41.過保護な愛
妊娠が判明してから数日後
私はは屋敷内を静かに歩いていた
最近アレクは常にその後ろを歩き、目を離さない
「少し速足ではありませんか?」
その声は低く、抑えられた緊張を帯びている
「大丈夫です……少し歩きたくて」
私は微笑む
だが、心臓の奥で、胸を圧迫するような緊張がある
彼の視線は鋭く、優しさと心配が入り混じった重さだ
「その少しの歩みも、私には危険に見えます」
アレクは静かに、しかし確実に距離を詰める
「この屋敷の中で、何かあれば――いや、絶対に何もあってはなりません」
レティシアは息をつき、手を胸に当てる
「……私、大丈夫です」
声には疲れがまじっているが、毅然と返す
「……ですが、心配なのです」
アレクの声は低く、重く響いた
そして彼は手を差し伸べ、自然に彼女の腰に回す
「私が守る
貴女も、子も、誰一人傷つけさせません」
レティシアは小さく息をつき、目を閉じる
彼の愛は、私たちを守るために今、全力で爆発している
アレクは一歩近づき、頬をそっと私の髪に寄せる
屋敷の中の静寂が、甘く重い愛情で満ちていく
夕暮れ、暖炉の火が揺れる寝室
私はゆったりと椅子に腰掛け、膝に置いた手でお腹をさする
疲れた体を休めようとする瞬間、アレクが書類を片手に静かに入ってきた
彼の近くに行こうと立ち上がろうとした瞬間
「レティ、危ないですよ」
低く落ち着いた声だが、目は真剣そのもの
「……私はただ、立ち上がろうとしただけです」
私は小さく息をつき、穏やかに答える
だがアレクシスはすぐに椅子の横に立ち、腕を差し伸べる
「椅子に座るのも危険です
何かあれば、すぐに私が「アレク!」
思わず声を荒げてしまった
「もう、いい加減にしてください!
少しくらい私を信じてください!」
その声に、彼は動きを止める
「……私を叱るのですか?」
低く問いかける声には、わずかな戸惑いが混じる
そっとアレクを見ると尻尾が垂れ下がっている幻覚が見えてくる
「はい
あなたの愛は確かに深いけれど、過保護すぎます」
レティシアの瞳は真っ直ぐで、強さと優しさが同居している
「私の体も、私の意思も尊重してください」
アレクは一瞬沈黙し、深く息をつく
そして、静かに手を取り、手の甲に軽く唇を落とす
「……わかりました
貴女の意思を尊重します」
その声音に、以前のような焦燥や過保護の衝動はなく、穏やかな愛と信頼が込められていた
私はほっと小さく息をつき、微笑む
「……ありがとうございます」
アレクもまた、小さく微笑み返す
「心配で、少し焦っていたようです
これからは、落ち着いて見守ります」
過保護すぎた愛が、少し冷静さを取り戻した瞬間だった
暖炉の火の光に照らされ、二人の間に静かで温かな空気が流れる




