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存在  作者: 紫
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道化師

僕が出会った道化師の話をしよう


彼は生まれつき目が見えなかった。

故に彼は聴覚が人よりも優れていた。


彼は人の笑い声が好きだった。

それは幸せの象徴であり、彼の夢となった。


いつしか彼はこう望んだ。

『僕は常に笑顔でいよう。そうすれば周りの皆も喜んでくれる』


彼は常に笑顔でいるようになった。

結果、彼の周りには笑顔が溢れた。

いくつもの笑い声が聞こえた。

いろんな人の笑い声が聞こえた。



言葉だけでは不器用で、とても全てを表現できない

だから僕たちは気付かなければいけない。

笑い声なんてものは必ずしも幸せと同じ方向を向いていないことを



彼は嘲笑れていたんだ。

口を横に大きく開け、頬は固まっているかの様に引きつっていた

その姿はまさに道化師 綱渡りも出来ず一輪車にも乗れない見掛けだけの道化師

その姿は卑下され、罵られた。


それでも彼は今日も笑顔をつくる


さて、君達はこの話を聞いてどう思うだろうか?


彼を可哀想だと涙するだろうか?

彼を嘲笑した人間を酷く軽蔑するだろうか?


まるで言葉遊びの様な話だ

声に出せばそれは同じ言葉

文字で表せばそれは相容れない言葉



では、この物語の終幕をはじめよう


彼は人の笑い声が好きだった

だから彼はいつも自分は笑顔でいようと誓った。


その結果、自分が嘲笑れている事を彼は知っていた


彼の耳にはいつも嘲笑が聞こえるようになった。

それでも彼は選んだ。自分に出来る最良の選択を


『最良の選択とはなんだい?』


 自分にとって都合のいい選択?

 他人にとって都合のいい選択?


では彼が答えた選択はどうだろう?


『人が笑ってくれれば良かった。

人を笑顔にする事が出来たんだ。

それが例え、100点満点の結果ではなかったとしてもいいじゃないか』



あぁ なんだ・・・


これ以上無い最良の選択じゃないか


彼の願いは叶った。

その形は歪に歪んでいるとしても


彼が望んだのは人々の笑顔であり、笑い声だった。

その結末は曇ってはいるけれども叶ったと言えるだろう。


では彼は幸せなのだろうか?

願いが叶ったんだ。

答えはひとつしかないね。


彼は今日も笑っている。

彼の周りには笑顔が溢れている。


さて、君達はこの話を聞いてどう思うだろうか?


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