第4話 渋谷ダンジョン
人混みをかき分け、路地裏へ入る。
まず目に飛び込んできたのは、ガラの悪い三人組だった。
その奥には、青い靄。
渋谷で発生したブルーゲートだ。
近くには公安の二人組もいる。思った以上に大所帯だ。
まずは道を塞ぐ三人に声を掛ける。
「そこ、どいてくれないか?」
「……あ?」
三人がゆらりとこちらを向く。
中心のデカい男はロングソード。
左右の取り巻きはモーニングスターとハルバード。
どれもギルドで出回っている標準装備。
探索者であることは明白だ。
ギルド認定の武器は職質されないので便利だが、性能はお察し。
「んだてめぇ……? いきなり出て来て何の用だ?」
「別にアンタらに用はない。俺の目的は、そこのダンジョンだ」
顎でゲートを示すと、三人の視線がそちらへ向く。
公安の男が睨みを利かせてきた。
「……お前さん、ギルドのもんか? 所属はどこだ?」
どうやら勘違いしているらしい。
俺を“ギルド派遣の探索者”だと思っているのだろう。
「所属はない。俺はソロだ」
「……んだよっ、またはぐれか! 今日はハイエナ祭りだな、クソが!」
舌打ちされた。虫の居所が悪いらしい。
こういう手合いは相手にしないのが一番だ。
用件だけ伝えて、中に入る。
「俺は公安のホームページを見て来た。渋谷区ダンジョン、ブルーゲート。発生から三か月。もう時間がないんだろ?」
「……ああ、そうだよ! で、何だ!? おめぇも金が目的か!?」
「俺がこのダンジョンを攻略する。報酬はいらん」
「いくら欲しいんだ? 三百万か? 四百か?………………って、は……?」
公安がぽかんと口を開ける。
周囲の連中も間抜け面だ。
その隙に、俺はサッとダンジョンへ身を投じた。
◆
「い、行っちゃった……」
最初に声を漏らしたのは、茂宮の隣にいた公安の男。
茂宮は銃を構え、ゲートを睨む。
「吉田! 外を見張っとけ! 三十分経っても俺から連絡がなかったら特隊を呼べ!」
「なっ……茂宮さん、一緒に行く気ですか!? 無理ですって! ブルーゲートですよ!? 装備も無しに……死にますって!」
「バカ野郎! 一人で行かせられるか! 危なくなったら首根っこ掴んで引き返す! それでいい!」
「ちょ、待ってください茂宮さんっ――!」
◆
ゲートを潜ると、目の前には密林地帯が広がっていた。
ダンジョンには大きく二つの型がある。
一つ目は、広大な面積を持つオープンワールド型。
森や砂漠、洞窟など自然の風景がベースで、モンスターは独自の生態系を築いている。
最も戦闘力の高い個体が【ダンジョンボス】として君臨し、そいつを倒すのが目的だ。
二つ目は、複数階層からなる無機質な踏破型。
トラップや物理法則無視の障害が多く、各層には守護者がいる。
攻略に時間がかかり、難易度も高い。
今回のブルーゲートは前者。
ブルーならオープンワールド型が多い。統計でも出ている。
「ととっ、あぶねぇ!」
俺の後から公安の一人が飛び出してきた。
「おい、なんだこりゃ……!? 緑一色じゃねぇか……」
拳銃を構え、周囲を見回す。
「なんだ、アンタ付いてきたのか?」
「あっ! 居やがったなてめぇ! 一人で潜るなんて正気か!? それに報酬はいらねぇって、お前――」
公安が喋っている最中だった。
「なっ……!!」
拳銃をだらりと下げ、絶句する。
「げ……ゲートが……閉じやがった!!」
――――用語一覧――――
【ダンジョンボス】
ダンジョンを支配する親玉のモンスター。ダンジョンで最も戦闘力を有する個体が、ボスの座に選ばれる。ダンジョンボスは他のモンスターと異なり、ボス特有の刻印が体に刻まれており、一目でそれと分かるようになっている。戦闘力とはすなわち、ダンジョンに対する『影響度』と同義であり、単純な力の優劣だけで決まる訳ではない。




