世界遺産 100万年前のイースター 1
新作 第3弾目の投稿してます
題名 転生したらしいけどスキルデッドストックって何???
今回の主人公は海軍さんの街呉からの転生した女子高生のお話です
はちゃめちゃのスキルで異世界を乗り越えます。
誤字脱字が多くなると思いますが、よろしくお願いいたします。
途中で、脱線することもあると思いますが、ゆっくりと見守ってください。
作品の内容が前後することが多々あると思いますが、大目に見て頂ければ、うれしく存じます。
パラレルワールド編 ダビンチは100万年前のイースターのお話です!
当初から作品を見ていただき本当にありがとうございます。
大変励みになっております。
これからもよろしくお願いします。
では、参ります!!
## 第一章:巨人の揺籠と異邦の観察者
この世界は、私がかつて知っていたトスカーナのなだらかな丘陵とも、アルノ川のせせらぎとも、完全に切り離された絶絶たる異郷であった。
私の名はレオナルド・ダ・ヴィンチ。フィレンツェの街で、鳥の翼を模した人工の飛翔体を設計し、解剖室の薄暗い灯火の下で人間の筋肉の繊維を一つ一つ剥離させては、神の工学を模索していた男だ。しかし、三十歳という、男の肉体と知性が最も激しく火花を散らす季節の最中、私は「十五世紀」という時間の糸を不意に断ち切られ、この百万年前の並行世界「イースター」へと墜ちた。
転移、あるいは転生。それをどのような言葉で定義すべきかは、未だ科学的な検証の途上にある。だが、一つだけ確かな事実があった。
この地に着いた瞬間、私の肉体は、周囲の景観と調和するように再構成されたのだ。私は現在、天を衝くような巨躯を持つ「巨人」と同じサイズとして、この東の大陸「ギガンティア」に立っている。
ギガンティアの自然は、私の記憶にある地球の尺度をあざ笑うかのように肥大化していた。
一本の向日葵はフィレンツェのドゥオーモ(大聖堂)の尖塔ほどもあり、その大輪が風に揺れるたび、私の頭ほどもある重厚な種子が大地を叩く。森を形成する巨木たちは雲海を突き抜け、その葉一枚が、十人の兵士を嵐から守る天幕となる。
だが、この世界は単なる大物主義の王国ではない。
この圧倒的な巨樹たちの足元、あるいは地表の細かな割れ目には、私の知る人間よりも遥かに小さな、体長わずか数寸の「小さきもの」――フェアリー(妖精族)やドワーフ、エルフといった亜人たちが、驚くほど精緻な文明を営んでいるのだ。
彼ら小さきものは主に西の大陸「リリパトス」に拠点を置き、我々巨人は東の大陸「ギガンティア」を領土としていた。そして、二つの大陸の間には、古代宇宙人(天の創造主)が数万年前に施したという「不可思議な魔術の均衡」が機能していた。
巨人が西の大陸へ渡る際、その肉体は空間の歪みによって滑らかに縮小し、小さきもののサイズへと同化する。逆に、小さきものが東の大陸を訪れるときには、世界の調和を崩さぬ範囲で、巨人の視界にもはっきりと捉えられるだけの「存在感の拡大」という魔術的加護が与えられる。
これにより、踏み潰し、踏み潰されるはずの圧倒的な質量差がありながら、両者は互いの尊厳を侵すことなく、物資を交易し、魔法と知恵を共有して完璧な共存を果たしてきたのだ。
「自然は、常に最も経済的で、最も均整のとれた道を好む……」
私は自ら築いた巨大な木造の工房のテラスで、手製の巨大な羊皮紙に、この世界の生態系をスケッチしていた。私がこの世界に迷い込んでから、ちょうど三ヶ月が経過していた。
科学者として、また探偵としての私の眼は、この世界の表面的な平和の裏に潜む、微細な「歪み」をすでに感知し始めていた。
この世界には、剣と魔法、そして凶暴な魔物たちが実在する。火を吐く巨竜が雲間を飛び交い、地中には大地を揺るがす大百足が蠢く。
しかし、何よりも私を魅了し、同時に警戒させたのは、万物に宿る「精霊神」の存在であった。
十五世紀のイタリアでは、職人が魂を込めて作った道具には「念」が宿ると言われていたが、このイースターにおいては、それが物理的な法として完成していた。
数百年使い込まれた日時計、名匠が鍛え上げた古い大剣、あるいは一本の古い機織り機にさえ、世界の理を司る精霊神たちが宿り、自らの意志を持って人間に語りかけるのだ。
世界は、古代宇宙人が定めた「十の戒律」によって厳格に縛られていた。
『一、天の創造主を忘れぬこと。第四、サイズの違いを支配の道具とせぬこと……』。
この十の柱がある限り、世界は不変の調和を保つはずだった。
だが、私の観察記録には、ここ数週間でギガンティアの巨人たちの間で急速に広がりつつある、ある種の「驕り」が克明に書き連ねられていた。
彼らは小さきものを「弱き虫ケラ」と呼び始め、西の大陸から輸入される魔道具を不当に買い叩くようになっていた。
犯罪の予兆。私の直感は、それが単なる不平不満の類ではなく、世界を崩壊させかねない巨大な「大罪」の引き金であると告げていた。
## 第二章:回転を止めた「時の精霊神」
その日の夕暮れ、ギガンティアの空は、燃えるような緋色から、不吉な紫黒色へと移り変わろうとしていた。
私は工房の裏庭にある、古代宇宙人の遺産の一つである「大白斑の日時計」の前に立っていた。
それは直径が三十メートルもある大理石の円盤で、中央には未知の金属で鋳造された、巨大な針が一本、天に向かって斜めに突き刺さっている。
この日時計は、単に太陽の影で時間を測るものではない。星々の運行と、この世界の底を流れる魔力の潮流を感知し、イースターの「正しい時間」を空間そのものに刻み付ける、世界の歯車そのものであった。
「レオナルド様! 大変です、日時計の様子が……!」
足元から、鈴の鳴るような、だが今は完全に恐怖に震える声が響いた。
私の肩のあたりまで、自作の「昇降機」を使って登ってきたのは、西の大陸から私の助手として派遣されている妖精族の少女、チッタであった。彼女の小さな羽は、激しく小刻みに震えている。
私が言葉を返すより早く、私の眼は日時計の異変を正確に捉えていた。
太陽はまだ地平線に没しておらず、影は確実に東へと伸びるはずの時刻であった。しかし、大白斑の日時計の巨大な金属針は、ガガガ、と、大地を揺るがすような不快な金属音を立てて、その場で完全に静止していた。それだけではない。針の影が、太陽の動きを無視して、小刻みに逆回転を始めようと震えているのだ。
「影が時間を拒絶している……? これは光学的な錯覚ではないな」
私は懐から、ガラスを幾重にも組み合わせた自製の「倍率鏡」を取り出し、針の根元を観察した。
金属の表面には、私の知るいかなる言語にも属さない、幾何学的な発光パターンが浮かび上がっていた。それは流れるような曲線でありながら、同時に緻密な数式のように規則正しい。
次の瞬間、日時計の周囲の大気が一変した。
強烈な重圧が私の全身を襲い、大理石の円盤から、濃密な、それでいて透き通るような青い魔力の光が噴出した。光は収束し、金属針の真上に、巨大な老人の姿を結んだ。いや、それは老人というよりも、星々の塵を纏った「時間の概念」そのものの具現であった。
『異邦の知性よ、レオナルド・ダ・ヴィンチよ……』
その声は、私の耳ではなく、脳細胞の最深部に直接響き渡る震動であった。
『我が名はクロノス。この日時計の針を器とし、イースターの時間を紡ぐ「時の精霊神」である』
「初めまして、時の王」
私は驚きを胸の奥に仕舞い込み、敬意を込めて一礼した。
「私は科学者だ。現象には必ず原因がある。君がその絶対的な回転を止めた理由を、私に論理的に説明していただけるだろうか」
クロノスは、その青く光る眼を私に向け、静かに首を振った。その仕草一つで、周囲の植物の成長が数秒間加減速するのが分かった。
『時間が、先へ進むことを拒んでいるのだ。東の大陸の巨人たち……「ゴリアテの鉄槌」を率いるギガ・ムルムル将軍とその一派が、創造主の遺した「十の戒律」を物理的に切断する計画を開始した。彼らは三ヶ月後の冬至の夜、西の大陸の魔術結界を破るための「大いなる楔」を鋳造し、小さきものたちを蹂躙しようとしている』
「三ヶ月後の冬至……」
私は手帳をめくり、瞬時に頭の中で星の配置を計算した。
「その夜は、星々が天の頂点で一直線に並ぶ『大合』の刻だ。魔力の流動が最も不安定になるその瞬間を狙って、世界の法を書き換えようというのか」
『然り。戒律の第四「サイズの違いを支配の道具とせぬこと」が破られた時、この世界を支える魔術的な因果の鎖は完全に崩壊する。巨人の傲慢が引き起こすその犯罪は、単なる戦争ではない。イースターという並行世界そのものを、物理的な虚無へと還す大罪だ。それゆえ、私は未来を拒絶し、ここに時間を固定した』
クロノスの姿が、徐々に薄れ始めていく。金属針の表面の発光が、ドロドロとした赤黒い光へと変色しつつあった。
『レオナルドよ、お前の持つ「観察する眼」と、真実を暴く「探偵の知性」で、この狂気の計画を阻止せよ。さもなくば、この針が再び動き出す時、それは世界の終焉を刻む秒読み(カウントダウン)となるだろう……』
光は霧散し、庭には再び静寂が戻った。だが、大白斑の日時計の針は、二度と動かない頑固な石のように、完全に沈黙したままであった。
### 第三章:精霊神たちの悲鳴
「レオナルド様……どうしましょう。世界が、世界が本当に終わってしまうのですか?」
チッタが私の衣服の襟元にすがりつき、涙を流していた。彼女たち小さきものにとって、巨人の暴走は天災と同じだ。抗う術など持たない、圧倒的な質量の暴力。
「落ち着きなさい、チッタ。恐怖は知性を曇らせる最大の敵だ」
私は彼女を大きな手のひらの上に乗せ、その小さな頭を指先で優しく撫でた。
「時間の精霊神クロノスは、私に『三ヶ月』という猶予をくれた。これは科学的な実験において、十分な準備期間と言える。犯罪が起こる前にその構造を解明し、解体する。それが探偵の仕事だからね」
私はすぐに工房の中へと戻り、調査の準備を整えた。
まず腰に帯びたのは、転生時に私を見守るように私の傍らに突き刺さっていた、一本の古びた大剣であった。この剣もまた、ただの鉄の塊ではない。
西の大陸のドワーフの鍛冶神が魂を込めて鍛え上げ、長い年月を経て「戦いと守護の精霊神・クラレント」が宿った名剣である。
私が柄に触れると、鞘の中でカチャカチャと小気味よい音が響いた。
『おいおい、ダ・ヴィンチの旦那。とんでもない事件に巻き込まれちまったな。時の親父があそこまで怯えるなんて、ただ事じゃねえぜ』
「頼りにしてるよ、クラレント。君の持つ『鉄の記憶』が、これからの調査に不可欠だ」
私はさらに、自作の「音響増幅器(パラボラ型の集音器)」を背負った。これは遠方の微細な空気の震動を拾い上げ、特定の周波数に変換して耳に届ける、
私の自信作である。この世界において、魔法の流動は音(波動)として観測できることが、これまでの三ヶ月の調査で分かっていた。
「さあ、タルタロスの街へ向かおう。ムルムル将軍が何を企んでいるのか、その足跡を科学的に追跡するんだ」
私とチッタ、そして精霊神クラレントは、夜の帳が降りた巨人の首都へと向かった。
タルタロスの街は、大理石の巨大なブロックを積み上げて作られた、圧倒的な威容を誇る城塞都市であった。
通りを行き交う巨人たちは、誰もが身の丈ほどの戦斧や大剣を背負い、魔物の皮で作られたマントを翻している。その姿からは、かつて古代宇宙人が求めたであろう「知性ある管理客」としての品格は失われ、ただ肥大化した肉体への狂信だけが漂っていた。
「見ろよ、あの足元を」
クラレントが低い声で私に告げた。
街の至る所にある物資集積所には、西の大陸から「徴発」されたと思われる、おびただしい数の古びた道具や魔導具が山積みにされていた。
それらの道具からは、目を凝らさなければ見えないほどの、薄い光の粒子が立ち上っている。それは道具に宿る、下級の精霊神たちの「悲鳴」であった。
「熱い……暗いよ……」
「私たちは、ただ人々の生活を助けるために作られたのに……」
私は集音器をその山に向け、ダイヤルを細かく調整した。耳に飛び込んできたのは、数千の精霊神たちが上げる、魂を掻きむしるような不協和音であった。
「なるほど……」
私はノートにペンを走らせる。
「ムルムル将軍は、西の大陸から精霊神が宿るあらゆる器物を強制的に集めている。そして、それらの魂を『抽出』し、一つの巨大な、禁忌の兵器へと再結晶化させようとしているのだ。これは第二の戒律『命なき器に、不当な魂を吹き込まぬこと』への完全な違反だ」
「レオナルド様、あそこを見てください!」
チッタが私の髪の毛の間から、前方の巨大な建造物を指差した。
それは、街の中央に聳え立つ「黒鉄の総督府」であった。
その地下からは、夜の闇を赤く染めるほどの、不気味な高熱の光が漏れ出していた。そこが、ムルムル将軍の「禁忌の魔導炉」がある場所に違いなかった。
## 第四章:地下要塞の潜入と不条理な因果
私は巨人の群れに紛れ込み、総督府の裏手へと回り込んだ。
科学者としての私は、正面からの強行突破などという不経済な手段は選ばない。
いかなる巨大な建造物にも、必ず熱を排出するための「通気口」が存在する。対流の原理により、地下で巨大な炉を燃やしていれば、上部からは必ず大量の熱気が放出され、それを補うための冷気の吸気口が下部にあるはずなのだ。
地面に近い岩壁を調べると、案の定、私の身体が辛うじて通り抜けられるほどの、巨大な鉄格子の吸気口が見つかった。
「クラレント、少し力を借りるよ」
『任せな、旦那!』
私が剣を抜くと、クラレントの刃が青白い魔力の光を放ち、鉄格子の結合部分の分子構造を、ドワーフの魔術で一時的に「脆化」させた。
私が軽く手をかけると、太い鉄格子は粘土のように音もなくひしゃげた。
私は滑り込むようにして、総督府の地下へと潜入した。
内部は、地獄の業火を想起させるような圧倒的な熱気と、硝煙の臭いに満ちていた。
通路の先には、直径が百メートルもある巨大な、漏斗型の魔導炉が設置されていた。
その周囲では、数十人の巨人の技術兵たちが、西の大陸から奪ってきた魔術書や古代の天秤、職人の道具たちを、次々と炉の中へと投げ込んでいた。
炉の底では、どろどろに溶けた黄金と黒鉄の液体が、生き物のようにのたうち回っている。
その液体の中心から、一つの巨大な「影」が浮かび上がろうとしていた。
それは、一本の巨大な、十数メートルもある「楔」の形状をしていた。
「あれが……時の精霊神が言っていた『大いなる楔』か」
私は壁の影から、その光景を克明に観察した。
炉の周囲には、強力な「術式の障壁」が張り巡らされており、精霊神たちの純粋なエネルギーが外部へ漏れるのを防いでいた。
その術式の中心に座していたのは、全身を黒金色の甲冑で固めた、一際巨大な巨人――ギガ・ムルムル将軍であった。
「もっと燃やせ! もっと精霊の魂を注ぎ込め!」
ムルムル将軍が、地鳴りのような声で笑った。
「西の大陸の弱者どもめ、我ら創造主と同じサイズを持つ選ばれた民が、なぜあんな虫ケラどもの魔術結界に怯え、対等な取引などという欺瞞に付き合わねばならんのだ! この『大いなる楔』が完成すれば、境界の結界は粉砕され、西の大陸は我らの広大な農場となる! 戒律など、大昔に消え去った宇宙人の戯言に過ぎん!」
「狂っているわ……」
チッタが私の耳元で、歯をガチガチと鳴らしながら呟いた。
「精霊神様たちは、この世界の自然そのものなのに。そんなことをしたら、本当に世界が……」
「いや、チッタ。彼の言葉には、科学的な矛盾がある」
私は冷静に、ムルムルの背後にある魔導炉のエネルギー配管を凝視していた。
「彼は、精霊神の力を単なる『燃料』として扱っている。だが、精霊神とは、この世界の因果律(物理法則)を維持するための『ベクトル(方向性)』そのものだ。それを無理やり一方向の破壊エネルギーへと捻じ曲げれば、その反作用(反発力)は、必ずこの炉を、そして鋳造している楔そのものを内部から破壊する」
私の頭の中で、一つの巨大な「数式」が完成しつつあった。
古代宇宙人が施した十の戒律と、二つの大陸のサイズ変動魔術。それらは、独立した魔法ではなく、一つの巨大な「流体力学的な平衡状態」として設計されているのだ。
巨人が傲慢になればなるほど、その魔力の「密度」は東の大陸に偏り、臨界点を超えた瞬間、世界のシステムは強制的な「逆転(反転)」を起こす。
「探偵としての私の結論は出た」
私は静かに身を引いた。
「ムルムル将軍の計画は、三ヶ月後の冬至の夜、彼が『大いなる楔』を大懸橋に打ち込んだ瞬間に、最悪の形で完成する。だが、それは彼が望む支配ではなく、世界を巻き込んだ大崩壊だ。彼を止めるには、武力で倒すのではない。彼が利用しようとしている精霊神たちの力を『正しい周波数』で共鳴させ、彼らの傲慢さを自らに跳ね返す『調律器』を作らねばならない」
『へっ、面白くなってきたじゃねえか、ダ・ヴィンチの旦那』
クラレントが鞘の中で、期待に満ちた振動を返してきた。
『お前のその、頭の中のわけのわからない図面ってやつで、あのデカブツの鼻をあかしてやろうぜ』
「ああ、私たちはこれからの三ヶ月、この世界のすべての職人と、虐げられた精霊神たちの連帯を組織する。これは、知性と理性による、不条理な暴力への反逆だ」
私は黒鉄の総督府を脱出し、星の動かない、静止した夜のギガンティアを駆け抜けた。
## 第五章:天才が描く二十の設計図
工房に戻った私は、すぐさま巨大な羊皮紙を何枚も広げ、不眠不休の執筆と設計を開始した。
時の精霊神クロノスが止めてくれた時間のおかげで、外部の太陽は昇らないが、私の工房の内部だけは、私の知性の炎によって昼間よりも明るく照らされていた。
「チッタ、これから私が描く『二十のアイデア』を、西の大陸のすべての同盟者に届けてほしい」
私は万年筆の先をインクに浸し、恐るべき速度で図面を描き上げていった。
「これは第一章:黎明の設計図。時の精霊神クロノスと、風の精霊神シルフィードの力を連動させ、大気中の魔力の格子を測定する『流体観測器』だ。
そしてこれが第二章:混迷の設計図。
西の大陸のドワーフたちに作ってもらう、機械仕掛けの巨人のパーツ。彼らが持つあらゆる道具の精霊神たちが、この機械の『歯車』や『天秤』として組み込まれることで、単なる兵器ではない、世界の理を体現する
『理性の調律器』となる……」
私のペンが走るたび、羊皮紙の上には、幾何学的な美しさを持つ歯車の噛み合わせ、レンズの曲率、魔術回路の配列が、まるで生き物のように描き出されていった。
それは、これからの三ヶ月間で私が挑む、壮大な「二十話の物語」のプロットそのものであった。
巨人の傲慢、魔物の洗脳、精霊神たちの涙、そしてそれらを一つ一つ、科学的な観察と探偵の執念で解き明かし、解放していくプロセス。
「レオナルド様……あなたは何者なのですか? 魔法使いでもなく、戦士でもないのに、どうしてこんな世界の構造がすべて見えてしまうのですか?」
チッタが、完成していく設計図の美しさに目を奪われながら、畏怖を込めて尋ねた。
私は万年筆を置き、工房の窓から、依然として静止したままの大白斑の日時計の針を見つめた。
「私はただの、観察者だよ、チッタ」
私は微笑んだ。
「自然は、私たちが目にするすべての現象の中に、すでに答えを書き残している。
私はそれを、少しだけ注意深く読み解き、線として描き出しているに過ぎない。
美しきイースターが、あの傲慢な巨人の足で踏みにじられるのを防ぐこと。
それは芸術家として、また自然を愛する科学者としての、私の至上の義務だ!」
腰のクラレントが、静かに、しかし力強く脈動した。
世界中の精霊神たちの目に見えないネットワークが、私の描いた設計図を通じて、微かに繋がり始めたのを感じた。
百万年前の並行世界、イースター。
剣と魔法、巨人と小さきものが交差するこの奇妙な揺籃の地で、レオナルド・ダ・ヴィンチの、世界の滅亡を阻止するための最初の三ヶ月の戦いが、今、静かに幕を開けたのだ。
私は再びペンを執り、次の設計図の白紙に向き合った。私の脳内にある時計の歯車は、世界の静止を無視して、最高速度で回転を続けていた。
みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?
少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。
励みになりますので、☆☆☆☆☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。
これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
パラレルワールドで魔法と多種族の住む異世界でスキル無しで探偵します。
よろしくお願いします。




