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神様の剣と懲りない悪党  作者: すたりむ
六日目~七日目:悪党と燎原の魔王
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七日目(6):悪党、救援に入る

「クランって、あの隊商の!?」

「ああ。そもそもコゴネル、おまえが言ったんだぞ。クランは完全に信用していないって」

「そ、それはまあ、言ったけど……」

「俺も昨日までは特に疑ってなかったよ。でも昨日魔物に襲われた後に、さすがにおかしいなって思ったんだ。

 あのタイミングで俺が隊商に同行していることを知っている人間は、実はかなり限られてる。なにしろ、おまえら魔人たちには予定を告げる間すらなく出発したからな。神官たちと隊商の人間と、あとはごく少数の岩巨人たちだけだろう。

 だから内通で確実に相手に情報を伝えられるのは隊商の人間。さらに意図的に魔人たちとの意思疎通をカットしたと考えれば、その意思決定ができるのはクランだけだろ?」

「……確かに、筋は通るな」


 言ったのはバグルルだった。


「じゃああれか。岩巨人の戦争に俺たちが巻き込まれたのも、意図的か?」

「そこまではわからないよ。キスイのペンダントを横取りできちゃえばよかったのかもしれない。

 だけどたぶん、相手のメインプランはこの剣だったんだろうさ」

「その剣?」

「仮に俺がこの剣と出会わなかったとして。こんな貴重な剣を貸金庫に預けるでもなく、遠方へと運んでいく理由があるとすれば、それは商談が成立してたってことなんじゃないのか?

 その相手が妖術師だとすれば話はとても簡単になる。本来のプランは、おまえらがこのアジトの攻略にかかりきりになっている横で、堂々と先行した隊商がこっそり妖術師に剣を渡すことだったんだろ」

「それが、ライが剣を抜いたことで台無しになった。そういうことか?」


 コゴネルの言葉に、俺はうなずいた。


「ああ。俺はこの剣、念じただけで手元に呼び出せるからな。そのままだと売買できない。

 そもそも俺がこの剣をアクシデントで抜けちゃったこと、それ自体がなんかおかしいんだよ。想像するに、妖術師とやらのプランに合わせて、この剣は『抜ける一歩手前』まで呪いが解除されてたんじゃないか? その結果、なんやかんやあって俺が抜いちゃったんでプランが崩壊したわけだけど」

「完全にそれしかない気がしてきた……くそ、なんで見落としてた!」


 コゴネルはうめいた。

 俺も、昨日その考えに至ったときは思いつき程度だったのだが、そう考えると矛盾がひとつも出てこないのである。

 昨日、リッサが隊商について『上の人がもめてる』と言っていたが、あれはたぶんクランを始めとする『妖術師とつながっている』連中と、そうでない連中の間で意見の食い違いが生じて喧嘩になっていたのではなかろうか。それに巻き込まれるのはごめんだったので、俺は今日の予定を隊商には意図的に伏せて来ていた。


「やられたなぁ。敵が魔人だから、敵の情報収集手段も魔人か、もしくはなんらかの魔術的実体だろうと決めてかかっていた。俺たちの読み抜けだ」


 バグルルが、頭を掻きながら言った。


「あと、そういうわけだからこのアジトは最初から囮のつもりだったと思う。たぶん罠しかないし、みんなと合流したらとっとと撤退するのがいいんじゃないかな」

「だな。くそ、完全に失策だ。せめてゴレムに出会わないまま出られることを祈るばかりだが……」

「さ、探しましたぞ、皆様ー!」


 遠くから聞こえてきた声に、俺たちは顔を見合わせた。

 俺の剣とコゴネルの精霊灯があたりを照らす中、暗がりの中から簡易カンテラ片手に走ってきたのは、テンだった。


「テン! どうした?」


 尋ねるコゴネルと、さっと幻術破りを用意して本人確認を行うバグルル。このあたりの連携はさすがである。

 テンは切れた息をかろうじて整えると、


「さ、探しておったのです! いますぐ、いますぐ向かわないと大変なことに……!」

「……まさか」


 コゴネルの言葉に応えるように、テンが言った。


「巨大な石兵から攻撃されたのです! いま、ハルカがなんとかして時間を稼いでおりますが、長くは持ちません! 急いで!」

「ええい、やっぱりそう都合よくはいかないか!」


 コゴネルはうんざりした顔で、全員に向き直った。


「聞いた通りだ。走るぞ!」

「わかった!」「おうよ!」「さんかくー!」


 俺たちは駆け出した。



--------------------



 すぐに、その場所にはたどり着けた。

 洞窟の中でもひときわ大きな広間。そこで暴れていたのは、光を放つ巨大な石の怪物。

 そして、それにまとわりついて邪魔をする、虹色の帯のような不思議な生き物。


「あれは?」

「わからん。が、たぶんハルカの召喚獣だろう」

「皆様、こちらです。戦っている以上すぐには気づかれないでしょうが、ハルカと合流しましょう」


 声を潜めて俺たちは、ゴレムの視界に入らないように気をつけながら、テンに続いてこっそり移動した。

 果たして、壁際に寄りかかって、血まみれのハルカがいた。


「ハルカ、大丈夫か?」

「大丈夫とは言いかねますが、まあ、生きてます。

 ……センエイに倣って、ごまかして時間を稼ごうと試みたのですが。やはり慣れないことをするものではありませんね。結局、召喚を使わざるを得ませんでした」

「上出来だ。たぶんこのアジトは囮だ。逃げられるか?」

「残念ながら、すぐには無理です。足の骨が……」


 その瞬間、悲鳴のような声が響いた。


「なんだ!?」

「仕方ありません。とっさに呼べる高位召喚獣は竜祖イルルヤンカだけでしたが、かの竜は元々あまり戦闘に向いたものではありませんので。

 そう遠くなく、振り払われるかと」

「くそ、踏んだり蹴ったりか!」

「コゴネル、さっきの話だけど」

「なんだ!?」

「いや、正しい手順を踏まないと爆発するんだろ。教えといてくれ」

「まさか、戦う気か!?」

「いざとなったらやらないわけにはいかんだろ」


 俺の指摘に、コゴネルは歯がみして、


「体表のどこかに神聖文字(ルーン)がある。それを削ってから倒すんだ」

「外から見える位置か?」

「見える位置に書かないといけない。これはゴレムという兵装に神話が課した制限だ。

 ただ、どこであるかまでは……」

「あったぞ、左肩だ!」


 バグルルの言葉に、コゴネルは少し笑った。


「少しだけ状況が好転したな」

「ほんのちょっとな」

「テン! おまえの兵装は今回の戦いだと有効じゃない! ハルカを連れて安全圏に避難、しかる後に脱出しろ!」

「りょ、了解しました」

「バグルル、相手の格は!?」

「……だいぶ高いなぁ。最上級だと見ていいだろう。

 どこの神か大巨人かは知らんが、その現し身としての権限を持ってやがる。五級程度は覚悟した方がいい」

「高いな! くそ!」

「さんかくー! さんかくさんかく!」

「え?」


 ミーチャの悲鳴に、俺たちが目を向けると。



(あ、まずい)



 ゴレムの太腕がイルルヤンカを引きちぎり、そのまま轟、と吠える。

 それとともに光でできた()()()()()()()のようなものが広がっていくのが、俺の目には見えた。

 おそらくは、あれがイェルムンガルド外殻。

 広がりきれば、対策をするまでもなくこちらは運命によって吹き飛ばされ、壁にたたきつけられ、そのまま潰されて皆殺しになる。

 そうならないための手段は、ひとつしかない。



「うおおおおおおおおー!」

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