二日目(13):悪党、遺跡を探索中
とりあえずマイマイと合流し、バンダナと枝を返却してから、俺は尋ねた。
「で、なにがすごいんだって?」
「ほら、あれ!」
指さす先にあったものは……
「あー……」
立派な、ドクロだった。
「ね! 冒険だね!」
「その感想はわからんでもないがちょっと待て。……おっさん、どう思う?」
「洞窟の明るさが足りん。もう少し見えるようにならぬものか」
「明かりが欲しいの? じゃあ魔術使う?」
「できるのか?」
「ふふん。まっかせてよ。光術は幻影使いの基本三技能のひとつ。これに関しちゃ誰にも負けないもんね!」
言ってマイマイは手を前方にかざし、
「蒼き双月の欠片――テロッツ・フィーンスター!」
しゅぱー、という音とともに、洞窟に青い光が満ちた。
「おおー、明るくなった」
「へへーん、どんなもんだいっ」
マイマイはふんぞり返る。
サフィートはそれを無視してあたりを見回し、
「……少なくとも、霊廟の類いではないようだな」
と言った。
俺もまわりを見渡してみた。ドクロは一つだけではなく、部屋中に転がっている。
「つまり、ここにドクロがあるのは、鎮魂のためではないと?」
「だろうな。であれば、わかるな?」
「そりゃあ、わかるさ」
俺はサフィートにうなずき返した。
なにしろ、ドクロがあるということは、ここで人が死んだということである。
つまり、死ぬような危険があるということなのだ。
「……獣の巣には見えないけどな」
「私もそう思う。魔獣が人間を食い散らかした後にしては、骨が整然と散らばりすぎている。
となると、罠か?」
「うかつに動かない方がいいな。マイマイ、十分注意して……マイマイ?」
「ライ兄ちゃん、こっちこっちー! こっちに石版があるよー!」
「十分注意しろっつってんだろうがコラ!」
先にさっさと部屋の奥まで行っているマイマイに、俺は思わず叫び返した。
一方、サフィートはふむ、と考え、
「よし、あの小娘が人柱になって安全性を証明してくれた。行くぞ、小僧」
「おっさん、わりとこういうときはタフだよな……」
げんなりしながら、俺とサフィートはマイマイの示す石版へと向かった。
「これだよ、これこれ!」
「ん……なんだこれ?」
地図、だろうか。
ところどころに、壁と同じ文字のようなものが掘られている。となるとこれは……
「これは……案内板か?」
「おっさんもそう思うか」
そう。そんな形に見える。
おそらく、遺跡がまだ稼働していた頃、この石版が案内板として機能していたのだろう。
「マイマイ、この石版の文字、なんとか読めないか?」
言ったが、マイマイは渋い顔。
「さすがに無理だよ、ライ兄ちゃん」
「そうなの?」
「神聖文字の解読と操作は、魔技手工か霊魂技師の領分だからね。あ、ただ、仮名遣いのところは別だけど」
「なんだそれ?」
「神聖文字は本来、意味を示す文字なんだけどさ。それを無理やり音に当てはめて、固有名詞とかを表すことがあるんだよ。マンヨーっていう古代の書で使われてるのが有名だから、マンヨー・スタイルって言うの。
この石版だと、たぶんこの円形記号で囲まれた部分はそれじゃないかな。読みはシジン……シジン遺跡ってのが、この洞窟の名前なんだと思う」
「とはいえ、遺跡の名前がわかってもな……結局、この石版は役に立たず、か」
「なに言ってるのライ兄ちゃん。これは大進歩だよ!」
「え?」
俺が首をかしげると、マイマイは胸を張って言った。
「文字は読めなくても、図は読めるじゃない。つまり、これは地図になってるんだよ! それで、たぶんこの目立つ記号の部分がいまいるこの部屋!」
「おお!」
サフィートが目を輝かせた。
「なるほど。ではどちらに行けばいいかもわかるな!」
「うん。たぶん、こっちに空いてる穴の方だよ! それで奥に進めるよ!」
「でかした小娘! ではさっそく進むとしよう!」
言ってサフィートは、マイマイよりも早く、さっさと歩いて洞穴の方へ向かって……
「あ、ダメだよおじさん! そこは……」
「ぬ?」
直後。ずぼり、という音とともに、サフィートの身体半分が地面に埋まった。
「ぬおわ!? なんだこれは!」
「あーあ、だから言ったのに。そこは落とし穴の罠があるから注意しないとダメだよ」
「先に言え! というか、なんでおまえはわかっていた!?」
「見徹って言って、罠を含めた周りの調査は幻影使いの基本三技能の一つなんだよ。ていうか、そうじゃなきゃこんなドクロだらけの部屋、あたしがうかつに動くわけないじゃん」
「あー……なるほど」
マイマイが罠に引っかからなかった理由、そしてフットワークが妙に軽かった理由が、ようやくわかった。
つまり、欲に目がくらんで警戒を解いたサフィートの方が、むしろ素人丸出しだったわけだ。
「く、くそ、なにか粘着質なものが靴にからんで動かん! どうする!?」
「あーもう、ちょっと待ってて! いま処理してあげるから!」
ため息をついてサフィートに近づくマイマイを見て、俺はため息をついた。
「人は見かけによらず……ということなのかね、これは」
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からころからころりんっ。
と、後ろでドクロが妙な音を立てて転がっていたことに、俺たちは気づかなかった。
【追記】
要するに万葉仮名って奴ですね。
つまりこの世界のルーンは表意文字だということです。




