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第12話:『冬至のバザールと消えた幸運の歯車』前中後 編

第十二話:『冬至のバザールと消えた幸運の歯車』文字数の関係で前中後編すべていきます。

ダビンチのローマ編閑話2つでちょっと休憩します。

誤字脱字が多くなると思いますが、よろしくお願いいたします。

途中で、脱線することもあると思いますが、ゆっくりと見守ってください。

作品の内容が前後することが多々あると思いますが、大目に見て頂ければ、うれしく存じます。

ダビンチは世界遺産のナスカから謎の大陸ムーのお話です!

当初から作品を見ていただき本当にありがとうございます。

大変励みになっております。


これからもよろしくお願いします。

では、参ります!!

## 第十二話:『冬至のバザールと消えた幸運の歯車』

### 前編:結晶する魔力市場、小さな探偵団への依頼と怪しげなガラクタの影


十二月、冬至のローマ。この時期の寒さは格別で、地上の冷気は魔力そのものをパラパラとした透明な結晶に変えてしまうほどだった。だが、そんな極寒の昼だからこそ開かれる特別な祭りが、古代排水路の地上に広がる広場を埋め尽くしていた。年に一度の『冬至の大魔導バザール(魔力道具の蚤の市)』が始まる。


怪しげな長い外套を羽織った魔導具商人たちが、怪しい呪文が刻まれたガラクタや、真贋の怪しい魔法の触媒を所狭しと並べ、広場は異界の熱気に包まれていた。


「ひゃははは! 見て、見て!!ルカ、フランチェスカちゃん! この赤い絵の具の瓶なんて、ただの安物のざくろジュースに火属性の魔力クズを混ぜただけの、最悪にケバケバしい偽物のインクだよ!」


俺はヨレヨレの白いシャツのポケットをすっかり空っぽにしながら、錆びた虫眼鏡を片手に、新しい絵の具の絵素インクを求めて怪しい出店を覗き回っていた。

隣では、すっかり体調の戻ったフランチェスカちゃんが、白銀の猫耳を寒さでピコピコと震わせながら、懐のキララちゃんをあたたかそうに抱きしめている。

結晶族の少年ルカも、メガネの奥の青い瞳を鋭く光らせ、その結晶の右腕で周囲の魔力密度を冷静に測っていた。


「おいおい、ダ・ヴィンチ! 偽物の中にこそ、本物の職人の目が光る掘り出し物が眠っているもんさ!」


そう言って、虫眼鏡をパチパチと光らせながら、山積みの古びた機械部品を熱心に漁っていたのは、下町の時計職人であるトトじいさんだった。

じいさんは孫のトト(小)と一緒に、自作のからくり時計に使うための『伝説の職人が鍛えたという幸運の歯車』を探して、朝からこのバザールを這いずり回っているらしい。


「おじいちゃん、これじゃない? すごく変な形をしてる!」


トト(小)が小さな指で指し示したのは、黒い煤に塗れた、一見するとただの錆びた鉄くずの歯車だった。

だが、トトじいさんが虫眼鏡を近づけ、俺が固有スキル【画家パレット・マスター】のレンズをそこにフォーカスさせた瞬間、そのゴミのような鉄くずの奥底から、信じられないほど精密で、あたたかい黄金色の【魔力の補助線レイアウト】が、美しく視覚化されたのだ。


「ひゃはは! こいつは驚いた! じいさん、大アタリだ! 本物の古代の精密ギミックだぜ!!」


「おお、これだ! これこそ我が時計店を百年にわたって守るためのコア部品になるな!」


トトじいさんは大喜びで、露店の商人に数枚の銅貨を叩きつけ、その歯車を大事そうに古びた革の袋へと仕舞い込んだ。

だが、その幸せな色彩のカンヴァスを切り裂くように、バザールの人混みの向こうから、ドタバタという騒々しい足音と共に、小さな影たちが飛び出してきた。


「ダ・ヴィンチ先生! 大変だ、助けて!」


息を切らせて俺のヨレヨレのシャツの裾を掴んできたのは、下町の子供たちで結成された『小さな探偵団』のサブリーダー、ニナちゃんだった。彼女の後ろには、涙目で鼻水を垂らした子供たちが怯えた様子で立ち尽くしている。


「ひゃはは、どうしたんだいニナちゃん。おじさんのパレットは今、新しいインクが買えなくて真っ白けだけど、君たちの小さな探し物の依頼なら、いつでも特等席で受けてあげるさ。」


「あのね、さっき広場の裏の路地裏で、迷子になった子犬のルルを探していたの。そしたら、黒い仮面をつけた怪しい大人の商人が、トトのおじいちゃんが買ったのと同じ、黄金に光る歯車の図面をたくさん持って、不気味な魔法陣を描いていたの! 私たち、見つかっちゃってルルの首輪についていた『幸運の鈴』を奪われちゃったんだ!」


ニナちゃんの言葉を聞いた瞬間、ルカの結晶の右腕が、ピキィンと硬度を増して鋭い輝線を放った。


「先生、ただの子供の悪戯ではありません。僕の結晶解析スキャンが、広場の北側、古代排水路の入り口から、今しがた急激に膨れ上がった『不自然な魔力の密度の歪み』を捉えました。奴ら、ジョヴァンニ翁の事件の裏にいた『鏡の国の残響』の残党です。トト翁の持つ歯車と、子供たちの鈴を集めて、この冬至のバザール全体を混沌のインクで塗り潰す気です!」


「な、何だって!? 私たちの下町のバザールを汚す悪党は、このフランチェスカが絶対に許しません!」


眠りから覚めたお嬢さんが、白銀の剣の柄を強く握り締め、猫耳をキッと逆立てた。


「ひゃははは! 面白い構図になってきたじゃないかい! 小さな探偵団の諸君、ルルの鈴とバザールの平和は、おじさんたちのパレットが必ず綺麗に描き直してあげるさ! 行くぞ、排水路の闇の中へ!」


俺たちは子供たちをマルコ店長に預け、怪しい黒い霧が噴出し始めた地下へと続く階段を、一界に駆け下りていったのさ。…たぶん………




## 第十二話:『冬至のバザールと消えた幸運の歯車』

### 中編:小さな探偵団の隠密デッサン、迷子の子犬と影の追跡劇

広場の時計塔の鐘が、お昼の十二時を知らせる重い音をローマの冬空に響かせた。


「いい、みんな。今日のミッションは、お肉屋さんの裏でいなくなっちゃった、まだ生まれたばかりのちっちゃな子犬のルルを見つけることだよ。ルルは寒がりだから、きっとこの大魔導バザールのどこか、あたたかいお日様が当たるところか、美味しそうな匂いがする荷車の陰に隠れているはずなんだ!」


リンゴの木箱の事務机から飛び出して、仕立て屋のおじいちゃんに作ってもらった大きすぎる灰色のマントの裾をキリッと repair して、小さな仲間たちに指示を出しているのは、物静かな少女**【ミア】**だ。今日の彼女は、小さな探偵団の臨時のリーダーだった。


彼女の後ろには、パン屋の末っ子である食いしん坊の少年**【トト(小)】**――ではなく、今日はそのお友達である仕立て屋の娘**【ニナちゃん】**と、下町の元気な子供たち二人が、寒さで丸い両頬を真っ赤に染めながら、コクコクと真剣な顔で頷いていた。(パン屋のトト小は、今日は時計職人のおじいちゃんのお手伝いで、バザールの反対側へ掘り出し物の歯車を探しに行ってしまっているから、この依頼には参加していないのさ)。

「うん! ルルはニナが呼ぶと、いつもキャンキャンって可愛い声で走ってくるの。首輪には、おじいちゃんがつけてくれた『幸運の金色の鈴』がついているから、走るとチリンチリンって綺麗な音がするんだ。」


ニナちゃんは、寒さでかじかむ小さな手を胸の前できゅっと握りしめた。


「よし、それじゃあ捜査開始! トト(小)がいれば匂いで一発なんだけど、今日はおじいちゃんのお買い物に付き合ってるからね。僕たちの『目と耳』の補助線だけで、ルルの気配の輪郭を捕まえるんだ。みんな、ミアのレイアウトに遅れずについてきて!」


ミアはマントを深く被り直すと、まるで陽炎のように、大人の足元がせわしなく行き交うバザールの人混みの影へと、音もなくその小さな身体を滑り込ませた。

子供たちの目線から見る冬至の蚤の市は、まるで巨大な怪物の体内のような、圧倒的なパースペクティブの世界だった。

見上げるほど大きな大人の外套の裾が、バサバサと冷たい風を巻き起こし、露店の上には、見たこともない紫色の火花を散らす魔導具や、不気味に蠢く怪しいガラクタの山が、これでもかと極彩色に発光して並んでいる。大人の売り声や、怪しげな魔術の呪文の詠唱がノイズのように四方から降ってくる中、ミアとニナちゃんたち四人の小さな探偵団は、手と手をしっかりと繋ぎ合いながら、大人の死角となる「荷車の隙間」や「テントの裏側の狭い隙間」だけを、ネズミのように器用にすり抜けていった。


「チリン」


バザールの北側の角、普段は下町の住民も近寄らない、古代排水路の地上入り口へと続く暗い大路地裏の奥から、微かに、しかし確かに冷たい空気の振動に乗って、ニナちゃんの大事な鈴の音が聞こえた。


「あ、今の音、ルルだよ! ルルの鈴の音!」


ニナちゃんがパッと丸い目を輝かせて走り出そうとしたが、ミアが素早くその小さな口を手で押さえ、レンガの壁の影へと全員を引き込んだ。

「ニナちゃん、静かに。あそこの空気の色、おかしい。お日様の光が当たっているのに、まるで夜のインクをこぼしたみたいに、真っ黒い霧が地面を這っているよ」

ミアの鋭い観察デッサンが、路地裏の異常な構図を捉えていた。


四人の子供たちが壁の陰からそっと片目を覗かせると、そこには、バザールの賑やかさとは完全に隔離された、おぞましい暗黒のレイアウトが広がっていた。

路地裏の中央、古代排水路の赤錆びた鉄格子の扉の前で、全身を夜の闇のような漆黒の長いマントで覆い、顔には不気味な「鏡の破片」を散りばめた仮面をつけた怪しい大人の商人――『鏡の国の残響』の残党が、冷徹な手つきで地面に怪しげな魔法陣を描いていた。


その大人の男の手元には、時計職人のトトじいさんが探しているものと全く同じ、不気味な黄金の光を放つ『古代の歯車の図面』が何枚も広げられており、男が呪文を唱えるたびに、図面から黒い冷気の魔力が、飛び散ったインクのように周囲のレンガを凍り付かせていく。

そして、その魔法陣の真ん中には、小さな籠の中に閉じ込められ、寒さでガタガタと震えている、白いふわふわの小さな子犬――ルルの姿があった。ルルの首輪についていたはずの『幸運の金色の鈴』は、すでに男の汚い指先によって無残に引きちぎられ、魔法陣の魔力を増幅するための「触媒」として、どす黒い液体の中にドボリと浸けられていたのだ。


「ククク素晴らしい。この冬至の昼、バザールに集まる無数の魔力ガラクタの共鳴と、時計職人が手に入れるはずの『コアの歯車』の波動そしてこの純粋な子供の鈴の音を反転させれば、古代排水路の底に眠る魔液獣の完全体を一界に呼び覚ます、最高の暗黒のパレットが完成する!」


黒い仮面の男が、下品な、しかし骨まで凍りつくような冷たい笑い声を響かせた。


「ルル! 返して、ニナのルルを返してっ!」

ニナちゃんは、大好きな子犬が酷い目に遭っているのを見て、恐怖よりも先に大粒の涙をその目に溢れさせ、思わず壁の影から一歩外へと踏み出してしまった。


その瞬間、子供たちの足元にあった凍りついた木切れが、パキリ、と高い音を立てて折れた。

「――誰だ。私の美しいデッサンに、余計な線を入れようとするドブネズミは」

黒い仮面の男の鋭い視線が、一瞬にして子供たちの隠れていた壁の陰へと向けられた。

男の仮面に嵌め込まれた鏡の破片が、キィィィンと不気味な紫色の光を放ち、路地裏の黒い霧が、まるで生き物のようにうねりを上げて子供たちの足元へと襲いかかってきた!


「見つかっちゃった! みんな、走って! 大通りの、ダ・ヴィンチ先生のところへ逃げるんだよ!」


ミアが叫ぶのと同時に、四人の子供たちは一斉に反転し、今来た暗い路地裏の迷宮へと向かって、短い足を必死に動かして全力で駆け出した。

「ククク逃がすか。私の計画の絵素インクとして、お前たちのその未完成な生命力も、一界にその骨ごと吸い尽くしてやろう!」

背後から、大人の恐ろしい足音が、ドタバタ、ドタバタと、凄まじい地鳴りのようなパースペクティブで追いかけてくる。男が手をかざすたびに、路地裏の左右のレンガの壁から、鋭い氷の牙がバリバリと音を立てて突き出し、子供たちの灰色のマントの裾をかすめていった。


「ひ、ひえええっ! 怖いよぉ!」

「ニナちゃん、下を見ちゃダメ! まっすぐ前だけを見て走るのさ!」


ミアはニナちゃんの小さな手をきつく握り締め、大人の大きな歩幅では絶対に曲がりきれない、下町の「幅わずか五十センチの極細のゴミ箱の隙間」へと、身体を斜めにして滑り込んだ。

背後で、ドガァァァン!と、曲がりきれなかった黒い外套の男がゴミ箱に激突し、最悪に生臭い腐った野菜のハラワタの山の中に、頭から突っ込む音が響いた。


「ぶ、ぶほっ!? 汚い、このガキどもめ、絶対に捕まえて骨にしてやるぅぅぅッ!!」


悪党の無様な悲鳴が遠ざかる隙に、ミアとニナちゃんたち小さな探偵団は、凍りついた路地裏を必死に駆け抜け、ついに太陽の光が眩しく輝く、ダ・ヴィンチ先生とおじいちゃんたちがいる大魔導バザールの表広場へと、涙目で飛び出したのだ。


「ダ・ヴィンチ先生ーーーッ! 助けてぇぇぇッ!!」

ニナちゃんが叫びながら、出店の前でヨレヨレのシャツのポケットを空っぽにして突っ立っていた、俺の胸元へと一直線に飛び込んできたのさ。





## 第十二話:『冬至のバザールと消えた幸運の歯車』

### 後編:白銀の一閃、古代排水路の決戦と小さな探偵団のハッピーエンド


「ひゃははは! お嬢さん、ルカ! 構図は完全に整ったさ! 子供たちの涙をインク代わりにするような悪党のパレットは、おじさんたちの極彩色の筆で木っ端微塵に塗り替えてやるのが下町のルールさ!」


俺はニナちゃんの小さな頭を優しく撫で、空っぽのポケットから錆びた虫眼鏡を引き抜くと、黒い仮面の男が逃げ込んだ古代排水路の地下へと続く、凍りついた鉄格子の扉を蹴り開けた。

暗く湿った地下世界には、寒さで結晶化した不気味な黒い魔力霧が立ち込め、四方のレンガ壁をガチガチの漆黒の氷で覆い尽くしていた。その最奥、古代の巨大な排水円形広場で、黒い仮面の男――『鏡の国の残響』の残党が、奪った金色の鈴を魔法陣の中心でさらに冒涜的に穢していた。


「ククク追ってきたか、貧乏探偵ども! だがもう遅い! この冬至の魔力と子供の鈴の反転デッサンにより、古代排水路の底に眠る怨嗟の魔液獣フルイド・スケルトンは完全なる支配者体ロードへと進化するのだ!」


男が呪文を唱えた瞬間、排水路のドブ川から、体長8メートルを超える漆黒の粘液質の巨体が、咆哮を上げて這い上がってきた。その胴体の中には、これまでに喰らってきた無数の骨が不気味に浮かび上がり、真っ赤な眼球がギラギラと発光している。

「ひどい密度の歪みです。先生、前回のオリーブ農園の時と同じ、流動的な密度の障壁です。僕の結晶のスキャンでも、一撃で芯を捉えるのは容易ではありません」

ルカが結晶の右腕をパキパキと鳴らし、眼鏡の奥の青い瞳を鋭く光らせる。


「いいや、ルカ。今日のキャンバスには、しばらく病院のベッドで大人しくしていなきゃならなかった、下町最強の『白銀の絵の具』が最高の発色でスタンバイしているのさ!」


俺がヨレヨレのシャツの袖をバサッと翻した瞬間、俺の背後から、白銀の髪を冬の地下風に激しくなびかせた少女――**【フランチェスカ】**ちゃんが、弾丸のような速度で前方へと躍り出た!


「――お待たせしました、悪党さん! 私をしばらく寝込んでいさせた影の組織の残党なら、この白銀の剣のサビにして、一界に綺麗に repair してあげます!」


お嬢さんの頭頂部にある銀色の猫耳が、怒りでキッと天を突くように逆立ち、その手にある白銀の剣が、地下の暗闇を真っ二つに切り裂くような鋭い軌跡レイアウトを描いた。

魔液獣がその巨大な液体の触手を、鞭のような速度でお嬢さんの華奢な肉体に向けて振り下ろしてくる。


「ルカ、お嬢さんの足元の硬度を最大に固定しなさい! おじさんは魔物のパースペクティブをグニャリと捻じ曲げてやるぜ!」

「了解! ――物質解析、床面絶対固定クリスタル・アンカー!」


ルカが結晶の右腕を床に突き立て、滑りやすい氷の床を一瞬にして「滑り止め度三百パーセントの硬度」へと書き換える。


「【画技・遠近法の歪み(パースペクティブ・バニッシュ)】!!」


俺が空中に向けて筆を鋭く一閃すると、空間の距離感がグニャリと歪み、魔獣の触手の必殺の一撃は、お嬢さんの鼻先わずか数ミリの空間を虚しく通り抜けて床の氷を爆砕した。


「――そこですッ! 技名・白銀一閃・縦一文字シルバー・スラッシュ・ノヴァッ!!」


フランチェスカちゃんは、ルカが固定してくれた完璧な足場から、身体をバネのようにしならせて一直線に跳躍した。彼女の放った驚異的な近接の剣撃は、魔獣の液体の腕を、衝撃を吸収されるよりも速い「超音速のデッサン」で、一界に綺麗に叩き切ったのだ!


飛び散る漆黒の魔力液。だが、魔獣はすぐにその傷口をドロドロと再構築しようとする。

「ひゃははは! 乾かない絵の具には、おじさんの特製の乾燥剤を混ぜてやるのが一番さ!」

俺は指の間に挟んだ三本のインク瓶を空中に投げ、パレットナイフで一界に叩き割った。

「【パレット・シフト・捕色反転コンプリメンタリー・インク】!!」

極彩色の補色インクが魔獣の傷口に注入された瞬間、ドロドロだった液体の肉体が、一瞬にしてカチカチの「乾ききったアクリル絵の具の塊」へと強制的に変質し、その弾力性を完全に消失した。

「ルカ君、トドメを合わせますよ!」


「はい、フランチェスカさん! ――最大硬度、結晶破砕クリスタル・バースト!」


ルカが放った結晶の波動と、フランチェスカちゃんが両手できつく握り締めた白銀の剣の紅蓮のエンチャント(おじさんが指先から放った赤の熱素さ!)が、魔獣の胸のコアへと完璧なパースペクティブで大直撃した!


パリィィィィンッ!!!!


巨大な鏡が木っ端微塵に砕け散るような美しい破壊音が排水路に響き渡り、支配者体の魔獣は、ただの乾いた絵の具の破片となって四方八方へと派手に飛び散り、消滅した。


「ば、バカなァァァッ!? 私の最高傑作の魔液獣が一瞬で砕け散っただと!?」

黒い仮面の男が驚愕に目を丸くして腰を抜かした。


「――ぶ、ぶひゃああ案あああッ!?!?(仮面の男の、この世のものとは思えない潰れたカエルのような悲鳴)」

魔獣が消滅した反動の爆風と、時間を巻き戻されたことで発生した『数千リットル分の最悪に生臭い腐った下水泥水の濁流』が、大爆発を起こして男の顔面に正面から大直撃したのだ!

男は自慢の仮面を汚物でドロドロに染め上げ、高級な外套をズタズタに引き裂かれながら、排水路の床の上を無様にバウンドし、広場に積まれていた【最悪に臭い家畜の糞尿の堆肥の山】のなかに、頭から真っ逆さまに突っ込んでいった。


「ふ、ふぎゃあ! 汚い、臭い、助けてくれぇ!」と、鼻水を垂らしながら涙目で気絶した男の姿は、完璧な「ざまぁみろ」の構図そのものだった。


「にゃあお!」と、お嬢さんの胸元から飛び出したキララちゃんが、男の落とした籠の鍵を器用に引きちぎり、中から白いふわふわの子犬――ルルが元気よく飛び出してきた。ルルの首輪には、ルカが結晶の腕で綺麗に修復してくれた『幸運の金色の鈴』が、再びチリンチリンと綺麗な音を立てて輝いていた。


古代排水路から地上へと戻ると、そこには、トトじいさんの買った黄金の歯車を組み込んで、カチカチと美しく時を刻み始めた広場の時計塔のレイアウトが、冬至の優しい光に包まれてどこまでも広がっていた。

「ダ・ヴィンチ先生! フランチェスカのお姉ちゃん! ルルを助けてくれてありがとう!」

ニナちゃんたち小さな探偵団の子供たちが、涙を流して笑顔で俺たちの周りに集まり、ルルを抱きしめながら盛大な拍手を送ってくれたのさ。


「ひゃははは! おじさんたちのパレットにかかれば、どんなに暗い冬至の夜だって、最高のハッピーエンドの色彩で塗り替えてみせるさ!」


俺はワイングラス代わりにトトじいさんがくれた焼き立てのブルスケッタを片手に、下町の仲間たちの幸せそうな笑顔を見つめながら、不敵に、そして温かく微笑んだ。どんなに不完全な異能であっても、俺たちの手によって描かれる未来の補助線は、これからもこのローマの街を、どこまでも真っ直ぐに、美しく満たしていくのさ。

みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?

少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。

励みになりますので、☆☆☆☆☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。

これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

パラレルワールドで魔法と多種族の住む下町ローマで起こる事件を魔法とスキルで解決していく物語です。時代背景は読者の描く時代に当てはめてくださいね。

よろしくお願いします。

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