三日目(11):悪党、悲鳴を聞く
「なんだ!?」
悲鳴に飛び起きて、即座に俺はリッサの部屋に駆け出した。
いや、女の悲鳴だということしかわかってなかったが、勘でリッサだと思ったのだ。
果たして、その予感は正しく。
「……リッサ」
「えぐ、えっぐ……ライぃ」
そこにいたのは、泣きじゃくるリッサと。
「でかかったな、あれ」
「思わず窓から放り捨てちまったけど、あれ森に放り出して大丈夫な奴だったか? 実はすっげえ森を荒らす害獣とかじゃないよな」
「いやあ、どうだろ? まあ、ないと思うけど……後で知恵者に確認しとかないといかんかな。ハルカがなにも知らなければだいたい大丈夫だろ」
窓際で話す、コゴネルとペイの二人がいた。
「なあ、なにがあったんだ?」
「ムカデだよ、ムカデ」
俺の問いに、ペイは苦笑いとともに答えた。
「超でっかい、人間に近いサイズのやつな。それが寝てるときにのしかかってきたんでお嬢ちゃんが悲鳴を上げて、駆けつけた俺たちが引き剥がして森に捨てたところだ」
「ええ……なんでそんなのが湧いて出るんだよ」
「わからんけど、窓から入ってきたのかねえ。森もこのあたりだと人里離れてるし、あんなのがいてもおかしいとは言えないからな」
コゴネルが首をひねりながら言った。
一方でリッサはえぐえぐとしゃくり上げながら、
「ライ……ライぃ。もうやだ、この部屋いやぁ」
「わかったわかった。部屋、替わってやるから」
「うう、ごめんね、ごめんねぇ……ひっぐ」
よほど怖かったのだろう。まだ泣きながら、リッサは荷物をまとめ出した。
(…………。
さて、まずは様子見か)
俺は、ごめんねごめんねと言いながら思ったよりてきぱき動くリッサを見ながら、そう心の中でつぶやいた。
まあ、この調子ならもう一回は大丈夫だろう。そんなことを思いながら。
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「おのれ、部屋を交換するとは卑怯なり神めがっ」
「ふふふ、だがそうとわかってしまえば簡単なこと。ドッソの奴め、どんなに渋っても最終的にはわらわに情報を提供してくれる。いい家臣を持ったわ」
「さて、それでは今度は……と。こいつでよかろう。そーれ」
ぎぎぃ……ぽいっ。
ばたん。
「ふはははははっ、恐怖に打ち震えるがよいわっ」
「ひいいいいいいいいやああああああああーーーーっ!?」
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「今度はなんだ!?」
走って駆けつけると、今度はまだ事件は解決していなかった。
「よーし、マイマイ、ミーチャ! 左右から追い込むぞ!」
「わかってる! グリートくん、援護は頼むよ!」
「がってんですっ。あんなぷよぷよ物体、ワンパンしてあげまあひいいいっ、顔、顔にくっつい、ひゃ!?」
「きゅるるるるるっ」
「さんかく~☆」
「えいくそ、妙にすばしっこいなあれ! おいミーチャ引き剥がせ!」
センエイ、マイマイ、グリート、ミーチャが格闘している横で、半分パジャマがはだけたリッサが、えっぐえっぐとまた泣いていた。
「……なあ。あの格闘してるの、なんだ?」
俺は、一人ぼーっと出入り口で立っていたサリに聞いた。
「スライムもどき」
「スライムもどき?」
「スライムっていう、有害な腐食性の洞窟に出没する魔物……
に、擬態した、一般生物。魔物じゃない」
「はあ? あんなぷるんとした生物、いるの?」
「うん。特に畑とかにいると害虫を食べてくれるので、辺境では人間と共生していることも多いって聞いた」
「マジかよ……世界は広いな」
「うん。世界は広い」
サリはこくこくとうなずいた。
俺はもうちょっと気になったことをたずねた。
「で、なんでこのメンツでそのスライムもどきを追い回してるんだ?」
「かわいいから殺さないで捕獲しようってマイマイが主張して、それに賛同したひとたちが頑張っている」
「なるほど……だからコゴネルとかペイはいないのか。それで、おまえは?」
「出口見張り役。こっちに追い込んできたらつかまえる」
「…………」
おまえも捕獲班の一人なのかよ。
「えっぐ、えぐ……ライぃぃ」
「はいはい。替わろうな、部屋」
「ごめんね、ごめんねぇ……」
泣きながら謝るリッサに手を振り、俺は荷物を取りに自分の部屋へと向かった。
(…………。
さて、これで偶然ってことはないよな)
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「おのれ、部屋を替わったというのは誤情報かっ。神め情報戦とはやりおるなっ」
「だが今度こそ我が精鋭が貴様を捉えよう。恐怖に泣き叫ぶがよいわっ」
ぎぃぃ……
がしっ。
「もが?」
ずりずりずり……




