## 第十一話:『黄金の雫に染まる聖夜と、病室に残された冷たきダイアモンド』後編
二話目の投稿です。
誤字脱字が多くなると思いますが、よろしくお願いいたします。
途中で、脱線することもあると思いますが、ゆっくりと見守ってください。
作品の内容が前後することが多々あると思いますが、大目に見て頂ければ、うれしく存じます。
新作始めます。探偵物です。
当初から作品を見ていただき本当にありがとうございます。
大変励みになっております。
これからもよろしくお願いします。
では、参ります!!
## 第十一話:『黄金の雫に染まる聖夜と、病室に残された冷たきダイアモンド』
### 中編:結晶と色彩の二重奏、地下貯蔵庫の決戦と爆発する画家の真髄
漆黒の氷でコーティングされた巨大なオリーブ貯蔵庫の広場に、怨嗟の魔液獣の耳を裂くような咆哮が響き渡った。
男爵の裏で糸を引いていた強欲商人ヴァレリオの醜悪な笑い声が天井の鍾乳石に反響する中、三頭の魔獣がそのドロドロとした黒い粘液質の巨体を波打たせ、俺とルカの立っている退路を完全に塞ぐようにして、地を這う速度で迫り来る。
「ケケケッ! 貧乏探偵とガキ一匹でこの暗黒の魔液獣に勝てると思ったか! 骨まで凍りつき、その肉体を組織のインクの肥やしにするがいい!」
ヴァレリオが指に嵌めた安物の宝石をギラギラと光らせながら、手にした黒いインク瓶を最後の巨大な原酒樽の中へと注ぎ込もうとする。
「ルカ、行くぞ! お前さんの綺麗な結晶のデッサンと、おじさんのヨレヨレのシャツに隠された極彩色のインク、そのすべてをこのカンヴァスの上に叩きつけてやるのよ!」
俺はヨレヨレの白いシャツの袖を乱暴に引きちぎり、錆びた虫眼鏡を左手に、そして右手には油絵の具のシミだらけの筆を握り直した。
固有スキル【画家】が、脳細胞を強烈に突き刺す偏頭痛の激痛と共に発動する。
俺の視界の中で、氷結した地下貯蔵庫の退屈なモノクロームの世界が剥ぎ取られ、魔物の肉体の流動性や、空間にかかる重力のパースペクティブが、無数の鮮烈な【カラーパス(色の線)】となって強制的に再構成されていく。
「ダ・ヴィンチ先生、敵の急先鋒が来ます! 密度、最高値! ――物質解析、固定完了!」
ルカが眼鏡の位置を静かに直すと同時に、彼の神秘的な青い結晶の右腕が、まるで太陽の光を浴びたダイアモンドのように眩いばかりの輝線を放ち始めた。
一頭目の魔獣が、その巨大な三本指の液体の爪を、鞭のような速度でお嬢さんのいないこの絶望の戦場へと振り下ろしてきた。
その爪がルカの頭上に到達する直前、結晶の少年は驚異的な重心移動で真横へとスライドし、その結晶の右拳を、魔獣の胴体のまさに中心点へと向けて力任せに突き刺したのだ!
キィィィィンッ!という、水晶が共鳴するような鋭い金属音が響き渡り、魔物の肉体の内側で結晶の硬度の波動が爆発する。
しかし、魔獣の肉体はドロドロとした液状絵の具そのもの。ルカの放った凄まじい衝撃波は、その流動的な肉体の波の中にすべて吸収され、逆に魔物の漆黒の粘液が、彼の美しい結晶の腕を絡め取ろうと蛇のように這い上がってきた。
「くっ、やはり僕の直線的なデッサンだけでは、この流動的な密度の壁を突き破れない……!」
「ひゃははは! だから言ったじゃないかい、ルカ! 流動的なカンヴァスには、それに流動的なインクを重ねて、その本質を内側から反転させてやるのが、おじさんの画家の戦い方なのさ!」
俺はルカの真後ろから影のように飛び出し、魔物の粘液が結晶の腕を完全に飲み込む直前、手にした筆の先端をその漆黒の肉体へと直接突き立てた。
「【パレット・シフト・捕色反転】!!」
俺の指先から放たれたのは、炎でも油でもない、魔物の漆黒の怨念とは完全に正反対の波長を持つ【極彩色の蛍光グリーンとマゼンタの二重螺旋の魔力線】だった!
色彩理論における「補色」のインクが魔獣の体内に注入された瞬間、ドロドロとした流動性を保っていた漆黒の肉体が、まるで化学反応を起こしたかのように、一瞬にしてカチカチの「乾ききったアクリル絵の具の塊」へと強制的に変質し、その弾力性を完全に消失した。
「ルカ、今さね! 構図の芯を叩き割りなさい!」
「了解! ――最大硬度、結晶破砕!!」
ルカが結晶の右拳にすべての魔力を集中させ、硬直した魔獣の胴体を内側から力任せに殴りつけた。
パリィィィィンッ!!!!という、巨大な鏡が木っ端微塵に砕け散るような美しい破壊音が地下貯蔵庫に響き渡り、一頭目の魔獣は、その体内に浮かんでいた無数の人間の白骨もろとも、ただの乾いた絵の具の破片となって四方八方へと派手に飛び散った。
「な、何だと!? 私の可愛い魔液獣が一瞬で砕け散っただと!?」
ヴァレリオが驚愕に細い目を丸くするが、残る二頭の魔獣が、仲間の消滅に怒り狂ってその巨大な質量をさらに膨張させ、今度は俺たちの頭上から、押し潰さんばかりの勢いで同時に襲いかかってきた。
頭上の古い天井から、振動で漆黒の鍾乳石の刃が雨のように降り注ぐ。
「先生、上です! 避けてください!」
ルカが結晶の腕を盾のように掲げ、降り注ぐ氷の刃をガキィィン!と鋭く弾き飛ばすが、二頭の魔獣の触手が、死角から俺のヨレヨレのシャツの胸元に向けて一直線に突き出される。
「ひゃははは! 近距離のデッサンなら、おじさんだって若い頃にドブ板通りの喧嘩で散々キャンバスを汚してきたからねぇ!」
俺は錆びた虫眼鏡を眼前に掲げ、魔獣の触手が迫るわずか数センチの距離で、その軌道のパースペクティブを限界まで測定した。
「【新技・遠近法の歪み(パースペクティブ・バニッシュ)】!!」
俺が空中に向けて筆を鋭く一閃すると、空間の距離感が一瞬にしてグニャリと捻じ曲がった。
魔獣の触手は、俺の胸元を確実に貫いたはずだったが、歪められた遠近法のせいで、俺の身体のわずか数ミリ横の空間を虚しく通り抜け、背後の巨大な石柱へと大直撃したのだ。
ズガァァァンッ!と石柱が粉砕される隙を突き、俺は魔獣の懐へと文字通り泥泥に這いつくばるようにして滑り込み、その巨大な足元に向けて、左手の手鏡の破片を突き立てた。
「【パレット・シフト・超高粘度油膜】!!」
俺の指先から、今度は滑るためではなく、あらゆる物質を地面へと完全に接着させる【漆黒のコールタール状の超高粘度油膜】が一界にぶちまけられた。
突進の慣性を維持していた二頭目の魔獣は、その巨体を氷の床に完全に固定され、前のめりになってズザザザザッ!と無残に前のめりに転倒し、身動きが取れなくなった。
「ルカ、二頭目の足場は固めたさね! だけど、三頭目がそっちの死角からお前さんのメガネのレイアウトを狙っているぜ!」
「見えています、先生! ――密度変化、流動結晶!」
ルカは襲いかかる三頭目の魔獣の冷気衝撃波に対し、結晶の右腕の密度をあえて一瞬にしてゼロにまで低下させ、触手の攻撃を自らの腕を透過させることで完全に無効化した。
そして、魔物の触手が彼の身体を通り抜けた瞬間、ルカはその腕の硬度を一界に【ダイアモンド以上の絶対硬度】へと最大化させ、魔獣の腕の内側から、その肉体を強引に凝固させて引きちぎったのだ!
飛び散る漆黒の魔力液。
「ケケケッ! チョコマカと小細工を! ならばこれならどうだ!」
ヴァレリオが最後の原酒樽の中にインクを注ぎ込むと、貯蔵庫の奥深くから、これまでのものとは次元の違う、体長10メートルを超える超巨大な【怨嗟の魔液獣・支配者体】が、咆哮を上げてその姿を現した。
その巨体が動くだけで、地下貯蔵庫の壁が一面にバリバリと音を立てて凍りつき、凄まじい絶対零度のプレッシャーが、おじさんのシャツの襟元をガタガタと震わせる。
「先生、あの巨体は僕たちの今の連携でも、一撃で砕き切ることは不可能です。密度の総量が違いすぎる……!」
ルカの額から初めて冷や汗が流れ落ち、彼の結晶の右腕も、過度な魔力消費によってかすかにパキパキと不穏な亀裂の音を立て始めていた。
「ひゃははは! 最高の構図じゃないかい、ルカ! キャンバスが大きければ大きいほど、それをひっくり返した時の快感の色彩は、下町中に美しく響き渡るってものさ!」
俺は割れんばかりの偏頭痛の痛みに耐えかねて、顔中から血の混ざった汗を流しながらも、そのヨレヨレのシャツの袖で乱暴に顔を拭い、不敵な笑みをヴァレリオに向けて浮かべた。
「ルカ、お前さんの結晶の全出力を、おじさんのこの筆の先端に一界に集中させなさい。お前さんの『硬度のデッサン』と、おじさんの『赤の熱素』を混ぜ合わせたら、一体どんな極彩色の奇跡が描けるか、あの強欲な大人に見せてやろうじゃないかい!」
「――わかりました、先生。僕の結晶のすべてを、あなたのパレットに預けます!」
ルカが俺の筆の柄を、その結晶の右手できつく握り締めた。
水晶の輝線と、画家の極彩色の魔力線が、暗い地下貯蔵庫の中で今、一本の巨大な光の補助線となって融け合い、超巨大な魔獣の心臓部へと向けてその銃口を向けたのさね。
地下貯蔵庫の冷気は、さらにその深度を増していた。超巨大な怨嗟の魔液獣・支配者体が発する絶対零度の波動は、石造りの床をバリバリと凍らせ、俺たちの吐く息を一瞬で白い結晶へと変えていく。
「ケケケッ! 往生際が悪いぞ、ネズミども! その程度の小細工、この圧倒的な質量の前には無力だと知れィ!」
強欲商人ヴァレリオが原酒樽の上で狂ったように踊る中、支配者体はその身の丈ほどもある液体の巨腕を振り上げた。その動きは、先ほどの完熟体とは比較にならないほど速く、重い。
「ルカ、ここからはおじさんのカンヴァスも『二枚目』に突入さね! 筆の穂先をケチっている暇はねえんだよぉ!」
俺は激しい偏頭痛に両目から血の涙を滲ませながら、右手の筆を口にくわえ、油絵の具のシミだらけのシャツの懐から、今度は錆びたパレットナイフと、十数本の特製インク瓶を両手の指の間に挟み込んだ。
固有スキル【画家】の出力のノイズを、脳髄の力技で強引にねじ伏せる。視界を覆うカラーパスが、さらに緻密に、さらに暴力的なまでの色彩となって俺の脳内レイアウトを書き換えていく。
「ダ・ヴィンチ先生、敵の右拳、質量比率三百パーセント! ――物質解析、追従します!」
ルカが眼鏡の奥の青い瞳を輝かせ、俺の真横へと躍り出た。
ドォォォォンッ!!!!
支配者体の巨腕が叩きつけられ、俺たちが一瞬前までいた氷の床が粉々に爆砕した。飛び散る氷塊の雨の中を、俺はルカと共に前方にむけて同時に突頭を敢行した。
「まずは遠距離の邪魔な雑多な構図を、おじさんのパレットから一界に消去してやろうじゃないかい!」
俺は指の間に挟んだ三本のインク瓶を、空中に向けて同時に投げ上げ、パレットナイフの鋭利な刃先で空中で一界に叩き割った!
「【パレット・シフト・群青の速霧】!!」
爆散した群青色のインクが、支配者体の顔面を覆う無数の眼球へと向かって、ホーミングする散弾の絵の具となって激しく降り注いだ。シュウウウウッ!という激しい化学変化の音が響き、魔獣の視覚を司る魔力核が、群青の顔料によって完全に遮断される。
「ギィィィィャァァァァッ!!」
視界を奪われ狂暴に暴れ狂う魔獣の巨腕が、予測不能な軌道で俺の頭上へと迫る。
「ひゃははは! 視線がブレたら、近距離のパースペクティブなんてただの飾りさね!」
俺は口にくわえた筆を右手に持ち替え、迫り来る巨腕のわずか数センチの隙間に飛び込み、その液体の肉体に直接左手のパレットナイフを突き立てた。
「【新技・地色補正・黄土の重圧】!!」
パレットナイフから注入されたのは、大地の重みを模した超高密度の黄土色の魔力インク。魔獣の左腕の一部分だけが、まるで数十トンの鉄塊へと変貌したかのように、重力のレイアウトを無視して地面へと激しく引きずり落とされた。
「ルカ、バランスの崩れた右膝の芯が丸見えだぜぇ!!」
「捉えました! ――最大硬度、結晶穿孔!」
ルカは俺が作り出した一瞬の隙を逃さず、地面を蹴って弾丸のように跳躍した。彼の右腕の青い結晶が、今度は鋭利な円錐形の「杭」の形状へとその密度を急激に変形させていく。
ズガァァァンッ!!!!
ルカの結晶の杭が、支配者体の巨大な右膝の関節部へと完璧なパースペクティブで突き刺さった。硬度の波動が内側から炸裂し、魔獣の巨大な下半身の流動性が一界に崩壊、巨体が地響きを立ててその場に膝を屈した。
「な、何だとォ!? バカな、私の最高傑作の支配者体が……!」
ヴァレリオの顔が恐怖で引きつる。しかし、支配者体はまだ死んでいなかった。体内に蓄えられた数千リットルの暗黒の魔液が、傷口から不気味にうねりながら噴出し、ルカの結晶の脚を絡め取ろうと、網の目のように床を這い回り始めた。
「先生、敵の魔力供給源は背後の原酒樽です! あれを破壊しない限り、この液体の肉体は何度でも無限に再構築されます!」
「ひゃははは! ならばその濁った原画ごと、おじさんの最高の炎の絵の具で、跡形もなく焼き尽くして、真っ白なキャンバスに戻してやろうじゃないかい!」
俺はヨレヨレのシャツの胸元を大きくはだけ、懐の奥深くに隠されていた、我が事務所の最高禁忌のインク瓶――【真紅の熱素・極限地獄】を引き抜いた。
これまで使っていた簡易的な炎のインクとは次元が違う、世界を灰に帰すための【画家の真髄】の筆跡。
「ルカ、お前さんの結晶の腕で、おじさんのこの熱素の導火線を、真っ直ぐに原酒樽まで通す『光の補助線』を描きなさい!」
「――了解! 物質解析、全出力開放! 結晶光線・三連反響!!」
ルカがその結晶の右腕を天にかざすと、彼の全身から放たれた青い水晶の輝線が、地下貯蔵庫の氷の壁と手鏡の破片に乱反射し、魔獣の巨体の隙間を縫うようにして、背後の原酒樽へと一直線に向かう「絶対的な光の光路」を空間に定着させた。
「ひゃははは! 最高のレイアウトだ! ――お嬢さん、お前さんの眠りを覚ますための新油は、おじさんたちが必ず持ち帰ってみせるさね!!」
俺は右手の筆の穂先に、真紅の熱素インクをこれでもかと浸し、ルカが描き出した青い結晶の光路へと向けて、渾身の力でその腕を突き出した。
「【画技・極彩炎上・地獄の晩餐(インフェルノ・マゼンタ・エグゼキューション)】!!」
俺の筆先から放たれたのは、ただの炎ではない。ルカの結晶の光路と同調し、光速で空間を駆け抜ける【超高熱のプラズマ状の真紅の魔力熱線】だった!
ドッパァァァァァン!!!!
熱線は支配者体の胸部を綺麗に貫通し、その背後にあったヴァレリオの原酒樽の山へと大直撃した。
強奪されたオリーブ新油と、影の組織の黒いインク、そしておじさんの極限の炎が混ざり合い、地下貯蔵庫の空間全体が、まるで爆発したパレットのように、鮮烈な真紅と黄緑色の爆炎によって一界に飲み込まれていったのさね。
## 第十一話:『黄金の雫に染まる聖夜と、病室に残された冷たきダイアモンド』
### 後編:祝福の蛍光緑、強欲商人の失脚と白銀の目覚め
ドッパァァァァァン!!!!
地下貯蔵庫の空間全体を焼き尽くすかのような真紅の爆炎が、ついに強欲商人ヴァレリオが積み上げていた「呪いのオリーブ新油」の原酒樽を跡形もなく包み込んだ。
「ぶ、ぶひゃあああああッ!?!?」
超巨大な怨嗟の魔液獣・支配者体が、おじさんとルカの合体技によって魔力核を完全に消滅させられ、ただの生臭い黒いインクのヘドロとなって四方八方へと大爆発を起こしたのだ。
それだけではない。時間を巻き戻されたかのように反転した爆風のレイアウトは、原酒樽の真上で勝ち誇っていたヴァレリオの顔面に、時速百キロを超える速度で正面から直撃した!
「ぎゃあッ!? 熱い、熱い、臭い、目が、目が開かないぃぃぃッ!!」
ヴァレリオは、自らがローマを支配するために影の組織から譲り受けた『呪いの結晶インク』と、ジョヴァンニ翁の農園から強奪したはずの『最悪に熱せられてドロドロになった超高熱のオリーブ新油のハラワタ(堆肥の濁流)』を全身に浴びまくり、仕立ての良い絹の上着を真っ黒な汚物で染め上げながら、床の上を無様に転がり回った。
「ガハハハ! ざまぁみやがれ、この強欲ドブネズミめ! 天罰が下ったんだよ!」
圧搾所の入り口から、生き返った村人たちを引き連れたマルコ店長が、その分厚い太ももを叩きながら、お腹がちぎれんばかりの大爆発のような笑い声を響かせた。
ヴァレリオは顔中を堆肥液とオリーブのカスでドロドロに染め上げ、鼻水を垂らしながら涙目でその場に転がり、「ふ、ふぎゃあ……! 汚い、臭い、もう許してくれぇ……!」と、自らの小便と泥水で高級な衣服を汚しながら、完全に正気を失って気絶してしまった。下町の平和を脅かそうとした悪党が、自らの強欲のインクの中で完全なる破滅を迎えた、完璧なデッサンの瞬間だった。
「――先生、やりましたね。物質解析、敵の魔力残香の完全消滅を確認しました」
ルカは眼鏡の位置を静かに直すと、その神秘的な青い結晶の右腕をそっと下ろした。過度な魔力消費でパキパキと鳴っていた彼の腕は、悪党の失脚と共に、静かなダイアモンドの輝きを取り戻していた。
「ひゃははは! 最高の構図じゃないかい、ルカ! さあ、悪党はお巡りさんの檻の中へお引越しだ。おじさんたちは、この農園に残された本物の『黄金の雫』を持って、お嬢さんの病院へと全速力で馬車を走らせなきゃいけないのさね!」
俺はヨレヨレのシャツの裾で顔の煤を乱暴に拭き取り、ジョヴァンニ翁の隠し倉庫から奇跡的に無傷で回収された、正真正銘の【鮮烈な蛍光の黄緑色】をした新オリーブ油の小瓶を、しっかりと懐の奥へと滑り込ませた。
ローマの下町、ドクター・パオロの小さな診療所。
夕焼けの優しい光が差し込む病室の扉を、俺とルカは勢いよく押し開けた。
ベッドの上のフランチェスカちゃんは、まだ白銀の猫耳を力なく寝かせたまま、静かな眠りの中にいた。足元で身を縮めていた愛猫キララちゃんが「にゃあ……」と悲しげに鳴き、ウララも青い静電気を消したまま、主人の手を温めようとしていた。
「お嬢さん、待たせたねぇ。おじさんのパレットは不完全に戻っちまったけど、お前さんのための特効薬の色彩は、最高の助手と一緒にしっかりデッサンしてきたようだね!」
俺は懐から取り出した蛍光黄緑色の新油を、パオロ先生に手渡した。
医師がその瑞々しい黄金の雫を、フランチェスカちゃんの唇へとそっと流し込む。
数秒の、張り詰めたような静寂。
その瞬間、彼女の胸元の奥深くで凍りついていた『呪いの結晶インク』の黒い線が、新油のピリッとした瑞々しい魔力によって、見る見るうちに中和され、霧消していくのがおじさんの【画家】の目にはっきりと見えた!
「……う、ん…………」
小さく、愛らしい鈴の音が転がるような声が、ベッドの上から漏れ出た。
力なく寝かされていた白銀の猫耳が、まるで春の訪れを察知した若葉のように、ピコピコ、と健気に動きを再開し、そして――。
「……ダ、ダヴィンチさん……? ルカ君……? 私、一体……」
その美しい白銀の瞳が、ゆっくりと開かれたのだ!
「にゃあおーーーッ!」と、キララちゃんが歓喜の声を上げて彼女の胸元に飛び込み、ウララも「ゴロゴロ」と激しい青い静電気の火花をパチパチと散らせて、彼女の目覚めを祝福した。
「お嬢さんーーーッ!!」俺は割れんばかりの偏頭痛も忘れて、ヨレヨレのシャツを振り乱しながら、涙目で彼女の手を握りしめた。「ひゃははは! 心配させやがって、この大バカ者め! 最高のハッピーエンドのデッサンだね!」
「もう! 起きたばかりなんですから、そんな大声で笑わないでください!」
フランチェスカちゃんは、まだ少し赤みの差した両頬を膨らませながらも、いつもの元気いっぱいの笑顔を俺たちに向けてくれた。完璧な英雄ではないけれど、仲間と共に未来を描き続ける、我が探偵事務所の最高のパレットが、ここに完全復活したのだった。
みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?
少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。
励みになりますので、☆☆☆☆☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。
これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
パラレルワールドで魔法と多種族の住む下町ローマで起こる事件を魔法とスキルで解決していく物語です。時代背景は読者の描く時代に当てはめてくださいね。
よろしくお願いします。




