表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

第6話 最適解

「グギィィィィッツ!!!!」


 雄叫びを上げながら突進してくるゴブリン。


「――――!!」


 片や銃を構える茂宮しげみや

 銃声、五発。


「ギギギギギッツ!!!!」


 ――外した。


 ちょこまかと動き回る小鬼に、射撃武器は相性が悪い。


「くそったれがっ――!!」


 茂宮は再度銃口を向けるが、狙いが定まらない。

 右へ左へと上体がぶれ、完全に遊ばれている。


「やれやれだな」


 俺は前傾し、地面の土を握り込む。

 そして迫り来るゴブリンの顔面に、それを思いっきりぶちまけた。


「――――ギャアアアアアアアッツ!!!!」


 顔面を押さえて叫ぶゴブリン。

 古今東西、砂による目潰しは最もお手軽な攪乱かくらんだ。


 ゴブリンは前後不覚に陥った。


「今だ、茂宮」


「――――!? おうよっ!!」


 銃を構える茂宮。


「くたばりやがれっ!!」


 銃声、一発――

 今度はしっかり命中した。


「グッ……ギッ……ギィッ……!」


 ゴブリンは額から血を吹き出し、どさりと倒れる。

 茂宮は肩で息をしながら、震える声を漏らした。


「ふぅーっ……!! ふぅーっ……!!」


「うまい事仕留しとめたな。やるじゃないか、茂宮」


「ああ、やったよ……! やってやったよ、畜生がっ!」


 モンスターも頭部は柔らかい。

 ゴブリン程度なら鉛玉なまりだまでも貫通する。


「こんな初っ端で六発も使っちまった……! もう銃はほとんど役に立たねぇ。あとはお前のスキルだけが頼りだぞ、御剣!!」


「……スキル? 何を言ってるんだ?」


「何って……スキルだよ!! お前が持ってる、ス・キ・ル!! 一人でダンジョンに潜るような真似してんだ! 相当レアな能力を持ってんだろ!? なあ!?」


 必死の形相で詰め寄る茂宮に、一言。


「俺は無能力者だぞ?」


「………………はぁ?」


 返答までに、たっぷり間があった。

 今日一番の呆け顔だ。


「はああああああああっつ!!!!!」


 茂宮は顎が外れそうなほど大口を開け、絶叫する。


「無能力者って、嘘だろっ!! スキルも無いのに、何でこんな事してんだよ、お前えぇっ……!」


 目元に涙まで浮かべている。


「こりゃあ、マジで俺、今日で死んだかもな……」


 怒ったり泣いたり、忙しい男だ。


「次モンスターと鉢合はちあわせたら、茂宮は後ろに下がってろ。俺が引き受ける」


「ああ分かってんよ!! 畜生っ……! せめて簡単にはくたばってくれんなよっ、探索者さんよぉっ!!」


 ◆


 嘆く茂宮をなだめつつ、俺たちは密林を進む。

 歩き始めて数分、最初の群れに遭遇した。


「隠れろ、茂宮」


「っつ――――!!」


 近くの茂みに身を潜め、前を見る。


「グギッ、グギッ、グギィッ!!」


 ゴブリン三匹。


「……どうするよ、御剣? やり過ごすか?」


 俺は首を横に振る。

 やり過ごすなんて、もっての外。


 折角のえさだ。

 利用しなければ勿体ない。


 ウエストポーチから小瓶を取り出し、蓋を開ける。

 同時に短刀を握り込む。


 液体を刃に垂らす。

 薄緑のコーティングが日光を受けて怪しく輝いた。


 俺は小石を拾い、ゴブリンの向こう側へ放る。


 コツン――


 乾いた音。

 奴らの意識が一瞬、木々の中へ吸い寄せられる。


 僅かな隙。

 だが、俺には十分だ。


「――――はあッ!!」


 短刀が肉を裂く感触が、手のひらに伝わる。


「グギャアアアアッツ――――!!」


 背中を切り裂かれたゴブリンが倒れ込む。


「グギィ……?」


 残り二匹が異変に気付くが、

 奴らが飛び掛かるより先に、俺の刃が胴をぐ。


「ガアアアアッツ――――!!」


 二匹は血を流し、その場に崩れた。


 決着はあっけない。


「終わったぞ。もう出て来ても大丈夫だ、茂宮」


 茂みからよろよろと茂宮が現れる。

 俺とゴブリンを見比べ、ぽつり。


「すっ、すげぇ…… ははっ、流石は探索者ってとこか……! すげぇぞ、御剣っ!!」


 目を輝かせる茂宮。

 今日一日で喜怒哀楽コンプリートだな。


「………………グギィッ」


「ん?」


 地面でもぞもぞと動く緑の体躯たいく


「おいっ……! 御剣!!」


 最初に切り付けたゴブリンが起き上がる。

 残り二匹も続けて目を覚ました。


「御剣ぃっ!! まだ死んでねぇぞ!! 早く止めをさせっ!!!!」


「グギィ、グギィィィッ……!!!!」


 涎を垂らし、わらうゴブリン共。


 俺を馬鹿にしているのだろうか?


『止めを刺しそこなったぞ、このバカ探索者が!』

『覚悟出来てんだろうなぁ!?』

『血祭りにあげてやんよぉ!!』


 そんなさげすみが聞こえてきそうだ。


 俺は短刀を下ろし、指を差す。


「気持ちわりぃ嗤い顔を浮かべる前に、自分の体をよく見てみたらどうだ? まぬけ」


 ゴブリン共が一斉に視線を下げる。


「グッ、ギッ、ギッ……?」


 胸元を凝視する。


 赤くただれ、肥大化した肉。

 血管が隆起し、歪に脈打つ。

 皮膚が破裂し、鮮血がどろりと流れ落ちる。


「……グッ、ガッ、ギャアアアアアアアアアアアッツ!!!!!!!!」


 胸を掻きむしり、次々と倒れ伏す。

 断末魔を上げながら、血の泡を吹いた。


 どれだけ屈強なモンスターでも、鍛えられない部位。


 それは内臓だ。


 故に、奴らを殺す最適解は――


 毒。


「これが一番効率よく、お前ら(モンスター)を殺せるんだよなあ……! クックックック……!」


 刀身からしたたる毒を宙に散らしながら。

 俺は死体を前に舌なめずりをしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ