第四章 (3) 再会は突然に……
次の日は夏と間違うほど暑かった…
午前9時半、テント近くの木陰で皆が集まっていた。というか俺達が凛と輝を呼び出していた。もちろん仁の姿は無い。
「何の用や、ユウ、ミカ?」
「お前らは、仁を見てどう思った?」
俺と実夏は、昨日の話を行動に移そうとしていた。
「羨ましかった。夢が叶うなんて…」
「そうじゃない。質問が悪かった。言い直す。」
「「…?」」
凛と輝が首をかしげている。
「お前らは仁を見て、これからどうしようと思った?」
「これからも頑張ろうと…」
「これまで頑張っていたのか?」
「当たり前やろ!」「コクコクッ!」
「本当に?」
「…どういう意味や?」
かなり怒ってるようだ。声にドスが利いている。
「サボってたんじゃねぇかって意味だ。居心地の良いここに居るために。」
「そんなことっ…」
「無かったのか?」
「……」
流石の凛も黙る。
ここに居る人に言ってはいけない言葉。それを、俺は迷いなく言い放った。
まぁ、ニートの俺が言えた事じゃないんだが…
「責めるつもりはないの。私達にその資格はないし。」
全くもってその通りだ。
「私達は2人にも夢を叶えて欲しいだけ。」
「俺達にできる事があれば言って欲しい。協力は惜しまん。」
「なんでいきなり…」
「約束したからな…」
コイツらとの出会いを思い出しながら、凛に言う。
「飯とテントはもらった。だからお前らが暇じゃなくなるように、夢を叶える手伝いをしてやる!」
「………っ!!ユウ、よく覚えてたな?」
「いや覚えてるよ。1週間くらいしか経ってないもん。」
「アンタが1週間前の事を覚えてるなんて…」
「そこまで馬鹿じゃねぇよ!!」
「「えっ、マジで?」」
「オイ、凛はともかく何故に実夏までも…。なぁ輝?」
「………プイッ」
「目をそらすなーっ!」
皆からの評価は『俺=馬鹿』のようだ。
………話がそれすぎたな。
「話を戻そう。」
「「あっ逃げた。」」
「お前らうるせぇよ!!今は本 題それじゃねぇだろ!!」
「「…はあ〜」」
気にしないことにする。
「出来ることって言っても大した事できないから…」
「所詮ユウやしな。生きるのに精一杯やろ。」
否定はできない
「何でそれが夢になったかを聞かせてくれないか?」
「孤児院におった女の子にようメイクしとったから、以上終わり。」
「はやっ!!」
もう少し話すの渋ると思っていたから拍子抜けした。
「輝にも今初めて喋った。」
「その割にはあっさりと喋ったな!」
「……凛、孤児院の名前は?」
輝が話に入ってきた。顔付きは真剣だ。
「確か数年前に潰れた…」
…ゴクリ
「マ○ラタウンやったかな?」
「「それは絶対違うと思う!!」」
相変わらずのポケ○ン好き。実夏も同時にツッコんでいた。
「やっぱり凛はあの時の…」
「「通じたっ!?」」
輝がハキハキ喋っているが、今はそれよりマサ○タウンだ。
「どういう意味や、テル?」
「榎本孤児院、通称○サラタウン。ポケモ○好きで、フ○老人を名乗る榎本さんが院長。」
色々と残念な人だ。
「いや、詳しい事は覚えてへんねん。」
「A棟〜C棟まであって私はC棟にいた。覚えてるよね、A棟のメイクさん?」
「じゃあテルがあの時の…」
「うん」
「何で声優を目指そうって思ったん?」
「面と向かって話すの苦手だから…。アニメを通してでも私の声を届けたかったの。凛は?」
「ウチは、メイクしとったら何時かアンタに会えると思てな。もっと一緒に楽しく過ごす。それがウチのホントの夢や。」
「楽しく過ごすって、何か小学生の頃の俺みたぐはっ!」
「過去についてのモヤモヤが、一気にのうなったわ。」
「私も」
「輝、ウチを役作りのための専属のメイクさんとして雇ってくれ。一緒に頑張ろう!」
「うんっ!」
その後また二人、ここを去っていった。
残るはあと二人。しかし、彼らの進む道はもう決まっていた。
カルタです。
とうとう森からホームレス達がいなくなりました。
遊と実夏が進む道とは……!?
次回、最終話です。お楽しみに〜!!




