エジプト ギザのピラミッド 世界遺産編 1章
二話目の投稿です。
誤字脱字が多くなると思いますが、よろしくお願いいたします。
途中で、脱線することもあると思いますが、ゆっくりと見守ってください。
作品の内容が前後することが多々あると思いますが、大目に見て頂ければ、うれしく存じます。
新作始めます。探偵物です。
世界遺産編エジプトギザのピラミッド一話開幕です
よろしくお願いします
では、参ります!!
## 第一話:緑の揺り籠と「原初の炉」
遥か十万年前のギザは、後世の人間が知るような乾いた死の砂漠ではなかった。
そこは、地平線の彼方まで瑞々しい深緑が波打つ、生命の爆発に満ちた大湿帯であり、大密林であった。天空を衝くようにそびえ立つ三つの巨大なピラミッドは、現在の砂色の巨石ではなく、鏡面のように磨き上げられた純白の結晶体と、その頂に冠された黄金の「ベンベン・ストーン。」によって、太陽の光を何倍にも増幅して地上に照り返していた。その輝きは、神々がこの地に満たした至高の秩序の象徴である。
当時の生活の基盤は、この三つのピラミッド -すなわち「原初の炉」から溢れ出る、目に見えぬ濃密な魔力の恩恵の上に成り立っていた。
朝、太陽が東の地平線から顔を出すと同時に、中央の最も巨大なピラミッドの頂から、波紋のような不可視の波動が放たれる。それが大気を震わせると、森の木々は一斉に葉を広げて甘い蜜を滴らせ、家畜である動物たちは柔らかな鳴き声を上げて目覚めるのだ。
神々の支配下にある世界では、人間や他種族の役割は明確に決まっていた。
「汝ら、生きて我が庭を豊かにせよ。」
それが、神々が下した唯一にして絶対の法であった。
人間たちの集落は、ピラミッドの裾野に広がる大河の支流沿いに作られていた。家々は泥をこねたレンガではなく、神々が与えた「決して枯れない巨木の生きた枝」を編み込んで作られており、壁からは常に清涼な空気が生み出されていた。
人間たちの朝は、神々への祈りではなく、純粋な「収穫」から始まる。
「お〜い、早く来〜い! 今朝のウシたちの乳は、もう魔力で黄金色に輝いているぞ!。」
若き人間の狩人・アシャが、まだ朝霧の残る放牧地で声を張り上げた。彼らの前には、現代のそれよりも二回りも大きく、背中に美しい一角を持つ「神聖牛」の群れが憩っている。神々が食料として創造したこの動物たちは、人間に対して一切の警戒心を持たない。なぜなら、彼らには「恐怖」という感情が最初から植え付けられていないからだ。
アシャがそっと手を触れると、一角牛は嬉しそうに喉を鳴らす。専用の器を角の下に添えると、触れるだけで上質な乳が溢れ出てくる。この世界の動物たちは、殺さずともその肉体の一部や、溢れる生命力を分けることで、人間たちの飢えを完全に満たすよう設計されていた。
一方、集落の端では、人とは異なる姿を持つ「他種族」たちが、それぞれの特性を活かして働いていた。
背中に半透明の美しい羽を持つ「天空族」たちは、地上数十メートルの高さを優雅に舞いながら、大気中の魔力の乱れを観測し、ピラミッドへ向けて調律の歌を歌っている。彼らの歌声が響く限り、ギザの地に嵐が吹き荒れることはなく、常に完璧な気候が保たれる。
また、岩石のような強固な皮膚と四本の腕を持つ「大地族」たちは、神々が設計した水路の拡張や、巨大な果樹の剪定を軽々とこなしている。
「アシャ、そっちの収穫は終わったか?。」
声をかけてきたのは、大地族の若者・ガラクだった。彼の低い声は地面を心地よく揺らす。
「ああ、ガラク。今朝も素晴らしい量だ。これなら神々への『捧げ物』を引いても、僕たちの分は十分に余るよ。」
「それは重畳。だが、油断するなよ。昨晩、北の森の境界線で『魔物』の咆哮が聞こえた。神々が放たれた新たなる試練、紫鬣の猪だ。あれの肉は美味だが、宿る魔力が荒い。狩るなら気を引き締めろと、長老が言っていたぞ。」
神々が創造したもう一つの食料 ―「魔物」。
それは優しき動物たちとは異なり、あえて被造物たちに「闘争」と「進化」を促すために配置された、獰猛なる生命だった。魔物の肉には高濃度の魔力が宿り、それを食すことで、人間や他種族の肉体はより強靭に、より長命へと変化していくのだ。それは神々が仕組んだ、緩やかなる生態系の向上プログラムであった。
正午近くなると、天空から一条の光が降り注ぐ。神々の一柱が、ピラミッドのテラスにその姿を優雅に舞い降りる。
その姿は、人間のようでありながら、頭部は美しい隼の形をしており、全身が青い燐光に包まれている。神がただそこに立つだけで、周囲の全種族は自然と膝をつき、深い敬意と、本能的な安堵感に満たされた。
神の目は、地上の調和をすべて見通している。神が静かに手を振ると、集落の中心にある石の台座に、見たこともない大粒の極彩色のみずみずしい果実が山ほど現れた。神々からの「報酬」であった。
支配とは、抑圧ではなかった。
この時代、神々の支配とは「完璧な飼育」であり、全種族は神の手のひらの上で、一切の飢えと病から隔離された、至高の楽園の住人たち(家畜)であったのだ。
## 第二話:大密林の狩猟と魔力の糧
ギザの西側に広がる「神鳴りの森。」は、常に濃厚な緑の香気と、生命の放つ熱気に満ちていた。
シダ植物が巨大化したような巨木が何十メートルも立ち並び、その間を、神々が造り出した極彩色の鳥たちが、美しい尾羽を引いて飛び交っている。だが、その楽園の奥深くは、人間や他種族にとっての「試練の場」でもあった。
「足跡を見つけたぞ。やはり、ガラクの言っていた『紫鬣の猪』だ。かなりデカい。」
アシャは巨木の根元に屈み込み、湿った土に深く刻まれた、三趾の足跡を指でなぞった。足跡の底には、微かに紫色の発光する粘液が残っている。これこそが、体内に過剰な魔力を宿した「魔物」の証拠だった。
アシャの背後には、大地族のガラクと、天空族の少女・リィアが控えている。神々が造り出した異なる種族たちは、こうして共同で狩りを行うことで、互いの絆を深め、かつ神々から与えられた生存能力を試されていた。
「気をつけて、アシャ。上空から見たけれど、あの個体は周囲の植物の魔力を吸い上げて、自分の皮膚を硬化させているわ。普通の鉄の矢じゃ弾かれるわ。」
リィアが細い羽を震わせながら、鈴を転がすような声で警告する。彼女の目は、数キロ先にある魔力の収束点を正確に捉えていた。
「ならば、俺の出番だな。」
ガラクが四本の太い腕を打ち鳴らし、不敵に笑う。彼の手に握られているのは、ピラミッドの炉から払い下げられた「神の金属」で作られた大斧だ。
三人は息を殺し、草むらをかき分けて進んだ。
やがて、開けた泥濘のなかに、その巨体はいた。体長は優に五メートルを超え、背中からは燃え盛る炎のような紫色のたてがみが突き出ている。猪が息を吸い込むたびに、周囲の草花が萎れ、その生命力が猪の体内へと吸い込まれていくのが見えた。神々が仕組んだ「捕食と循環」の創造物。それが魔物であった。
「いくぞ!!」
ガラクが地面を蹴った。大地族の巨体が突撃すると、地面が激しく揺れる。
気配を察した猪が猛然と振り返り、突進してきた。二つの巨体が正面から衝突し、凄まじい衝撃波が森の木々を揺らす。ガラクの二本の腕が猪の巨大な牙を受け止め、残る二本の腕で大斧を振り下ろした。
ギィン! と金属音が響き、猪の紫のたてがみが激しく火花を散らす。
「リィア、風を!!」
アシャが叫ぶと同時に、上空のリィアが美しい歌声を響かせた。彼女の歌は、大気中の魔力を編み上げ、目に見えぬ刃となって猪の目を晦ます。
「グルゥァァァ!」
視界を奪われた猪が狂ったように暴れる。その一瞬の隙を、アシャは見逃さなかった。
アシャは背負った弓を引き絞った。番えられた矢の先端には、神々のピラミッドから分け与えられた「光の結晶」が括り付けられている。
「神の光よ、貫け!。」
放たれた矢は、一条のレーザーのような軌跡を描き、猪の眉間、魔力の核が存在する場所に正確に突き刺さった。
一瞬の静寂の後、猪の巨体から紫色の光が爆発するように吹き出し、やがてその場にドサリと崩れ落ちた。
「やったか……???!」
アシャが駆け寄ると、猪の死体からは、すでに狂暴な殺気が消え去り、代わりに食欲をそそる芳醇な香りが漂い始めていた。神々が造り出した魔物は、命を落とした瞬間に、その肉質が最も美味に、かつ他種族が吸収しやすい状態へと「変質」するようにプログラムされているのだ。
ガラクが大斧で手際よく肉を切り分けていく。切り口からは、血の代わりに、まるで果汁のような澄んだ魔力の液が溢れていた。
「見てみろ、この極上の霜降り。今夜の宴は、集落全員が腰を抜かすぞ。」
「ええ、これを食べれば、私の羽のツヤももっと良くなるわ。神々の恵みに感謝ね。」
リィアが嬉しそうに微笑む。
彼らは神々が用意した「野生の冷蔵庫。」から、必要な分だけの恩恵を受け取る。そこには、乱獲も、飢餓への恐怖も存在しない。あるのは、正当な闘争の末に得られる、極上の生命の歓喜だけであった。
## 第三話:黄金の黄昏と神々の祝祭
狩りを終えた一行が戻る頃、ギザの空は息をのむほど美しい黄金の黄昏に染まっていた。
太陽の沈む位置にある第三のピラミッドが、赤銅色の光を放ち、大気を心地よい温かさで包み込んでいる。夜になっても、この世界が凍えることはない。神々が配置した熱の結界が、常に住人たちを守っているからだ。
集落の中央広場では、すでに大掛かりな祝祭の準備が進んでいた。
巨大な生きた木のテーブルには、アシャたちが持ち帰った紫鬣の猪その肉が、大地族の熾火によってじっくりと焼き上げられている。肉から滴る脂が火に落ちるたび、紫色の小さな火花が散り、周囲に甘く濃厚な香りが広がっていく。
その他にも、人間たちが育てた一角牛の極上チーズ、天空族が雲の上から集めてきたという純度の高い露の水、そして果樹園から収穫された、一口かじれば全身の血が沸き立つような果実がところ狭し並んでいた。
「さあ、神々の寛大なる配給と、我らの健き狩人に乾杯を!」
集落の長老である老人が、黄金の杯を掲げた。彼の年齢はすでに二百歳を超えているが、神々の肉と乳を食し続けているため、その肉体は若者のように瑞々しい。
「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」
人間、天空族、大地族、そして水辺からやってきた鱗を持つ水精族たちが、一斉に杯を打ち鳴らした。
宴が始まると、それぞれの種族が自慢の技を披露し始める。天空族は空中を舞いながら光の粒子を振り撒き、大地族は地面を太鼓のように叩いて重低音の演奏を行う。人間たちはそれらに合わせて、神々を讃える清らかな歌を歌った。
宴の最中、アシャは焼き上がった猪の肉を口に運んだ。
噛み締めた瞬間、濃厚な旨味と共に、ピリピリとした心地よい刺激 ==魔力が体内に流れ込んでくるのが分かった。胸の奥が熱くなり、視界が急激にクリアになる。腕の筋肉が一回り強くなったかのような錯覚さえ覚える。
「すごいなァ……やっぱり魔物の肉は、普通の動物の肉とは格が違うな。」
「そうだろ、そうだろう、アシャ!」
ガラクが豪快に笑いながら、彼の肩を何度も叩いた。
「俺たちの先祖は、これを食べ続けることで、神々に近い肉体を手に入れているんだ。いつかは俺たちも、あのピラミッドの上で神々と対等に話せるようになるのかもな。」
その言葉に、アシャはふと、昼間に見た隼の頭部を持つ神の姿を思い出す。
神々は圧倒的で、慈悲深く、そして完璧だ。彼らが与えてくれるこの生活に、何一つ不満はない。しかし、あまりにも完璧に管理されたこの世界で、自分たちは一体何なのだろうか。神々が造り出した、ただの愛らしい「ペット」のような存在ではないのだろうか???。
「……ガラク、お前はあのピラミッドの中を見たことがあるか?。」
「バカ言え、あそこは神々の聖域だぞ。入れば一瞬で光の塵にされるって、長老から教わらなかったか?。」
「そうだけどさ。僕たちを造ったのが神々なら、僕たちの心の中にある『もっと知りたい』っていうこの気持ちも、神々が植え付けたものなのかなぁ〜。」
アシャの呟きは、天空族の賑やかな歌声にかき消されていった。
夜が更けるにつれ、三つのピラミッドの頂からは、今度は夜空の星々を繋ぐような青白い光の線が伸び、天空に巨大な光の網を形成した。それは宇宙からの有害な光線を遮断し、地上を永遠の平穏に保つための防壁だった。
満天の星々と、神々の光に守られた緑のギザ。
住人たちは皆、満ち足りた腹を抱え、幸福な眠りにつこうとしていた。これが、神々が支配していた時代の、終わることのないように思われた日常の風景であった。
## 第四話:水辺の調和と「神の法」
翌朝、アシャは集落を流れる大河「原初のナイル」の岸辺へと散歩に来ていた。
現代のナイル川とは異なり、その水は水晶のように透き通り、川底で蠢く魔力を持った魚たちの鱗が、七色に発光しているのが手に取るように見えた。
川幅は数キロメートルにも及び、対岸には巨大な蓮の花が咲き乱れ、そこから放たれる香気が大気全体を優しく包み込んでいる。
川辺では、水精族たちが、神々から与えられた水流の制御の任務で忙しく働いていた。。彼らは下半身が美しい魚のようであり、上半身は滑らかな青い皮膚を持つ種族だ。
彼らが細い指先を水面に浸して歌うと、川の流れは生き物のように形を変え、人間たちの農地や大地族の作業場へと、必要な分だけ正確に分岐していく。
「おはよう、アシャ。今日も神々の水は清らかだよ。」
水面から顔を出したのは、水精族の少女・ネフティだった。彼女の髪は流れる水そのもので出来ており、動くたびに水滴がキラキラと輝く。
「おはよう、ネフティ。本当に綺麗だね。神々がこの川を造り出してから、一度も濁ったことがないなんて、信じられないよ。」
「当然さ。ピラミッドの地下には、すべての水を浄化し、生命の力を与える『母なる泉』があるって、神の使徒が言っていたもの。私たちはただ、その美しさを地上に広げる手伝いをしているだけさ。」
ネフティはそう言って、川底から一つの大きな貝殻を拾い上げた。貝殻の中には、真珠の代わりに、淡く光る青い液体が溜まっている。
「これ、持っていって。昨日、第二のピラミッドから流れてきた『神の涙』よ。体力が回復するの。」
「ありがとう。昨日の狩りの疲れが、これで完全に吹き飛ぶよ。」
アシャはそれを受け取り、一口飲んだ。ミントのように爽やかな風味が鼻を抜け、全身の細胞が瞬時に覚醒するのが分かった。
この世界には、病気という概念がほとんど存在しなかった。万が一、肉体が傷ついたり、体調を崩したりしても、周囲にある水や植物、あるいは神々が定期的に撒く光の粉に触れるだけで、あらゆる不調はたちどころに癒える。
神々は、自らの造り出した庭園の部品たちが、不具合を起こすことを望まない。すべては徹底されたメンテナンスのもとにあった。
昼時、再びピラミッドの方向から、重厚な鐘のような音が響き渡った。
それは「神の対話。」の合図だった。各集落の代表や、若者たちがピラミッドの広場へと集まる時間だ。アシャもガラク、リィア、そして岸辺に上がったネフティと共に、第一のピラミッドの広大な前庭へと向かった。
前庭に集まった数千の生命の前に、黄金の衣を纏った、今度は羊の頭部を持つ大いなる神が姿を現した。神の手には、生命の象徴である「アンク。」の杖が握られている。
神が杖を地面に突くと、心地よい波動が全員の脳裏に直接響いた。
「我が子らよ、健やかに育っているか。」
その声には、拒絶を許さない絶対の威厳と、すべてを包み込む深い慈愛が同居していた。
「私たちは、あなた様の御心のままに、満ち足りております。」
長老たちが一斉に平伏する。アシャたち若者も、その圧倒的な存在感を前に、深く頭を垂れた。
「よろしい。東の森に、新たなる動物『白銀の鹿』を放った。その角は汝らの住居をより強固にするだろう。また、西の谷には、魔力高き『紅蓮のトカゲ』を配置した。あれは手強いが、挑む者にはさらなる力を授けよう。調和を乱さず、貪らず、我が庭を豊かにせよ。」
神の言葉は、この世界の「取扱説明書。」そのものだった。
神々は彼らに、生きるためのすべてを与え、同時にその行動の範囲を完璧に指定していた。
神の姿が光の中に消えた後、人々は再び歓声を上げ、新たな恵みを求めて動き出した。
しかし、アシャは静かに輝く白いピラミッドを見上げながら、胸の中に生じた、小さく、しかし決して消えない「違和感。」を覚えていた。
この至上の楽園は、神々にとっての「最高の箱庭。」であり、自分たちはその中で生かされている、精巧な人形に過ぎないのではないか。
周囲の種族たちが無邪気に神の恩恵を喜ぶ中、アシャの目には、青々と茂る大密林が、見えない巨大な「檻。」のようにも見え始めていたのだ。まだ砂漠になる遥か前、緑のギザが最も輝いていた時代の、それが一つの真実であった。
みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?
少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。
励みになりますので、☆☆☆☆☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。
これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
パラレルワールドで魔法と多種族の住む下町ローマで起こる事件を魔法とスキルで解決していく物語です。時代背景は読者の描く時代に当てはめてくださいね。
パラレルワールドで今度は、エジプトギザです
よろしくお願いします。




