表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様の剣と懲りない悪党  作者: すたりむ
六日目~七日目:悪党と燎原の魔王
97/140

七日目(8):悪神、目覚める

「……ふむ。

 脆弱な。この程度の敵相手にまともに戦うこともできんとはな」


 そいつが。

 目を開けて最初に言ったのは、そんな言葉だった。


「おい、ライ?」

「魔術師か。不快な。

 だがいまは生存を許す。そこの巨体の方が試し切りには良さそうだ」


 言ってそいつは、剣を構えて薄く笑った。

 次の瞬間、くわっ、と()は目を見開いた。


「って、人の身体でなにを……あぐっ」

「黙れ」


 不快げに、俺の口を使ってそいつは言った。


「もう起きたのか、馬鹿者め。おとなしく眠りについていれば、仲間が皆殺しに逢うのを見ずに済んだだろうに」

「バルメイス……なのか?」


 震える声で問うコゴネルに、そいつは薄く笑い。

 そして、剣を構えた。


「試し切りの相手に不足しない。よい寝覚めだ」


 ごぅ、と石像が右拳を射出する。

 だがそれを、そいつは剣の一振りで邪険に払い、それだけではじき返した。


「見た感じ、亜神の上位クラス程度か。悪くはないが――」


 言葉の途中で、バルメイスは剣を軽く振り、


「こういう技には、慣れておるまい?」


 とたん、ゴレムの右肩が爆ぜた。

 剣の先から伸びた見えない棒状のなにかが、ゴレムの肩を叩き潰したのだ。いや……


(まさか……イェルムンガルド外殻を、刃の形にして攻撃転用したのか!?)


 とんでもない器用さだった。円形のフィールドにしか展開できない俺とは、操作の精度が違う。

 これが――戦神バルメイス。

 スタージンが言葉を濁すようなろくでもない神だが、その力は本物だ。


「やはり脆弱だな! この程度ならば、わざわざ神威(カムイ)を用いるまでもないわ!」

「ま、待て!」


 コゴネルが慌てて言う。


「あれには倒し方があるんだ! 左肩の文字を壊してから倒さないと、大爆発して――」

「だから?」


 バルメイスは冷たく言い捨てた。


「たかが爆発であろう。その程度も防げない脆弱な命はそこで潰えればよい」

「……っ」

「さて、ではどう料理してやろうかな!」


 バルメイスはノリノリで剣を振るい、ゴレムを切り刻んでいく。

 その石の巨体は次第に、不気味に鳴動し、光を蓄えていた。いまにも爆発しそうである。

 このままだと全滅だ。だが、俺は指一本動かせない。

 気合いで意識を取り戻したはいいものの、さっき口を出せたのが奇跡のようだった。


(なにか、なにかできることはないか!? なにか……!)


 と、俺はそこで気づいた。

 いつのまにか、そろりそろりと俺の足を這い回っている、謎の生き物に。


「なに!? ぐっ、これは……!」

「コゴネル、いまです!」


 言葉と共にコゴネルはダッシュして、絡みつかれて動けなくなったバルメイスの肩を飛び越え、


「石よ、腐れ!」


 次の瞬間、ゴレムの身体から飛び出したパーツがコゴネルの脇腹に突き刺さった。


「が、はあああああっ!」

「馬鹿野郎、コゴネルおまえっ!」


 動かない身体でバグルルは叫んだが、コゴネルは倒れたところで叫び返した。


「いまだ、やれ、テン!」

「無論ですとも! 鋼鉄攻弾(カルバリン)、発射!」


 声とともに、ゴレムの左肩が爆ぜた。

 その瞬間、いまにも爆発しそうだったゴレムの身体の、鳴動が止まっていた。

 コゴネルの魔術で防御力が低下したところに弾丸を食らい、肩の神聖文字(ルーン)を吹き飛ばしたからだ。つまり、爆発の解除条件を満たしたのだろう。

 だが、バルメイスはそれを見て不快げに顔をしかめた。


「……興ざめな。やったのは貴様か、女」

「引きちぎられた程度では……竜祖イルルヤンカは、力を失いませんので。

 ずっと、最も役に立てるタイミングでの奇襲を狙っていました。それが、このタイミングだっただけです」


 コゴネルに合図を出したハルカが、しれっと言った。横にはテンがいて、その手に鋼鉄攻弾(カルバリン)を構えている。


(あいつら、安全圏に避難しろって言われたのに……)


 バルメイスはちっ、と舌打ちし、


「その行動、俺に対する侮辱と見なす!」


 ばぁん! と、身体にまとわりつく竜が四散し、宙に解けるように消えていく。

 バルメイスは憤怒に燃えながら剣を振り上げ、


「死ねい!」

「させない」

「なに!?」


 ばちん! と音がして、バルメイスの身体が大きく揺れ、二、三歩よろめいた。

 憎しみをたたえたバルメイスの目が見たものは、小さな魔女の姿。

 服はぶかぶかなTシャツ、その上にマント。すらりと伸びた素足。全体的に白めのシルエットだが、黒髪と無骨な眼帯が強めのアクセントを与えている。それなのに、存在感だけは妙に薄い。

 俺にとっては、とても見慣れた相手だ。


「サリ・ペスティ――見参」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ