた。


「コップ、その磁針は本当に動くのか? この前、俺が頼んだ魔力測定器は、使った瞬間に煙を吹いて壊れたぞ」

店内の隅のテーブルでチェスをしていた、人間の少年トビーが、呆れたような顔をして声をかけてきた。


「トビー、あれは使い方が悪かっただけっすよ! 今回のは絶対に大丈夫っす!」

コップが必死に弁明する。


「嘘をおっしゃい。コップの持ってくる魔導具は、いつもどこかネジが緩んでいるか、魔力の出力が異常なんだから。おじさん、騙されちゃダメだよ」

ハーフエルフの少女リリィが、背中の弓をいじりながらクスクスと笑った。


「そうだよ、コップさん。僕の結晶の体が、その磁針からおかしな魔力の漏れを感じているよ。あまり近づけないで」

結晶族の少年ルカが、自身の透き通るような青い結晶の腕を少し引っ込めながら言った。


「ルカにそう言われちゃ、言い返せないっすね……。結晶族の魔力感知能力は本物っすから」

コップは肩を落として、磁針をポケットに仕舞い込んだ。


「でも、ルカ。お前の体がそんなに敏感に反応しているということは、やはり城の魔力に何か異常が起きているのは間違いなさそうだな」

オークの少年ガウルが、大きな岩のような拳を握りしめながら言った。


「うん、ガウル。城の方から、すごく不気味な、魔力を吸い取るような冷たい風が吹いてくるのを感じるんだ」

ルカは真剣な表情で、城のある方向を見つめた。

その時、酒場の頑丈な木製扉が、不穏な響きを伴ってバタンと大きな音を立てて開いた。


「ひえええ! 助けてくれ! 身体が、身体が凍っちまう!」

飛び込んできたのは、聖天使城への巡礼路から血相を変えて戻ってきたばかりの、全身を激しく震わせている人間の冒険者の青年ハンスと、彼を太い腕でがっちりと支えるようにして連れてきた、


巨漢のミノタウロスである商人のグズマだった。

彼らの後ろからは、さらにこの街の治安を守る自警団員の一員である人間の青年マークと、魔導書の束を抱えて慌てふためいた様子を見せるおばあさん召喚士のエルザが、何事か叫びながら続いて入ってきた。


「おい、一体全体どうしたんだ! 誰が凍りつきそうだなんて大騒ぎをしてるんだ?」

マルコ店長がさすがにただ事ではないと察し、カウンターの奥から急いで飛び出してきた。


「ハンス、しっかりしろ! 酒場の中は暖かいから安心するんだ」

マークがハンスを近くの椅子に座らせ、温かいエールを注文した。


「あ、あのな……聖天使城の巡礼路にある、あの一番大きな礼拝堂でお祈りを捧げて、旅の無事を祈ろうとしたんだ……。

……そしたら、いつもなら触るだけで心地よくポカポカと体を芯から温めてくれて、旅の疲れや小さな傷を一瞬で癒やしてくれるはずの『聖水』が、急にカチカチの氷みたいに冷たくなって、あっという間に目の前で凍りついちまったんだよ!

俺が驚いてお祈りを捧げようとした瞬間、神殿の聖水台から溢れた飛沫を浴びただけで、俺の自慢の髭までこのように一瞬で霜を被って凍りついちまって!」


ハンスは震える手で、白く凍りついた銀のカップをテーブルの上に置いた。


確かに、カップの中の水はカチカチに凍りついており、ハンスの顎の周りの髭にも白い霜がびっしりと張り付いていた。


「おいおい、ハンス。大げさに言ってるんじゃないだろうな。あの礼拝堂の聖水は、大天使様の加護でいつでも温かいはずだぞ。凍るなんてあり得ねえ」

バラクが信じられないといった様子でハンスの持っていた銀のカップを覗き込んだ。


「本当なんだ、バラクさん! 私もこの目で見たのよ! 聖水に手を浸したハンスも、一緒にいた私もみんな、その冷たさに驚いて飛びのいたんだから!」

エルザがおばあさんとは思えないほど張りのある声で、必死になって状況を説明した。


「そうなんだ。私も隣の礼拝堂にいたが、急に周囲の空気が凍りつくような冷気を感じて駆けつけたんだ。魔物の襲撃かと思ったが、そんな気配はなかった」

グズマが太い腕を組み、低い声で言った。


「冷気魔法の罠でも仕掛けられていたのか? それとも、誰かがいたずらで氷の魔石でも投げ入れたのか?」

マークが剣の柄に手を伸ばし、自警団員としての鋭い目で推測を口にした。


「いや、それなら魔力の残滓がもっと強く残っているはずだ。私の薬草センサーにも、魔法の冷気の匂いは引っかからないわ」

セリアがハンスの凍りついた髭に近づき、そっと指先で触れてから言った。


「ハンス、その凍りついた銀のカップを俺によく見せてみろ」


俺は万能スキル【画家】を再び研ぎ澄ませ、ハンスが持ってきた凍りついたカップを、白黒の明確な光と影の陰影の中に閉じ込めて冷徹に走査した。


カップの表面を厚く覆っている氷の結晶は、自然界では絶対に形成されることのない、極めて不自然な鋭角を持つ幾何学的なパターンの模様を描いていた。


そこからはかすかに、絵の具の「鉛色」を思わせる澱んだ魔力汚染のラインが、まるで一本の不気味な煙のように立ち上っていた。


「レオナルド、何か分かったの?」

フランチェスカが緊張した面持ちで尋ねてきた。


「ただの冷気魔法による単純な凍結現象などではないな。

この神聖な水に本来豊かに含まれていた、聖天使の剣から供給されるはずの温かな『赤の波長(熱量エネルギー)』だけが、特定の魔力吸引によって、まるで絵の具をキャンバスから拭い取るように『根こそぎ吸い出された』結果、物質としての熱量バランスが完全に崩壊して一瞬で凍りついたのだ。

つまり、その赤の光の波長だけを強制的に奪い取るための、強力な魔力吸引システムが城の内部で秘密裏に稼働している」

俺の説明に、一同は息を呑んだ。


「赤の波長を奪い取るだって? 光の色を盗むなんて、そんなことができるのか?」

バラクが驚きを隠せない様子で頭を掻いた。


「ああ、色彩とは光のエネルギーそのものだ。大天使の剣が放つ光のスペクトルから、特定の波長だけを抜き取ることで、本来の加護を無効化し、周囲の物質の性質を狂わせているんだ」

俺は立ち上がり、コートの胸元を少し広げた。


「おじさん、僕たちの出番だね! 城に行って、その悪い魔法を暴いてやろうよ!」

トビーが元気よく叫んだ。


「私も行くよ。大天使の光が奪われるなんて、森の精霊たちにとっても他人事じゃないからね」

リリィが真剣な表情で言った。


「うん、僕も行く。城の近くに行けば、もっと詳しい魔力の流れが体でわかると思う」

ルカが自分の結晶の腕を見つめながら力強く頷いた。


「ガウル、お前はどうする?」

トビーが尋ねると、オークの少年は笑顔で拳を合わせた。


「もちろん行くさ。トビー一人じゃ、危ない目に遭ったときに助けられないからな」

ガウルが頼もしく微笑んだ。


「レオナルド、見習い騎士である私も、当然あなたたちに同行するわ。城の異変をこれ以上ただ傍観しているわけにはいかないし、これは城主閣下からの私への任務でもあるのだから」


フランチェスカがその銀色の甲冑をカチャリと鳴らし、腕の中のキララちゃんを落さないように抱き直しながら、凛とした表情で俺を真っ直ぐに見つめた。


「足手まといになるなよ、見習い騎士殿。お前のその自慢の美しい銀の剣が、城の歪んだ魔力で錆びつく前に、すべての謎の絵の具をこのキャンバスにスケッチしてみせるさ」


俺はテーブルから、真っ白な最愛のシャム猫ウララちゃんを両手で優しく抱き上げ、コートの胸元の隙間へとふんわりと収めた。


ウララちゃんは「ふにゃあ」と極めて満足そうに可愛らしく鳴き、顔だけをコートから少し覗かせて、周囲の様子をサファイアブルーの瞳で見渡している。


一方、フランチェスカの腕の中にいるペルシャ猫のキララちゃんも、お腹の白い毛並みを誇らしげに見せびらかすようにその豊かなグレーの身体を少し揺らし、「みゃあ」と、俺の胸元にいるウララちゃんを強烈に意識しながら威嚇するように小さく鳴いた。


「マルコ、店を頼むぞ。俺たちの解決を祝うための、極上の葡萄酒をしっかりと冷やしておいてくれ。戻ったら、この美しい謎をすべて解き明かした傑作のデッサンを肴にして、みんなで盛大な祝杯を挙げよう」

俺の言葉に、マルコ店長は豪快に笑って応えた。


「おうよ、気をつけて行ってこい、ダ・ヴィンチ。見習い騎士様を泣かせるような真似をするんじゃないぞ! エルザの婆さんも、ハンスも、ここで温かいスープでも飲んで待っていな」


マルコ店長の見送りの声と、バラクたちがジョッキを叩きながら囃し立てる騒ぎ声を背中に聞き流しながら、俺たちは『老いたる跳ね馬亭』の重厚な扉を抜けて、ついに一歩を外へと踏み出した。


街道へと出ると、昼下がりだというのに大気はいつもより不気味に張り詰め、遠くに見える白亜の聖天使城の尖塔は、澱んだ不気味な灰色の霧に深く包まれて、まるで巨大な墓標のように静かに佇んでいた。

小さな事件のピースは、すでに俺たちの足元で静かに動き出している。


これから向かうあの冷徹な城で、俺たちを待ち受けているであろう「六人の容疑者」たちの歪んだ思惑が、どのような濁った絵の具となって俺のキャンバスを汚そうとするのか、俺にはまだ見えていない。


だが、俺は【画家】としてのモノクローム of の視界の中で、その見えない悪意の輪郭をしっかりと捉えながら、聖天使城へと続く澱んだ巡礼路へ向かって、静かに、そして確信に満ちた足取りで進み始めるのだった。

みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?

少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。

励みになりますので、☆☆☆☆☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。

これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

パラレルワールドで魔法と多種族の住む異世界でスキル無しで探偵します。

ローマ編も追加しています。17時投稿です!

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ